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【誰でもできる】リファラル採用プロジェクト運用マニュアル

はじめに

今回はスタートアップやベンチャー企業がリファラル採用を推進するための企画と運用方法、インセンティブの設計について紹介します。

スタートアップや上場前後の事業会社で、複数のリファラルプロジェクトを企画・推進してきた経験をもとに、細かく気になる点も含め解説しています。

【企画編】リファラル採用をプロジェクト化しよう

◯リファラル採用をプロジェクト化する

リファラル採用の成果を最大化し、継続的な採用チャネルとしていくためには、リファラル採用を全社のプロジェクト化することがおすすめです。

「リファラルやってください」「声かけしてください」だけだと、普段業務が忙しい中で、頭では分かってても優先度が上がりづらいです。

各個人がもつ潜在的な候補者を顕在化するために、あるいは好事例を他の人がすぐに展開できるためにもプロジェクト化することのメリットは大きいです。

◯強制参加ではなく任意参加にする

特にスタートアップだと強制参加として実施することが多いですが、仲間集めは意思のあるメンバーの任意参加のものとして実施するのが良いです。

強制して実施された採用活動は、下記のようなことがおこり、意思あるメンバーの意欲に悪影響がでます。

◯よくある事例
・定例ミーティングにこなくなる
・空アポが発生する
・プロジェクトを途中離脱する

任意参加の体制で運用しつつ、参加者が最大化するような仕掛けを考えることが大事です。

◯リーダーを設定する

リファラルプロジェクト全体のリーダー、チーム別のリーダーを設定しましょう。

リーダーを設定することで責任が分かりやすくなり、プロジェクト推進におけるメリットが大きいです。

◯全体のリーダーの役割
全体方針、目標、インセンティブ設計などに責任を持ち、経営メンバーと連携しながらプロジェクトをリードする存在です。

◯チームリーダーの役割
全体設計に基づき、成果を出すためのプロジェクトマネジメントを実施します。メンバーの課題を吸い上げ、迅速に解決し、動きが止まらない状態を作ります。

◯MBOやOKRにリファラルを盛り込む

スタートアップやベンチャーなど、採用=事業成長が直接的に結びつく場合は、目標や評価に組み込んでしまうのも良い手です。

会社や事業部において採用が重要なテーマになっている場合は、これによりリーダーや参加メンバーの意欲と行動を担保することができ、「なぜやるのか」が明確になります。


◯社長や経営陣をプロジェクトに巻き込む

スタートアップなどであれば、経営メンバーが採用にコミットすることは当たり前だと思いますが、メガベンチャーなどでもリファラルプロジェクトに経営陣を巻き込んでいきましょう!

経営メンバーがプロジェクトに入ることで、採用の重要性が伝わりやすく、メンバーも「自分もやらなければ」と意識が変わり、プロジェクトの推進に寄与します。

◯アクションが生まれやすい施策を計画する

カジュアル面談など選考要素のないアクションを考え、プロジェクト発足時に推進するようにしましょう。

選考意思を強め過ぎると「そんなつもりなかったのに」と候補者に嫌悪されるだけでなく、本来の友人関係も失う危険性があります。

下記のような施策を実施することでまずはリードを作ることが重要です。

◯効果的な施策の事例
・カジュアル面談
・ランチ、カフェ会
・ミートアップ
・勉強会への誘致

◯ランチやディナーの費用補助を整備する

施策の一例としてランチやディナーの選択肢を挙げましたが、ここは会社としてルールを決めて補助しましょう。

ランチは高くても2000円程度ですし、月間で20件実施しても4万円です。20リードから1人採用が決まればエージェントと比較するとかなり割安なので、ここの費用は惜しまないのが良いと思います。

