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ストーリーで読む病院でのリハ診療報酬

私の仕事は、総合病院のリハビリテーション部門のマネジャーである。マネジャーとしての仕事の一つに、複雑な保険診療や診療報酬を現場にわかりやすく伝えるという仕事がある。本稿では、読者であるあなたが「入院してリハビリテーションを受ける」という状況を仮定し、入院から退院までの流れの中で、どのような理由でリハビリテーションが展開されていくかを診療報酬の仕組みの視点から解説する。

あなたが病院に入院し、医師があなたに「実用的な日常生活における諸活動の実現のためにリハビリテーションが必要」と判断したときに、リハビリテーションを行うことになる。

その場合、医師があなたの状態に最も適したリハビリテーションの実施計画を立案し、その内容をあなたかあなたの家族に説明する。この説明のタイミングは、原則リハビリテーションを始めてから7日以内、遅くても14日以内には行われる。このリハビリテーションの実施計画は、あなたの状態に応じてその内容が変更される度に立案されるが、少なくとも3か月に1回以上は行われる。

リハビリテーションを受けたい時間の長さは人それぞれであるが、どんなに長くても1日に2時間又は人によっては3時間を越えてリハビリテーションを受けることはできない。その理由は、リハビリテーションの効果が期待できる最適な時間の長さが存在するということに加え、あなたの疲労を考慮した現実的な時間の長さ、また、1人の療法士がよりたくさんの方にリハビリテーションを提供できるようにするためであると推測する。

しかし、発症して14日〜30日以内の間は、集中的にリハビリテーションを提供する病院が多い。それは、発症後早くからリハビリテーションを行った方が結果がよいことが多いためであり、保険診療においてもできるだけ早く、そして十分な量のリハビリテーションを提供して下さいというメッセージを込めた期間限定の加算が設けられている。

実用的な諸活動を実現するためには、場合によっては病院以外の場所でリハビリテーションを行うことも必要となる。例えば、道路の横断や公共交通機関の利用といった移動に関するものや、特殊な道具を使うような仕事に関するもの、買い物や調理・洗濯などの家事に関するものがそれにあたる。その場合は、練習する場所までの移動時間を含まずに、1日1時間までは病院以外の場所でリハビリテーションを行うことができる。

病院には、さまざまな医療専門職が勤務している。あなたの病気を治したり軽くするように助ける医師、あなたの療養上のお手伝いをする看護師、そして、あなたが動くときの不自由さを軽くするように助ける理学療法士、あなたが好きなものを食べたり伝えたいことを伝えられるように助ける言語聴覚士、あなたが大切にしていたことをこれからもできるようにすることを助ける作業療法士などである。その他にも、社会ソーシャルワーカーや薬剤師、臨床工学技士、医療事務など、たくさんの職種があなたのリハビリテーションに関わっている。

あなたのリハビリテーションがはじまってしばらくすると、あなたのリハビリテーションに関わるさまざまな医療専門職が共同して、あなたのリハビリテーションの目標や計画、役割分担について話し合う。その結果は総合的なリハビリテーションの実施計画としてまとめられ、多くても1か月に1回は医療専門職からあなたに説明される。

あなたの入院が1か月を超えると見込まれる場合などは、スムーズに元の生活に戻れるように、医療専門職があなたの自宅を訪問してあなたやあなたの家族にアドバイスをすることがある。この場合の交通費はあなたが負担することになるが、実際の生活環境を一緒にみながら医療専門職からアドバイスを得る機会はあまりない。手すりをつけたり自宅を改修する必要がある場合には、その場に工務店の方などに同席していただくと不安をその場で解消することができる。

以上、今回は、どのような人がリハビリテーションを受ける対象となるのか、なぜ一日中リハビリテーションを受けることができないのか、なぜ入院して間もない時期からリハビリテーションをはじめなければならないのか、なぜ何度もリハビリテーションの計画を説明されるのか、そして、なぜ退院前に医療専門職が家を訪ねてくるのかについてを解説した。
医療専門職は患者さんに対して説明をしているつもりでも、実際には対象者の方に伝わっていないということが少なくない。説明が伝わっていないことによってリハビリテーションに不安を持っている方や、医療専門職を目指す学生の目に触れることができれば幸いである。

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