ラグビー#18|高校ラグビーはどれくらい?ボールインプレーを調べてみよう!
Ball In Play(ボールインプレー)
今回は紹介するのは、ボールインプレーというデータ
自チームのスタッツや、相手チームのスカウティングなど、結構いろんなことに使えるこのデータ
頻繁に扱っているこのデータですが、高校生のボールインプレーって実際どれくらいなんだろう?
気になったので、今回は高校生の試合を使ってデータを出してみました
データの標本としたのは、この大会
今年行われた、サニックスワールドラグビーユース
試合映像がYouTubeにありましたので、アップされていた男子15人制の17試合を参考にしました!
そもそも、ボールインプレーって何ですか?
高校生の試合時間は、1試合60分
この60分間は、大きく2つに分けることができます
・Ball In Play(ボールインプレー)
・Ball Out Of Play(ボールアウトオブプレー)
Ball In Play(ボールインプレー)とは、試合でボールが実際に使われている時間を表すものです
スクラムやラインアウトなどからボールが出され、トライやミス・反則でプレーが切れるまでの一連の流れ
もう1つのBall Out Of Play(ボールアウトオブプレー)は、試合でボールが止まっている時間
トライやミス・反則でプレーが切れて、次にボールが使われるまでを表すものです
60分間のうち、どれくらいの時間ボールが動いているのか
それを表すのが、ボールインプレーのデータです
ボールインプレーって、どうやって計る?
ボールインプレーの計り方について、説明したいと思います
僕は分析ソフトを使用していますが、ボールインプレーはストップウォッチでも計ることができます
僕が普段使っている、ボールインプレーとボールアウトオブプレーの計り方の基準は、以下の通りです
<ボールインプレーの計り方>
・キックオフ→キッカーがボールを蹴った瞬間から、プレーが切れるまで
・スクラム→ボールをスクラムに入れた瞬間から、プレーが切れるまで
・ラインアウト→スローワーがボールを投げた瞬間から、プレーが切れるまで
・クイックスロー→クイックスローを投げた瞬間から、プレーが切れるまで
・クイックタップ→クイックタップをした瞬間から、プレーが切れるまで
※ペナルティからのタッチキックやPGはボールインプレーに含みませんが、キックがインフィールドに残った場合は、ボールインプレーに含みます
<ボールアウトオブプレーの計り方>
基本的に、ボールインプレーが切れてから、次のボールインプレーが始まるまでの時間を計ります
・トライした瞬間から、次のキックオフが蹴られるまで
・ミスや反則でプレーが切れた瞬間から、次のセットピースが始まるまで
※レフリーの指示でタイムオフになっている時間帯は、ボールアウトオブプレーには含みません
例として
・怪我人が出てプレーが止まったとき
・選手交代のとき
・リーグワンで言えば、TMOのとき
etc…
ボールインプレーとボールアウトオブプレーの合計が、全体のゲームタイム
よって、以下の式でボールインプレーを出します
ボールインプレー ÷ 全体のゲームタイム = ボールインプレー(%)
例えば、ボールインプレーの合計が20分、ボールアウトオブプレーの合計が40分だとすると
20 ÷ (20+40) = 0.33333・・・
約33%が、ボールインプレーの値になります
ボールインプレーのデータを出してみよう!
ワールドラグビーユースの17試合を使って出した、高校生のボールインプレーは
全体で、43%という結果でした
60分の43%なので、時間で表すと
60(分)×0.43(43%)=25.8(分)
1試合あたり約26分間、ボールが動いているということになります
このようにデータで見ると、実際に試合でボールが動いている時間って、意外に短く感じますよね
逆に考えると、ボールが止まっている時間は半分以上もあるのです
試合を個別に見ていくと、17試合のうち2試合で50%を超える試合がありました
ボールインプレーが50%を超える試合
社会人の試合でも50%超えは滅多に出逢えないので、データを取ってて結構興奮しました
2試合とも53%なので、全体よりも10%高いボールインプレーです
時間で表すと
60(分)×0.53(53%)=31.8(分)
約32分のボールインプレーでした
素晴らしい!
ボールインプレーを細分化してみよう!
全体のデータから、43%だったボールインプレー
それでは、前半と後半を比べてみると、どうなんでしょうか?
