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映画「カジノ・ロワイヤル」(1967年)レビュー「序盤は爺さんの接待で退屈,中盤から若手が出張って面白くなり始め,終盤の「気違いの見る夢」展開で爆発する映画です。」

現役を退いて悠々自適の隠居生活を送る
「最初のジェームズ・ボンド」ことジェームズ卿(デヴィッド・二―ヴン)
のもとに英米仏露の諜報組織の幹部が訪ね
秘密結社スメルシュによって世界中の諜報部員が殺され
是非とも元祖ジェームズ・ボンドにお出ましいただきたいと懇願するが
彼は高齢を理由に拒絶したところ,秘密会談の席に迫撃砲が撃ち込まれ
屋敷が吹っ飛び英国情報部の「M」が絶命する。
スメルシュのやり口に俄然闘志が湧いて来たジェームズ卿は
前言と引退を撤回し捜査に乗り出すのだった…。

Amazonプライムビデオにて視聴。
初見。
映画には「接待」という「隠しジャンル」があり,
主人公役がアイドルとか若年とかで演技力に不足が有ったり,
往年の大俳優が高齢により満足の行く演技が実現出来ない等の場合,
周囲の人間が何もしてない主人公を
ひらすら褒めちぎる映画を「接待映画」と呼ぶ。
「接待映画」の定義上,具体例を挙げるのは障りがあり過ぎるのだが,
例えば「若大将シリーズ」に於ける加山雄三,
「インディジョーンズシリーズ」最新作に於けるハリソン・フォード,
等々が挙げられる。

本作の序盤はデヴィッド・二ーヴンの接待映画として進行し,
爺さんの二―ヴンが女性にモテまくり,女性と風呂に入ったり,
ミニスカートの女性2人に甲斐甲斐しく付き添われたり,
「M」の未亡人(デボラ・カー)に夜這いされたりと延々接待が続く。
二―ヴンが重い丸石を持ち上げるとデボラ・カーは
「アナタは世界一の男だわ!」
と称賛して色目を送る有様。
何だよコレ!

まあね。

接待映画に免疫がない人は
この「ジジイが延々女性の接待を受けるパート」で脱落すると思う。

中盤は爺さんの二―ヴンひとりじゃ間が持たんから
英国諜報部員の見所がありそうなのを
片っ端から「007 ジェームズ・ボンド」と名付け
「沢山の007」が登場するが
特に見所がありそうなのが
ピーター・セラーズ(男)とジョアンナ・ペティット(女)のふたりで
それぞれ寝技を駆使しつつ活躍する事となる。
セラーズとラスボスのオーソン・ウェルズのカジノ・ロワイヤルでの
バカラ対決はイアン・フレミングの原作に則っていて緊張する。

終盤は…何と説明したら良いか…「気違いの見る夢」が延々と続く。
ウェルズに拷問を受け,精神が錯乱したセラーズの見る夢,
「真のラスボス」の秘密基地の
サイケで「ドアが地の果てまで延々と等間隔に並ぶ」悪夢的間取り,
「ピンク・パンサー」でお馴染みの笑気ガスによって錯乱する
カジノ・ロワイヤルの混乱した模様は
「ここだけ」急に気が狂っていて一見の価値がある。

お色気担当のバーバラ・ブーシェ,
神経質な演技で存在感をアピールするウディ・アレン,
チョイ役で登場するジャン・ポール・ベルモント等々
「無駄に豪華キャストの新春隠し芸大会」
の様相を呈し,終盤の「気違いの見る夢」演出を踏まえて考えるに,
新年にお屠蘇をチビチビ舐めながら
初夢の代わりに見る緩くてイカレた映画として最適と言える。

要するに!シラフで観る様な映画ではないのだ。

僕的に終盤の展開が無ければ
うんと辛い評価となるが終盤で逆転して
新年早々得した気持ちになるは必定の映画と思えて来た。

ナイル大商店が年の瀬に本作のブルーレイをリリースするのも
納得の時期選択と言える。




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