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【あなたの文章表現力を高める】比喩表現のおすすめ本TOP6

最初に云っておきますと、比喩表現は盛れば盛るほど作品が良くなるか──と云うと別にそんなことはありません。

ただ、盛ればいいというものではないからこそ、ここぞというときバシッとハマる比喩を置きたいもの。

たとえば、『ブレードランナー』に出てくるような海外の近未来都市の退嬰的な空気感を表現するときに、「墨で刷いたような」という比喩を使えば「ナゼにこの世界観で墨⁈」となってしまいます。

適材には、適した場所があります。

そこで、今回は実際手に取ってよかった比喩表現に関する書籍6冊をご紹介。

TOP6と題しましたが、特別ランキング感はございません

それゆえ、一番最初or最後に紹介する書籍が最もオススメ! というわけでもないので悪しからず~。

比喩表現のおすすめ本① 『比喩表現辞典』

とにかく文例がたくさん見たいという人におすすめです。

芥川龍之介や川端康成、吉本ばななや赤川次郎など、著名な作家の比喩表現を含む文例が8201収録されています。

使い方としては、たとえばあなたが「顔に関する比喩はないかなー」と「顔」というワードから索引を引いたとしますよね。すると、

つと首を伸ばした菊千代のがぱっと場内の燈火を受け羽子板の押し絵のように見えた。

『腕くらべ』 永井荷風

脂肪の少い人で、牙彫の人形のようなに笑を湛えて

『山椒大夫』 森鴎外

上記の通り、「」というワードを含む文例に出会えるわけです。

ただ、この本あくまで辞典ですので。

多くの文例を目の当たりにして「面白いなー」と感じることはあっても、「じゃあ、ここからこういうステップを経て文章表現力を高めよう!」という方向にシフトするのは不向きではないかと思います。

加えて、昨今比喩表現の文例だけならググればいくらでも出てくるわけで。

なので、

「いつも比喩表現を書くとき、Googleを頼りにしているのだけれど、Googleの検索結果だけでは何だか物足りない!」

という人は手に取ってもらえれば新たな発見があるのではないかなぁと思います。

検索では、良くも悪くもキーワードに関する比喩表現にしか出会えないので。

適当にめくったページに載っている比喩から新たな着想を得る──という使い道目的で紙の本を手に取ってみるのも一興ではないでしょうか。

比喩表現のおすすめ本② 『音の表現辞典』

タイトル通り、音声・口調・音響に関する比喩表現をまとめた書籍です。

使い方としては、たとえばあなたが「スリッパの足音でイイ比喩はないかな~」と目次から「スリッパ」の項を開いたとしましょう。

すると、

奥の廊下からスリッパの音がパタパタと聞こえて

『ダイヴィング・プール』 小川洋子

スリッパをペタペタと鳴らしながらやってきた

『プリズンホテル』 浅田次郎

上記の通り、スリッパの足音に関する文例に出会えるわけです。

この本の面白いところは、文例に対して著者である中村明氏の考察が書かれている点

たとえば「スリッパ」の項だとこんな感じ。

オノマトペの音構成が「パ」から「ペ」に変更されただけで、軽快な印象が消える感じがするようだ。くっつくような「ペタペタ」だと、床に接触する時間が相対的に長い感じがするからかもしれない。

中村明著『音の表現辞典』

それゆえ、文例を眺めてただ面白いでは終わらない、音の表現の裏にある作者の意図を考察して、文章表現力の向上に繋げたい──というステップアップをお望みの方は手に取ってみると有意義なのではないかと。

一方で「辞典」というタイトルから『比喩表現辞典』のようなスタイルを期待して手に取った方は、やや肩透かしをくらうやもしれません。

文例がすべてエッセイ調の文章内に紛れているので。

「靴音でイイ感じの比喩表現を知りたい!」

と思ったら、目次から「靴音」の項に飛んで、そこにある文章を一通り読まなければなりません。

辞典としての使い勝手に難はあれど、読み物として純粋に楽しめます。

比喩表現のおすすめ本③ 『文章を彩る表現技法の辞典』

「多様な比喩」について解説している章があるため、比喩表現のおすすめ本として紹介。

最初に取り上げた『比喩表現辞典』にも冒頭に「比喩とは何か」といった概説が載っているのですが──いかんせん文章が堅過ぎてわかりにくいです(笑)

「直喩と隠喩の違いは何か?」など比喩表現の初歩的な内容をさくっと学びたい──という方であれば、この『文章を彩る表現技法の辞典』の方が理解しやすいのではないかと思います。

