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ムラサキ
2020年10月30日 01:49
さよふけて。川辺の温泉宿は夜もすがら滔々と川の流れる音がする。そうした瀬音を聞き乍ら文机に座って、僕は小説を書いている。書いているつもりが、先程から一行たりとて進まない。「猫又温泉」書いたのはタイトルと思しきたった一行。なおなお、と表で旅館に飼われた猫が鳴く。猫をあやして女中が餌を呉れる声がする。ああ、女中の膝枕で眠りたい。太腿に臥して猫の如く喉を鳴らして甘えたい。徳利を