七つの幸運ep.絡糸繰糸「絡繰仕掛けの舞台袖」②
2.
「……ありがとう。じゃあ、よろしく頼むわね」
絡糸繰糸。からめいとそうし。公立域還高校中退者。感興篭絡の人形遣い。
彼女は耳に当てた携帯電話の向こうから漏れる息遣いの熱を感じながら、そっと唇を湿らせる。
そこに特にこれといった感情はない。
ただ、こうした方がいいことはわかっている。
「じゃあ、また会える日を楽しみにしてるわね。おやすみ」
おやすみも。ありがとうも。おはようも。
ほんとうに言うべき相手はいつも、声も手も届かないところにある。
「意味なんかないわ。わたしはただ、こうやって、遊ぶだけ。……あの頃のまま、ね」
これは、あまりだれにも知られていないことなのだが。
「あなたもそうよね? 奇跡」
未知標奇跡の初めての『おともだち』は、絡糸繰糸なのだ。
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