短編小説「夜明け」(写真素材:たい焼き)

画像1 短編小説「夜明け」 (写真素材:たい焼き) 写真は「みんなのフォトギャラリー」に公開しています。
画像2 朝まで眠る事も出来ずに僕は空白む町を歩く。
画像3 背中を丸めて生きている。地面ばかり見て歩く癖がついた。
画像4 近所の老翁に出会う。早朝の散歩が日課なのだ。「おはよう」朗らかに老翁は手を振る。家から少し離れた場所で隣人に出会う事に不可思議を覚える。
画像5 僕も手を振って応える。 「金魚の調子はどうだ」と老翁が尋ねる。 「ええ、まあ」 僕は言った。
画像6 僕の金魚は転覆病に罹って仕舞った。平衡感覚を壊して天地逆に泳いでいる。 今や彼が空と思っているものは砂底なのだ。衰弱してやがて死に至る彼が空を見ることはもう無い。
画像7 「そうか」と老翁は言った。 「今日はサアカスが来るよ」
画像8 「象が曲芸をするよ。火吹き男もいる。今晩、リハーサルが行われる。」 リハーサルは誰でも観る事が出来る。チケットも無用だ。近隣の人間が多く集まる。
画像9 老翁と別れて僕は避難塔に登った。いつか来る津波に備えて海辺の町には随所に避難塔が設置されている。塔から海を望む。 「いつか来る津波」何年後、何十年後或いは何百年後か分からないけれど。 「いつか来る死」 と同じくらいそれは曖昧な未来だ。
画像10 早朝、海から吹く風は湿潤している。夜に冷えた空気が結露して水蒸気に変わるためだ。朝夕が涼しくなった。 いつの間にか夏が終わった事を知る。 本日の天気予報は久々に晴天。 僕は大きく背伸びをした。
画像11 終幕 そしてカーテンコール
画像12 薄皮たい焼き 「たい夢」 全国チェーンのたい焼き店。 生地が薄くて堅焼き。食感はモナカに近い。味は小倉、カスタード、チョコレート、キーマカレー。季節限定品など企画に強い。 表通りにあるためか客足が絶えない。150円。 生地が堅いため造形の彫りが深い。
画像13 シーラカンスcafe 「シーラカンスパンケーキ」 シーラカンス型のたい焼きではなくパンケーキ。 中身はバナナとチョコレート。 税込500円。 ダイバーショップが運営する喫茶店。割高感が否めないがパンケーキの他にシーラカンスモナカなど写真映えする商品が多数。シーラカンス特有の肉鰭の肉厚感など造形は良い出来。