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七つの幸運ep.絡糸繰糸「絡繰仕掛けの舞台袖」①

1.

この世には、二種類の人間がいる。現在を楽しめる人間と、未来を楽しみにする人間と。

 好きなものを最後まで取っておくと、後悔することになる。兄弟姉妹の多い家庭で育った者なら小学校に上がる前には身を持って学習するその知見を、獲得する機会のないまま大人になる子供は、意外と多い。

 死ぬまで、一生、気がつかないまま──気が付いていないことにも気が付かないまま終わってしまうのなら、それもまた一つの幸せなのであろうが、残念ながら幸運など、そう易々と転がっているものではない。四つ葉のついた白詰草よりも、見つけ辛いものなのだ。後悔のない選択など。

「あなた、わたしのことが好きなんでしょ? だったらわたしのいうことは、なんでも聞いてくれるはずよね──だって、好きな人の幸せは、自分の幸せだものね」

 そんななか、幸せを後に残しながら楽しそうに人形を撫でる少女が、ここにひとり。

 紫ずくめの暗躍者。

 黒子の黒幕。

 感興篭絡のモテ女。

【手繰】って遊ぶ人形遣い──絡糸繰糸。

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