映画「愛と青春の旅だち」レビュー「『ロクデナシの飲んだくれの底辺生活』は…世襲制であり…親から子へ…子から孫へと…無限に世襲して未来永劫「終わる」コトなどないんだよ赤ちゃん…」
コレから僕は…「愛と青春の旅だち」という映画が…。
ラブロマンス映画などではなく…。
親がロクデナシの底辺生活者なら…
子もロクデナシの底辺生活を這い回ることになると言う…
「地獄は世襲する」
コトを描いた酷い酷い酷い地獄映画であるコトを!
皆さんに御紹介出来るコトを!
心から光栄に思い…。
この一文を読まれる皆さんを…
「僕と同じ地獄」へ叩き堕とせるコトを!
我が生涯最高の歓びと感じるものです…。
ザック・メイヨ(リチャード・ギア)の父親は海軍軍人で大酒飲みの女狂い。
彼は父親が常に飲んだくれて商売女や娼婦と寝ている姿をずっと観て来た。
彼の母親はこの父親に捨てられて自殺。
彼は父親を嫌悪しながら海軍の士官となり
飛行機乗りとなるべく士官養成学校に入学する。
「オレは親父の様な飲んだくれの女狂いにはならない」
だが…彼は「女」と言えば娼婦か商売女しか知らず恋愛経験がなく
父親から女はウソツキのどうしょうもない生き物であること,
また自分勝手に打算的に生きる事を学び取り,
結果打算的なロクデナシに成長する。
ロクデナシの子はロクデナシにしかなれず
商売女しか知らない父親からは商売女しか知らない息子しか育たないのだ。
士官養成学校のフォーリー軍曹(ルイス・ゴセットJr)は
そんな彼の本質を見抜き殊更に厳しく指導する。
「オマエの様な身勝手な人間を信用する者など居るとでも思ってるのか?」
「大切なのは人間性だ」
「オマエの様なクズは親父と同じ様に飲んだくれて
親父と同じ様に商売女を抱きながら寝るのがお似合いなんだッ」
「オマエは親父と同じだよ」
士官養成学校の対岸には町工場群が隣接し
一日中紙袋を作り続ける仕事しかない
ポーラ(デブラ・ウィンガー)とリネット(リサ・ブロント)の
望みは士官候補生と既成事実を成立させ他の何処か遠くの世界に行く事。
ポーラの母親は士官候補生と既成事実を成立させ
彼女を産むも捨てられて今の亭主と結婚している。
母親はポーラの隣で紙袋を作っている。
母親が女工なら娘も女工となる。
恐らく娘も士官候補生を既成事実を成立させ娘を産むも捨てられて
一生紙袋を作り続けるのだろう。
恐らく娘の娘も女工となって一生紙袋を作り続けるだろう…。
無限に…永遠に続く連鎖…。
そんなの嫌だッ!
ポーラがこの無間地獄から脱出するには士官候補生と結婚するしかない。
ザックもポーラも「親の生き様」を
半ば強制的に世襲する他無いのだろうか…。
ザックとポーラは知り合って程なく男女の仲となるも
誰からも愛情を教わらなかったザックには女は全て商売女であって
ポーラが自分の肉体を餌に男を釣ろうとする雌犬にしか見えない。
所詮…ロクデナシの子はロクデナシを世襲し
女工の娘は女工を世襲し
士官候補生に捨てられ続けるしか人生の選択肢は無いのだろうか…。
「愛と青春の旅だち」のブルーレイは字幕翻訳者が戸田奈津子大先生で
本作に頻出する単語…依願退学(Drop on request=DOR)を,そのまんま用い
「ザック・メイヨ…DORしろ!」
と訳す唖然とする他はない字幕で到底買う気がせず
字幕版はNHKBSプレミアム放送版をBD-Rに焼いていたが
僕は本作を吹替で出会っているので
テレ東の午後のロードショーで
本作が超久しぶりに吹替でTV放映されると知り
1か月前から楽しみに待っていたのだ。
ザックの津嘉山正種,ポーラの岡本茉莉,シドの安原義人,ペリマンの玄田哲章,
リネットの藤田淑子,シガーの土井美加,フォーリーの坂口芳貞…。
特にフォーリー教官は素晴らしく
「ミック・ジャガーを聴いてアメリカの悪口を並べてたんだろう!」
「このクラスで一番最初に脱落するのはお前だ!デラセーラ!」
の言い方がもうもう最高なのである。
やっぱ吹替は最高…!
ホラー映画愛好家的には
映画「ゾンゲリア」で男を誑し込んで火炙りにした挙句,
注射針を男の眼球に突き刺し引導を渡す
ロクデナシ女役を好演したリサ・ブロントが
本作でも妊娠したと偽って男を騙し,
自殺に追い込むロクデナシ女役を好演している。
ザックの「自分の運命を変えたい」「変わりたい」と思う心根に
当時10代だった僕は自分を重ねて本作を観た。
今本作を観るとザックとポーラが
「どんなに必死にあがこうとオマエは「親と同じ運命」を世襲する」
って呪縛から逃れようとする話だったんだと思う。
この映画を参考にした企業が新入社員に軍隊並みの教練を加え
「おめでとう!君は生まれ変わった!」
と教官に褒められて滂沱の涙を流す新入社員の姿を報道番組で観て
僕の母親と妹が自己啓発セミナーにハマり
「お兄ちゃんも一緒に生まれ変わろうよ!」
と僕に一週間会社を休んで
10万円のセミナーを受講する様勧めて来た日の事は忘れ難い。
「生まれ変わりたい」「人生やり直したい」
って願望は誰にでもあって,その願望が食い物にされるのを見て
本作を初めて観たときの感動に泥を塗られた思いがするのである。
本作が
「そう簡単に運命は変えられない」「人は容易にゲスに成り得る」
って「本当の事」を描いているのに
皆1週間のセミナー受講で生まれ変わろうと
躍起になっている姿を見ると暗澹たる思いがするのである。
「愛と青春の旅だち」はな…。
オマエは「親と同じ運命」を世襲し…
オマエの子も「オマエと同じ運命」を世襲するコトを描いた…
「無間地獄」を描いた… 酷い酷い酷い地獄映画であるが故に…
僕にとっての最高の…
「ホラー映画」なんだよ赤ちゃん…。
…この映画は…最後にひとつだけ…
「小さなウソ」をつきます…。
永遠に無間地獄の中で生き続ける運命の人間が
明日もまた無間地獄の中で生きて行くには!
「希望」という名の「ウソ」が
心の支えなのだと描いてこの映画は閉じる。
いつだって…
どんなときだって…
「希望」は必要だよね♪
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