むしろ考えるべきリスクはメンバーのアクションが起きないことだと考えましょう。

◯EXを損ねないオペレーションを作る

細かいところですが、候補者情報登録や経費精算の仕組みをgoogle formで統一して分かりやすくするなど、簡易的なオペレーションの設計が重要です。

下記は簡単なイメージです。

notionでマニュアルを作ったりするのも一つの手で、大事なのは「行動が止まらないようなオペレーションを構築」することに注力しましょう。


【運用編】リファラル採用プロジェクト

ここからは実際に企画したプロジェクトを実施する際の運用方法を実務レベルで順序立てて紹介します。

◯キックオフMTGで目標設定

まずはチームリーダーがチーム全体目標と各個人目標をキックオフMTGで決めます。

◯チーム目標の決め方
期間と具体的な数値を決めます。3か月で2次面接合格者を1名出すなど、定量的に決めることで振り返りをしやすくなります。

◯個人目標の決め方
チームリーダーやメンバーが押し付けるのではなく、メンバーに考えて決めてもらことが重要です。与えてしまうと、目標に責任を持ちづらくなります。

後ほど紹介する種蒔き期間であれば「5名の有効リードを作る」、刈り取り期間であれば「1名の選考意思を獲得する」などが具体的な目標例になります。

下記のようなフォーマットでキックオフをすると良いです。

◯週次定例でモニタリング

決めた目標に対しての進捗に加え、毎週の行動を定例MTGでモニタリングします。週次定例の目的は課題とアクションを明確にすることです。

◯週次定例で注意する点
リーダーもメンバーも「モニタリング」と聞くと、数字を細かく確認するイメージをもつと思います。しかし、個人を詰めてしまうようなコミュニケーションはNGです。
あくまで定例ミーティングは、課題とアクションを明確にする場にしましょう。

下記のようなテーマをチームでモニタリングしましょう。

◯週次定例のテーマ例
「この1週間の行動は何をしたか」
「行動の結果どんな成果がでたか」
「次の1週間は何をするか」
「進める上で何に困っているか」
「他のチームで成功している事例はなにか」

◯プロジェクトリーダーが課題と成功事例を吸い上げる

各チームが動き出すと少しずつ課題が見えてきます。チームリーダーは課題とアクションの成功事例をプロジェクトリーダーに共有し、解決と共有に動きます。

課題は他のチームでも共通で起きる可能性があるので、解決できれば全体に大きな影響が出ます。

このような形でチームリーダーの定例で課題を吸い上げましょう

特に誰でも真似できる成功事例は素早く展開し、チームリーダーが各メンバーのアクションに組み込むようにマネジメントとモニタリングが必要です。

一番の問題は課題が解決しないことで手が止まってしまうことなので、これを防ぎましょう。

◯リーダーは常に受け皿を用意する

プロジェクトを進めていく上でよくある課題は、「次に進まない」ことです。

◯次に進まない事例
・カジュアル面談の次が誘いづらい
・ランチしたが次何をすれば良いかわからない

このような事例を想定した上で、下記のように候補者を場合わけし、受け箱を先んじて準備しておくことがおすすめです。 

◯場合わけの事例
・転職意欲あり/なし
・自社への興味あり/なし

◯具体的な箱の事例
・転職意欲がある方で自社にも興味を持っている方 : 経営メンバーとのカジュアル面談
・転職意欲があるが自社へ興味が湧いてない : 月次のミートアップに誘致
・転職意欲はないが自社へ興味ある方 : 勉強会へ誘致