前半(1st Half)が、41%
後半(2nd Half)は、44%
なるほど、後半の方が高い
後半にボールインプレーが上がる理由、何かありそうですね
僕なりの回答としては
『後半の方が、お互いポゼッションを長く保つ時間が増えるからではないかな』と考えました
特に、負けているチームは
・トライを取りに行きたい→ポゼッションを持つ
勝っているチームは、
・ゲームのクロージング→ポゼッションを長く持つ
などなど。
他にもたくさん理由はあると思いますので、みなさんも考えてみてください!
さらに、細かく見てみましょう
60分間を4分割して、15分ずつ見てみると
(予選は25分ハーフだったので、12分30秒ずつ)
前半最初の15分(Quarter 1)と最後の15分(Quarter 2)は、ともに41%
後半最初の15分(Quarter 3)と最後の15分(Quarter 4)は、ともに44%
先ほどの前後半のデータと、あまり変わりはありませんでした
しかし個別の試合データで見てみると、4分割のグラフで特徴が出てきたりもします
例1)
この試合は、前後半ともに最初の15分の数値がかなり高いですね
例2)
この試合は、時間が進むにつれてボールインプレーが上がっています
このようにボールインプレーを4分割してみてみることで、試合の波(どの時間帯でボールが動いているか・停滞しているか)が、視覚的に確認することもできます
1回のボールインプレーは、どれくらいの長さ?
次は、1回1回のボールインプレーの長さを見てみましょう
・スクラムから10フェーズ以上重ねてトライ
・ラインアウトでのノットストレート
どちらも、ボールスタートからボールエンドまで
3分以上続くもの、3秒で終わるもの
このように、試合ではいろんな長さのボールインプレーがあります
ボールインプレーの1つひとつを見ていった時に、どれくらい続くボールインプレーが1番多いでしょうか?
高校生の17試合を使って出してみると、以下のような結果になりました
30秒以内に終わるボールインプレーは、全体の54%
30秒から60秒までに終わるボールインプレーは30%
要は、全体の84%が1分以内にプレーが終わっているのです
120秒(2分)以上続くボールインプレーは、全体のたった2%
ラグビーのインプレーって、長く続けることが難しいということがわかりますね!
ボールインプレーを、スカウティングで使ってみよう!
試合前に、相手の試合を分析することがあると思います
対戦相手の分析を『スカウティング』と言ったりしますが、ボールインプレーのデータもスカウティングの切り口として使うことができます
例えば、自チームの試合と対戦相手の試合を5試合ずつ見るとして・・
お互いの、5試合のボールインプレーを出してみます
自チーム5試合のボールインプレー→45%
相手チーム5試合のボールインプレー→40%
と出たとすると、5%の差がありますね
この5%を、高校生のゲームタイム60分で換算すれば
60(分)×0.05(5%)=3(分)
自チームは相手チームより、『3分長くボールインプレーを続けることができる能力がある』ということがわかります
この3分の差が相手のOpportunity(攻め入る機会・チャンス)になりゆると考えるならば、『ボールインプレーを長くする』という軸を元に、スカウティングを進めてみます
例えば
・簡単にタッチに出すキックよりも、インに残すキックを多く使い、アンストラクチャーからのインプレーを増やす
→相手のアンストラクチャーの分析をやってみて、Opportunityを探す
・クイックタップやクイックスローを使う
→ボールが切れた時の相手のリアクションスピードを見て、そこにOpportunityがないか調べてみる
またクイックスローと少し似ていますが、相手に休む時間を与えないという視点で考えてみて・・
・ラインアウトアタックのセットスピードを速くして、ボールアウトオブプレーの時間を減らす
という考え方もできますね!
※『ボールインプレーを増やすために、ボールアウトオブプレーをどうやって減らすか』という部分に着目するのは、すごくいい視点だと思います!
奥が深い、ボールインプレー!
今回は、ボールインプレーのお話でした
少しでも、みなさんの興味やお役に立てたら嬉しいです
他にも、いろいろなことに使えるボールインプレー
僕が知らない使い方も、まだまだあると思います
ボールインプレーを活用していくためにも、まずはデータを理解し、試合からデータを取ってみることが大事ですね!
いろんな気づき、質問があれば僕のSNSへいつでも連絡ください!
それでは、また何か書きます!
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