こちらの本、ユニークなのは引用作品索引とは別に技法索引がついている点

たとえば「書き出しの型」で引くと以下のような項目が並びます。

  1. 〈人物〉から

  2. 〈時〉から

  3. 〈場所〉から

  4. 〈状況・事情・経緯〉から

  5. 〈思い入れ〉から

  6. 引用から

  7. 奇抜な視点で

  8. 雄大に

  9. 象徴的に

  10. 衝撃的に

  11. 接続詞から

  12. 作中人物の内面から

「比喩表現の初歩的な内容を学びつつ、比喩以外の表現技法についても理解を深めたい!」

という方におすすめの一冊です。

比喩表現のおすすめ本④ 『色のことば選び辞典』

学研辞典編集部編『色のことば選び辞典』は、色のイメージが思い通りに言語化できない物書きの悩みを解決するための辞典です。

文学作品で使われる色名をメインに収録し、どのような表現があるか用例で示しています。

たとえば、「プルシアンブルー」の見出しを見ますとプルシアンブルーの辞書的な説明とともに、

夕の空の色などは、美しく濃く、美しく鮮やかで、プルシアンブルーが、谷一面の天を染めている。

小島烏水作『谷より峰へ峰より谷へ』

のような具体例が収録されています。

また、巻末に設けられた色名の五十音順索引より、知っている色名からイメージを膨らませる──といった使い方もできます。

比喩表現のおすすめ本⑤ 『語感力事典: 日常会話からネーミングまで』

山口謠司氏著『語感力事典: 日常会話からネーミングまで』は、語感力を鍛えるための一冊です。

味覚を含む「食感」を鍛えることで料理のより深い味わいがわかるように、「語感力」を鍛えることでより心に染みる言葉を云い分ける、聞き分けることができるようになる! とのこと。

本書では、日本語が持つ音のイメージ=語感と、語感から発生したオノマトペを五十音順に事典形式で紹介。

各音の〈ひらがな〉と〈カタカナ〉の成り立ちから、

  • あ=新しい始まりを感じる語感

  • い=一直線に進んでいく語感

  • う=「定まらない」「漠然としている」語感

  • え=子どもっぽさを演出する語感

  • お=呼び掛けの語感

など、各音が持つ語感について具体例を示しながら解説しています。

調べるために開く事典──というよりは、読み物としての側面が強めな一冊。

「ほやり」や「ましくしゃ」など、現代では使われなくなったオノマトペについて知見を深めたい! という人ネーミングで悩んでいる人におすすめではないかと。

比喩表現のおすすめ本⑥ 『感情類語辞典[増補改訂版]』

アンジェラ・アッカーマン氏著『感情類語辞典[増補改訂版]』では、130の感情について、その感情に基づく様々な反応を人間の心理描写に活用可能な「類語」として紹介しています。

たとえば、「葛藤」という言葉を引きますと、

外的なシグナル
・わずかに険しい表情で唇をぎゅっと結ぶ
・何度もつばを飲み込み、まばたきをする
・鼻筋に皺を寄せる

内的な感覚
・頭痛
・体が重い
・胸が締めつけられる

精神的な反応
・賛否を天秤にかける
・情報を探る、求める
・心を決めるために道徳的信条を持ち出す

一時的に強く、または長期的に表れる反応
・乱れた容姿
・「カギ」となる解決策を求めて、情報収集に没頭する
・ストレスによる頭痛

隠れた感情を表すサイン
・自分は決断を下すのにふさわしくないと告げる
・事態を避けるために言いわけをする
・立て直すために休憩が必要だと提案する

この感情を想起させる動詞
・苦悶する
・発言を撤回する
・奮闘する

などといった具合に、「葛藤」に関する様々な感情情報が紹介されています。

「ステキな比喩表現を知りたい!」というよりは、

  • 背筋がゾッとする

  • 背筋に震えが走る

などのお馴染みの表現にひとひねりを加えるためのヒントがほしいという人向けの本です。

余談ですが、本書は海外著者の訳書であるため、たとえば「情欲」という言葉なんか引きますと、その外的シグナル(=第三者から見て取れるセックスアピール)から多分にお国柄を感じることができますので。

国民性の違いを知る一冊としてもおすすめです。

今回紹介した6冊が、あなたの表現力をはぐくむ一助となれば幸いです。

今回はそんな感じ。ではまた~。

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