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ラグビー分析#2|掛け合わせて相手を攻略だ!SWOT CROSS分析!


ラグビー分析、第2段

前回は、相手の勝ち試合と負け試合を比較して分析を行うWon Lost分析を紹介しました


今回ご紹介するのは、SWOT分析を使ってさらに深掘りしていくSWOT CROSS分析という手法
(クロスSWOT分析とも言います)


自分達の強みや弱み、相手を攻める機会(チャンス)や脅威


これらを掛け合わせて分析し、相手チーム攻略の糸口を探していきます


そもそもまず、SWOT分析とは何でしょうか?



4つの要因に分ける、SWOT分析


SWOT分析とは、簡単に言うと自チームと相手チームの強み・弱みを出して分析を進める手法です



横軸は、内部要因が自チームで外部要因が相手チーム

縦軸のプラス要因・マイナス要因は、自分達にとってどう影響するかを表します


順番に見ていくと

Strength→自分達の強み
Weakness→自分達の弱み
Opportunity→相手を攻めるチャンス(弱み)
Threat→相手の脅威(強み)

これらの頭文字をとって、SWOT分析と言います


SWOTそれぞれの項目に整理するだけで、自チームと相手チームの強み・弱みがグッと見やすくなります



それでは、具体例を使ってSWOT分析を行ってみましょう



例)相手チームを分析するために、相手の試合映像を見ました

映像を見た後、こう考えたとしましょう


相手の得点源は、何と言っても強いFWを使ったモール。
敵陣22mに入ってくると、モールを使ってスコアをしてくる。
うちのチームはモールのDFに課題があるから、このモールは要注意だ。
モール以外でも、22m内に入られてからの失点率が高いから、なるべくこのエリアでの勝負は避けたいところだ。

スクラムもかなり強いけど、スクラムは自分達も自信がある。

相手の弱みはどこだろう。
このチームは、見るからに後半バテてくる印象があるな。
特にフェーズを重ねたDFでは動きが悪いし、規律が乱れてよく反則をする。
アンストラクチャーのDFも、あまり得意ではなさそうだ。
うちはフィットネスに自信があるし、カウンターアタックが得意。
ここはひとつ狙いどころかな!

あっ!あとうちには左右蹴り分けられる良いキッカーもいるし、キックも上手く使っていきたいな!


SWOTへ当てはめていくために、まずこの考えたことをバラバラにする分解作業を行います


【相手チーム】
・強いFW
・得点源はモール
・スクラム
・後半バテる
・フェーズ重ねたDF悪い
・DFの反則も多い
・アンストラクチャーDFが弱い

【自チーム】
・モールDFが課題
・自陣22m内の失点率が高い
・スクラムに自信
・フィットネスに自信
・カウンターアタックが得意
・良いキッカーがいる

SWOT分析は、この分解作業が1つのキーポイントです


あとは、SWOTそれぞれの項目に当てはめていきます



良い感じで、SWOTに振り分けられました

これでSWOT CROSS分析の下準備はOKです!



4つの要因を、それぞれ掛け合わせてみよう!


SWOT CROSS分析は、SWOTの4つの要因をそれぞれ掛け合わせて分析する手法です

よって、4つの項目に分けて分析することができます

それぞれの項目を紹介していきながら、SWOT分析の結果を掛け合わせていきます!


1.積極戦略(Strength × Opportunity)

積極戦略は、自分達の強みを相手のチャンス(弱み)となる部分にぶつけていく戦略です

相手を分析するにあたって、ここが一番のメインになる部分ではないでしょうか

この『S×O』がたくさんあればあるほど、相手を上回れるチャンスが多く生まれることになります


先ほどのSWOT分析で出た、自分達の強みと相手を攻めるチャンス

掛け合わせていきましょう


まず、相手はアンストラクチャーのDFが弱みでした

それに対し、自分達はカウンターが強み

よって、ストラクチャーから組み立てるよりも、アンストラクチャーアタック、すなわちカウンターからポゼッションを持った方がよさそうです

カウンターから仕掛けてポゼッションを持ちながら、相手のフェーズDFが崩れたところを狙う

フェーズを重ねると相手DFの規律も乱れてくるので、ペナルティをもらえると一気に得点のチャンスです


もうひとつ、後半バテるという相手の弱みがありました

自分達は、強みであるフィットネスで相手を上回れる自信がある

それなら、ボールインプレーを伸ばしていくことで、試合終盤に相手を追い込むチャンスができそうです


2つの積極戦略ができました

この戦略を実現するためにどうしたらいいかを考えていくことが大切です


1.カウンターからポゼッションを持つ

カウンターアタックをするには、相手にキックを蹴らせなければなりません
→そのために、どういう戦術を取っていくかを考える

2.ボールインプレーを伸ばす

どうやったら、ボールインプレーは伸びるでしょうか
→ボールインプレーを伸ばすためには、どのような戦い方をするかを考える


出た答えを積極戦略につなげていけば、相手が弱い状況の中で自分達の強みを発揮できるチャンスが広がります


2.改善戦略(Weakness × Opportunity)

