現代詩「昇降機を許さない」

俺は昇降機を許さない

昇降機の操作盤に映像装置が付いていて、防犯カメラの映像が映っている。先からその画面には後ろを向いた俺がいる。

俺の 後頭部を 勝手に
映しやがって
俺の後頭部はナイーブなのに
今更姿勢も変えられず
画面にはただ黙々と俺のナイーブが写るのだ
乗り合わせた他人共が
俺のセンシティブを見つめる
この恥辱
俺は昇降機を許さない

俺が昇降機に乗ったとき
変な音がして基内が傾いだ
俺が太っている
みたい じゃ ないか

俺が昇降機に乗ったとき
先に乗っていた綺麗なお姉さんが
必要以上に距離を置いた
必要以上に距離を置いた

昇降機め

俺にげんじつをみせるなよ
髪の毛だって
前から見れば問題ない

この腐った世の中で
懸命に生きているから
臭くなった
俺が臭いわけじゃない

お前は防犯カメラを付ける前に
他にやるべきことがあるんじゃないのか
愛想笑いを浮かべたり
夢を見せてくれるとか、さ
俺たちは夢なんて芳しいものはなくしてさ
汗臭い書類を胸に抱えてるんだぜ
不眠不休で練り上げた
饐えた匂いを撒き散らし
ドアが開いたら
戦いなんだぜ

(現代詩「昇降機を許さない」村崎カイロ)

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