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サークル「元気で行こう」(かあつかつろーさん)のデリシャスパーティプリキュア再販同人誌「み~んな芙羽ここねが大好き!!」レビュー「「プリキュア」を題材とした恋愛描写のある同人誌の制作には斯くも多くの困難が立ちはだかるのだ。」

レビューの最初に
「プリキュア」の「システム」について解説させていただきます。

「プリキュア」は毎週日曜日朝8:30より放送される女児向けアニメですが,
1.毎年2月頭から始まって翌年1月末で終わらなくてはならない。
つまり「現行のプリキュア」は活動期間が1年間と決まっていて1年経ったら
「次のプリキュア」にバトンを渡して退場しなければならないのです。
2.「プリキュア」では恋愛は御法度。
プリキュアは基本恋愛出来ません。
恋愛するなら,その交際相手と将来結婚しなければならず
1年間で結婚までは到達出来ないのです。

「プリキュア」の二次創作同人誌では
公式では出来ない事が出来るのが強みではありますが
例えば「プリキュア」の登場人物間の恋愛を描こうとする場合,
公式の「1年縛り」が障害となって立ちはだかります。

つまり「プリキュア」の「旬」は1年間であり,
「旬」を過ぎてから出したプリキュア同人誌は
読んで貰える確率が激減するのです。

従って「現行のプリキュア」の同人誌を出す
デッドラインは12月末に開催される冬のコミックマーケットとなる訳です。

加えて「プリキュア」は「恋愛御法度縛り」があるので
冬のコミックマーケットで出すプリキュア同人誌で恋愛描写を描く場合,
恋愛関係の発生・進展・成就までを描くという
ヘレンケラーもビックリの三重苦が立ちはだかり
加えて何もない所から恋愛関係の発生・進展・成就を生み出すと言う
天地創造をも超える驚異の創作能力が要求されるのです。

加えて同人誌は「薄い本」と揶揄される程,
ページ数が少なく最早無理ゲーの様相を呈するのです。

しかしながら,ここにひとりの同人作家がいた。
僅か26頁で「デリシャスパーティプリキュア(デパプリ)」の
・芙羽(ふわ)ここねと和実(なごみ)ゆい
・芙羽ここねと華満(はなみつ)らん
・芙羽ここねと菓彩(かさい)あまね
の3組の恋愛模様を描く無謀に挑戦されたのが
かあつかつろーさんであり,かあつさんが執筆された
本同人誌「み~んな芙羽ここねが大好き!!!」となる。

本同人誌は2022年度に活躍した「デパプリ」を題材としており
2022年12月末の冬のコミックマーケットで発行された。

先程解説した通り「デパプリ」は
2023年1月末に終わらねばならず,あと1ヶ月しか時間がない。
芙羽はひとりしかいないのに求愛者が3人もいるのだから,
もう1ヶ月間戦ってでも芙羽の愛を勝ち取る他ないのである。

和実と華満と菓彩が芙羽の愛を勝ち取ろうと
7日間しか生きられぬセミの如く
死に物狂いで求愛し鎬を削り合うのが見所となる。
絵柄に全く嫌味は無く可愛らしく微笑ましい。

本来なら2022年12末に買っておくのが「旬」なのだが買い損ね
2023年12末に奇跡的に再販され飛び付く様に購入した次第である。
確かに「旬」を1年も過ぎている虚しさはあるが
かあつさんの嫌味のない絵柄,嫌味のない作風,嫌味のない人柄に
1年間の鬱屈が洗い清められる思いがする。
当然ながら拙レビューも本来1年前に書かれるべき内容であって
とっくの昔に「旬」を過ぎていることは言うまでもない。
でもな。
僕は本書を,どうしても電子媒体ではなく紙媒体で買いたかったのだ。
電子媒体は「残らない」が紙媒体は「残る」からである。

同人誌との出会いは一期一会であり
出会いを逸すれば「次」はないのが鉄則。
「再販」など基本「無い」のだ。

かあつさんがその「鉄則」を曲げて
再販に踏み切って下されたことを心から感謝したい。


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