読書メモ(産業廃棄物処理と静脈物流)

■作者と概要

・作者は鈴木邦成。産業廃棄物処理及び静脈物流に関しての基礎情報や動向がまとめられている。

■市場概要

・製品が使用されるまでを動脈産業、使用されてから回収するまでを静脈産業という。日本の産業廃棄物の総排出量は年間約4億2200万トン(2007年)。バブル期以降4万トン前後を横ばいで推移。産業廃棄物の内訳は汚泥45%、動物の糞尿21%、がれきが5%、鉱さい6%、煤塵4%、金属屑3%、廃プラ2%、木屑2%である。最終処分量の減少と再生利用料の増加が大きなトレンド

・産業廃棄物全体の75%が再資源化を念頭に中間処理。超苦節の再利用は22%、3%が最終処分。産業廃棄物処理業者の7割は従業員数50人未満

・廃棄物排出者側に問われる責任は年々重くなっており不法投棄があった場合たとえそれが委託先の行いであったとしても排出者も処分される。委託する際に求められる排出者義務として①委託基準の遵守義務②マニフェストの交付、確認義務③委託後適正処理のための注意義務 がある。

・廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分かれる。自分が利用することなく、かといって他人に売り渡したりできないものが廃棄物である。産業廃棄物20品目に入らない事業活動によって排出された廃棄物は産業一般廃棄物である。

・動脈産業においてもグリーンSCM(3Rや修理、製品再生などを戦略的に展開し可能な限り廃棄物や有害物質を減少)を進める方向。企画、調達、生産段階から3Rの視点で生産

・アメリカでは廃棄物処理ビジネスの規制緩和が相当進んでいる。80兆市場。収集運搬、中間処理、最終処分、リサイクルをトータルマネジメントするコングロマリット的な存在が出現(ウェイストマネジメント)

■廃棄物処理について

産業廃棄物が処理されるまでの流れは廃棄⇨収集運搬⇨分別⇨破砕切断圧縮焼却⇨収集運搬⇨埋立焼却 である。分別及び破砕切断圧縮焼却を中間処理施設で行う最終処理に関しては①安定型最終処分場②遮断型最終処分場③管理型最終処分場 に分かれる。安定処分場では腐敗しないもの(廃プラやゴム金属ガラスくず、コンクリや瓦礫)を、遮断型最終処分場は有害な物質の処分を、管理型最終処分場では浸出液処理施設が必要なもの(木屑や汚泥など)を処分する。

・収集運搬には①ダンプ車(固形状の産業廃棄物)②粉粒体運搬車(煤塵などの粉粒)③着脱式コンテナ専用車(荷役の効率化を促進)④強力吸引車(汚泥や建設現場の小石などを高速で吸引)

・産業廃棄物をリサイクルしやすいように大まかに分別する「粗選別」を行い、風力型回転選別機、ふるい型選別機、手選別で選別する。破砕や圧縮は減容化のために行われ、焼却の熱エネルギーを活用するサーマルリサイクルも注目されている。

・廃棄物の輸出入は規制が強化されている。バーゼル条約(1992)ではPCBやメッキ汚泥などの59品目が特定有害廃棄物として規制の対象になった。船積みと荷揚げの監視体制が強化されている

・特別管理廃棄物(爆発性や毒性、感染性のあるもの)は特別な処理方法で処分(二重梱包や固定化など)。例えばPCBやアスベストなどがこれに該当する

・最終処分場には搬入される廃棄物の質や量をチェックする搬入管理施設(管理棟と軽量設備からなる)がある

・産業廃棄物の中間処理施設は2万施設ある。瓦礫は破砕後路盤材などに再生、汚泥は脱水⇨機械乾燥⇨天日乾燥⇨焼却のプロセスのように、処理するものによって処理場の形態が大きく異なる。

■契約書について

・廃棄物の処理が適正に行われたかどうかをチェックする仕組みとしてマニフェスト(産業廃棄物管理票)がある。マニフェストは産業廃棄物とともに移動し、処理プロセスごとに適正処理が行われる財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが運営を行う電子マニフェストの普及が進んでいる。電子マニフェストにより①産業廃棄物処理の監視業務の合理化②不適正処理の原因者究明の迅速化③情報偽造の防止 がある。

・不法投棄が発生した場合、適正価格よりも処理料金が安い場合は適正対価を負担していないとして罰則を受ける。

・収集運搬、中間処理などそれぞれの業者と契約をする必要がある。再委託は原則禁止

・マニフェストは都道府県の産業廃棄物協会で入手できる。紙の場合7枚からなる。

■産業別のリサイクルの実態

・自動車業界ではシュレッダーダストなどの回収、再資源化を義務付けている。1年間の使用済み自動車は500万台ある。自動車整備業車(8万社)、中古専門店(5万店)、ディーラー(1万8000店)が中古自動車市場を形成している。

・建設業界では特定建設資材の分別解体、再資源化などを義務化している。産業廃棄物全体の4割を建設業界が占めている。法律も整備が進んでいる

・家電業界では最終処分場不足による廃棄物発生の抑制と中間処理体制の充実が求められた背景から家電リサイクル法が設けられ非常にリサイクルが進んでいる。家電リサイクルシステムはAグループ(東芝、パナソニックが中心)とBグループ(ソニー、日立製作所、三洋電機が中心)で別々のリサイクルネットワークを構築している

・食品業界では食品リサイクル法で食品メーカー、食品卸売業、小売業、飲食店やホテルや結婚式場が該当する。薬事法に規定する医薬品や医薬部外品は入っていない

・アパレル業界では繊維リサイクル法はまだ実現していない。紡績工場から排出される天然繊維クズは産業廃棄物だが織布工場から排出されるコットンは一般廃棄物であるなど一律に繊維クズとして扱えないことから焼却処分されるゴミが多い。

・中国では日本でいう家電リサイクル法があり、生産者のレベルが高く規制しやすいパソコン業界にターゲットを絞った法律が設けられている。シンガポールでは政府が慟哭を東南アジア地域における廃棄物処理の中核都市とする構想を打ち出している

■今後

・静脈物流の場合、動脈物流と異なる特殊性がいくつも存在するためそれを踏まえてのネットワークが求められる。具体的には動脈物流との比較において①機密性が低い②リードタイムや荷役作業に柔軟性がある③コストが割高で1社単独ではなかなか解決できない といった特徴がある

・静脈物流では理論上モーダルシフトのメリットが大きい。リードタイムが長いため、多頻度小口や時間指定の必要性が小さいため。

・複数企業が共同で使用できる輸送ネットワークを持つことによる効率化の実現。オランダでは自治体主導ですでに取り組み事例あり。

・通い箱導入による梱包関連のリサイクル品の大幅減少。デポジット制度、エコポイント制度による排出者側へのリサイクルへのメリット提示。

■その他

・中間処理施設ののちに①軽量②受入検査③分別・選別 が行われリサイクル可能か否かで次のプロセスへ移る

・「専らもの」=専ら再生利用目的となる廃棄物のことで古紙、くず鉄、空き瓶、古繊維がある

・委託契約書は5年間の保存が義務

・動脈物流の効率的な方法にモダールシフトがある(複合一貫輸送)

・「処分」とは中間処理と最終処分、「処理」とは収集運搬と処分を指す

・RFID(非接触タグ)を用いた海外への不法投棄の防止システムの開発が進んでいる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?