相手の弱みはわかるんだけど、その弱みをつく部分が自分達の強みではない

逆に言うと、その部分を強みに改善できれば積極戦略につなげられる

と言うのが、改善戦略です

改善戦略は自分達自身を改善しなければならないので、時間がかかるものと捉えられています

しかしラグビーの分析の場合、スカウティングから試合までそんなに時間はありません

なので僕は、相手の弱みをつくための新規開拓なども改善戦略に入れています

例えば、相手の弱みをつくサインプレーを新しく考えるなど

それがハマれば、積極戦略に化ける可能性を秘めています


改善戦略も見ていきましょう


この場合の『W×O』では、上手く掛け合わせるものがありません

その場合、新規開拓で相手のチャンスをつく方法を考えてみます


例えば、アンストラクチャーDFがチャンスだと考えるとするならば、トランジションアタック(ターンオーバーからのアタック)にフォーカスを当ててみます

トランジションアタックは、相手がDFを整える前にいかに速く攻めることができるかが非常に大事

守りから攻撃に変わった瞬間、速く攻めるためには何が必要か

リアクションスピードで相手を上回れば、チャンスがさらに広がりそうですね

よってここでは守→攻へのリアクションスピードを新規開拓とし、相手のアンストラクチャーDFと掛け合わせます

改善戦略はターンオーバーからのトランジションアタックとなりました

→どうやったらリアクションが上がるか
→トランジションアタックではどのようなところを狙っていけば良いか

を考えていく必要がありますね!


3.差別化戦略(Strength × Threat)

差別化戦略は、自分達の強みが相手の脅威(強み)でもある部分です

まず考えるのは、自分達の強みが相手の脅威に対抗できるかということ

対抗できそうであれば、どちらかが折れるまでの真っ向勝負を仕掛ける戦略を考える

真正面から対抗するのが難しそうであれば、その中で差別化できる部分を探す

また、あえてここでの勝負を避けるということも戦略のひとつです


このSWOTでは、お互いの強みにスクラムがあります


自分達のスクラムにとても自信があり、スクラムで圧倒してゲームのモーメンタム(勢い)を取りたいのであれば、真っ向勝負

相性や組み合わせ、スキルなどを使って相手の脅威を下げることができるなど、スクラムで差別化を狙えるのであれば差別化を狙う

相手の強みに付き合わず、他の部分で自分達の強みを出すのであれば、スクラムで圧倒することに拘らず、安定にフォーカスするのもひとつの手です

強みがぶつかるこの項目では、どのパターンが最適かをしっかり考える必要がありますね


4.Weakness × Threat(致命傷回避戦略)

致命傷回避戦略は、相手の脅威となる強みが自分達の弱みに当てはまってしまう項目です

試合中この部分にハマってしまうと、致命的な結果になってしまいます

なのでここでは、相手の脅威をどうやって回避するかということを一番に考えていかなければなりません


『強いFW・モール』という相手の強みを消すには、どうしたら良いか

もちろんモールのサックなど、自分達にできる技を使うのもひとつの手


けどここでは思い切って、強みを消すには相手の脅威となる回数を減らせばいいと考えてみる

要は、相手のモール回数を削るということですね

となれば、相手の強みを出すエリアに入れないことが大事です


よって致命傷を回避するには

自陣22m内に相手を入れないために、テリトリーを取っていく

という戦略を練ります

自チームには左右に蹴り分けられる良いキッカーがおりますので、その選手を軸にどのようにテリトリーを取っていくのかを考える


あと、どれだけ敵陣でプレーしていてもペナルティを繰り返してしまうと一気に22m内にエントリーされてしまうので、致命傷を避けるためには規律の部分も大事になりそうです

特にDFでは、オフサイドなど自分達の規律次第で減らせる反則がありますので、その辺をフォーカスしてみても良いかもしれません




以上、4つの項目の戦略ができました

最後に、まとめてみましょう!


SWOT CROSS分析をまとめてみよう!


まとめると、こんな感じになりました


分析結果を簡単に表すと、フォーカスポイントはこの4つ

・アンストラクチャーアタック
 (カウンター&トランジション)
・ボールインプレー
・テリトリー
・セットピース(スクラム)

このフォーカスポイントを使って80分間どう戦っていくのかを、アナリストはコーチと考えていく必要がありますね!



今回ご紹介した具体例は、映像からの質的分析を元にSWOTへ分別し、SWOT CROSS分析を行いました

質的分析以外にも、スカウティングで算出したスタッツなどをSWOTにかけてもいいですし、色々使える面白い分析手法だと思います


分解→分別→掛け合わせる


SWOT CROSS分析、是非みなさんも挑戦してみてください!


それでは、また書きます!

ありがとうございました!

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