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時事無斎雑話(11) カレーに関する断章(後編:奇跡のカレー編)

 前編・中編と、カレーに関する過去の思い出や失敗談を書いてきました。最後に、一度だけ作ることができた「奇跡のカレー」の話と自分が普段作っているレシピの紹介をして終わりたいと思います。

※前編「思い出カレー編」はこちら

※中編「闇鍋カレー編」はこちら

9.奇跡のカレー

 確か10年ほど前のある日のこと、家でカレーを作っているうちに「あれ、今日はいつもと少し違うのでは」と感じたことがありました。
 具は確か、スーパーで安売りしているイカゲソ(刺身を取った残りの頭や足やヒレ)をメインにしたシーフードカレーでした。いつもに比べ葉もの野菜を多めに入れ、さらにシナモンパウダーとタイムを多めに使って甘い香りを出していたと記憶しています。そこから何やらとてつもなく甘美な香りが立ち昇ってきます。私が街をぶらついていて、どこかのカレー店からあの匂いが漂ってきたら、そのまま吸い込まれるように店に入ってしまったかも知れません。それほどの香りでした。この時のカレーを弁当に入れて職場で食べていたところ、近くに座っていた人から「異様にいい匂いが漂ってくるけど、何だ、それ。」と驚いたように言われたので、決して私の気のせいではなかったはずです。
 香りだけでなく味も、多少酸味は強かったものの(後述のように、少し酸味の強い味付けにするのが私の作り方です)非の打ち所のないもので、鍋一杯を食べきった時は「ああ、なくなってしまった」という喪失感に見舞われたものです。
 材料が特別だったわけでも、作り方がいつもと違ったわけでもないので、どこかにあの香りと味を作り出した「奇跡の配合」が特異点のように存在していて、目分量で行った味付けが偶然それに一致したのでしょう。そう考えて、もう一度あの「奇跡のカレー」ができないか試しているのですが、未だに再現できていません。
 以下、私自身がいつも作っているレシピを公開しますので、良ければ皆さんも作ってみて、私が再現できなかった「奇跡のカレー」に挑戦してみて下さい。スパイスなどの調味料はいちおう私自身が普段使っているものを紹介しておきますが、お好みに合わせ適宜銘柄や配合を変更して結構です。入れる材料(及び入れない方が良い材料)の詳細については中編「闇鍋カレー編」の内容も参照下さい。作る分量は4リットルの鍋に一杯分を想定しています。

①タマネギ(中3個程度)をみじん切りにし、薄切りにしたニンニク大1片と共に、粗挽きの黒コショウを振り木べらでかき混ぜながら中火で炒めます。炒め油はあまり多すぎないようにします。

②十分炒めたら、赤ワイン(紙パックやペットボトルの安いもので構いません)をタマネギが浸るくらい注ぎ、ローレル(月桂樹の葉)2~3枚、クローブ(丁字)4~5個、スターアニス(八角、大茴香(だいういきょう))を1/2~1/4個程度、細かく刻んだショウガ(親指の第1関節程度の量)を入れます。このうちスターアニスは人によって好みが大きく分かれるため、なじみのない人は最初は冒険せず、入れないで作った方が無難です。

※クローブ(ホール)

※スターアニス(八角)ホール小袋

③赤ワインが沸騰したら、乱切りにした生のトマト4~5個分、またはトマトピュレー1瓶か缶詰のトマト1缶を入れます(むろんパックでも構いません)。瓶詰・缶詰を使った時は容器を少量の水でゆすいで付着したトマトを洗い落とし、それも鍋に入れます。基本的に水はそれだけしか使わず、赤ワインと材料の水分だけで煮込んで濃厚に仕立てます。うま味・辛み・塩味の追加のため、豆板醤をティースプーン1杯ほど入れます。具にすじ肉を使う時はここで入れます。

※トマトピュレー(パック)

※カットトマト(パック)

※豆板醤

④時々かき混ぜながら、沸騰したら、角切りにしたニンジン、刻んだセロリの葉、さらに各種の野菜・果物を加えていきます。前回書いた通り私自身はカレーにジャガイモを入れませんが、入れるとしたらここでしょう。

⑤野菜に火が通ったら肉(すじ肉以外)またはイカなどのシーフードを入れます。塩味とうま味を追加するため醤油を少し入れますが、入れすぎるとトマトの味が消えてしまうので量は控えめにします。さらに酢(普通の穀物酢で構いません)を少し入れて、トマトと共に幾分酸味の強い味付けにします。酢を入れるのは作り置き時の防腐も兼ねています。ただしジャガイモが入る場合は、酸味の強い味付けだと合わないかもしれません。

⑥肉に火が通ったら火を弱火にしてカレー粉、ターメリック、ナツメグ、クミンなどのスパイスをお好みで加えていきます。特にチキンカレーやシーフードカレーの時にはシナモンパウダーとタイムを多めに入れて甘い香りに仕上げるようにしています。

※ターメリック(パウダー)

※ナツメグ(パウダー)

※クミン(パウダー)

※シナモン(パウダー)

※タイム(パウダー)

⑦しばらく煮込み、入れた野菜が溶けるくらいになったら火をとろ火に落として固形ルウを入れます。フレークのルウを加える場合も同時に入れます。焦げ付きを防ぐため、最初はルウを表面に落としたまましばらく放置し、溶けたら鍋底までよく混ぜ返しながら煮込みます。

⑧充分煮込んだら塩味を調整し、最後に赤ワインビネガーを軽く回しかけて火を止めます。

※赤ワインビネガー

 料理の味は個人の好みで評価が大きく変わります。特に私のレシピはジャガイモが入らなかったり酸味が強かったりと一般的な作り方から少し外れているため、必ずしも万人向きの味ではないかもしれません。ただ、それでも私自身が自炊生活の中で試行錯誤を繰り返しながら作ってきたものですので、どなたかの参考になれば、と思ってここに掲載しました。
 そしてもし、このレシピを元に「これこそ『奇跡のカレー』に違いない」という配合を見つけた方がいましたら、ご自分の記事なりコメント欄なりで教えていただければと思います。

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