◯意思がない候補者を無理につなげない

リファラル推進を真面目にすればするほど、「次につなげなければ」と強迫観念にとらわれがちです。

無理に繋げてお互いに良いことはないので、あくまで先述した場合わけをした候補者ごとに、適切なタイミングで適切なアプローチをすることが大事です。

◯成功事例と進捗を全体にシェアする機会を設ける

小さな成功事例で良いので最低でも毎月各チームの成功事例を全体にシェアする機会を設けましょう。

これによって参加メンバーの自己肯定感を醸成できるだけでなく、全体で実践できれば成果につながる可能性が高くなります

また数値を全体で統合してシェアすることで、目標に対する進捗を全員が確認でき、課題とアクションが明確になります。

運用で気をつけるべき3つのこと

◯個人に順位づけをしない

リファラルの行動を可視化していくと、個人順位をつけてしまうことがあります。しかしこれは諸刃の剣で、参加者のモチベーションを大きく下げる危険性があります。

「できる人」「できない人」というレッテルを貼りかねないため、自己肯定感を下げたり、本業務へ悪影響が出ます。

これが離職に繋がると本来の目的から逸れてしまうので、充分に運用に注意が必要です。

◯個人の成功事例を共有しよう
チームやプロジェクト全体で成果を出すことに意味があるので、個人の賞賛は成功事例を共有する方が全体として利があります。

◯「種まき期間」と「刈り取り期間」を混同しない

リファラルの成果は、個人の繋がりに大きく依存する傾向があります。その中にも、種まき期間と刈り取り期間の2つの段階があります。

種蒔き無しに刈り取れることは稀です。にもかかわらず、刈り取り=選考誘致や内定承諾のみで、メンバーの良し悪しを決める方が多いです。

まだリードがない人はリードを作ることが最大の優先事項であり、リードがある人は刈り取りに注力を向けるべきです。

リーダーはメンバーの状況を見ながら、個別化したアクションを打診しましょう。

◯プロジェクトを白けさせない

リファラルプロジェクトを運用していくと、「しっかりやらなければ」と考えてしまい、真面目な運用になりがちです。

モニタリングをすることは重要ですが、「このプロジェクトに関わっていたい」と思ってもらえるような仕掛けが重要です。

特に発足から2-3ヶ月すると行動が詰まりがちなので、キャンペーンや成功事例の共有を積極的にするなど、楽しいプロジェクトにしましょう。

プロジェクトマネジメントより、意外とこういった「楽しさ」が重要だったりします

インセンティブの設計

◯原則は内定承諾か入社でカウント

採用成功のためのプロジェクトなので、原則は内定承諾か入社で判断します。新卒など入社まで期間があるものは内定承諾、中途採用は入社などで分ける方法もおすすめです。

◯プロジェクト初期の工夫
プロジェクト発足後の最初の3か月は種まき期としてカジュアル面談設定数をKPIに設定し、小さなインセンティブを設計すると盛り上がりやすくなります。スタバカードや経営陣とのランチ会など、企業規模やメンバーのニーズに合わせたコンテンツを用意しましょう。

◯個人へのインセンティブ設計

個人へのインセンティブ設計の事例としては、大きく2つあります。1つは現金支給、もう1つはディナー会などです。

ここの意思決定で考えるべきポイントは、一度施策を選ぶと中長期的に変更できない点です。特に、現金支給の場合は一度設定した金額を下げることは難しいので慎重に設定しましょう。

リファラルを文化にしていきたい企業にとっては現金支給は諸刃の剣なので、中長期的にリファラルをどうすべきかを考えた上で決断しましょう。

参考程度に、正社員採用で10-20万円程度が最初のスタートとして適切な価格だと思います。採用難易度の高いポジションは+5-10万などの追加インセンティブを設計するのもおすすめです。

◯業務委託メンバーのインセンティブ

業務委託が正社員の採用をすることは、かなり難易度が高いので、あくまで業務委託やインターンなど非正規雇用のメンバーを対象としたリファラルしましょう。

誘われた候補者も業務委託のメンバーから正社員に誘われても困惑するので、対象を限定することが重要です。

正社員の士気を下げないために、半分程度のインセンティブ差分にすることがおすすめです。

さいごに

スタートアップや事業会社がリファラル採用を成功させるための準備と運用について解説しました。

プロジェクトを白けさせないことも重要ですが、メンバーの行動が止まらないような工夫を継続できるか、はもっと重要です。

リファラル採用の運用について気になる方がいれば、いつでも気軽にご連絡ください。