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言わないよ。

あの時、
僕は君に打ち明ける勇気が
欲しかったんだ。 

あと一歩の自信があれば、
もう少しの努力さえあれば、
僕は、あの時、君に、
打ち明けられていたんだ。 

負け惜しみで
言っている分けじゃなくて、
本当に、あの時、僕は、
君が大好きだったんだ。 

それなのに、
自分に素直になれなくて、
自信が持てなくて、
躊躇って、俯いて、踏み出せずに
言い出せなかったんだ。 

負け惜しみで
言っている分けじゃなくて。 

後悔をしている分けじゃなくて。 

だって、それが僕なんだから。


あの時の自分をちゃんと憶えてる。 

何年か経った今でも忘れない。 

そんな勇気を持てなかった自分を
忘れてはいないんだ。






そして今でも、
相変わらず僕は、
君に告げずに過ごしている。





だって、
君はあれからずっと
いつだって、
朝起きて、出掛ける前に、
帰って来た時も。 

抱き合ってキスをして
お休みの挨拶も、もちろん。 

大好き、愛してるをくれるから、
僕は、
応じるだけで、
答えないままでいる。


いいや、違うんだ。
僕が先に君を好きになったんだ。 

僕の方が先だったんだ。 

君は間違っている。 

君が僕に何千、何万の
「好き」をくれたとしても、
僕の方が君を、
君の何十倍も「愛してる」。 

そりゃあ、
僕は、言葉にはしてないよ。 

だけど君は、
僕の「好き」を感じてるからこそ
「好き」を返してるんだ。 

そんな事、
僕は知っているのさ。 

だから僕は、
絶対にズルくなんかない。







僕は言わないよ。





僕がこの世を去る、
最後の最期の時まで。





だって、
君をこの世に残して
去らなきゃならない時に、
僕が君に遺す最期の言葉として
君に伝えなければならない
大切な遺言としての
「好き」「愛してる」の
二言だから。




それまでは、




ずっと、 

だからね。

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