アメーバピグでネカマやってた時に出会った一人の女の子の話
PC版アメーバピグが終了するらしい。
アメーバピグといえば、2009年頃に開始したAmebaによるアバターサービス。
自分そっくりのアバターを作り、着せかえや部屋を彩って他のユーザーとオープンチャットで交流するのが目的だ。
そんなアメピグが、今の僕の趣味の形成に多大な影響を与えているということを、一人のユーザーとの交流の思い出とともに述べていきたい。
2009年当時の僕は中学2年生で、同級生が何人もやっていたというのもあり、流されるように始めた。
当時の僕はオタクなりたての、オタクだとアピることがかっこいいと思っているタイプの典型的な黒歴史パターン真っ盛りだった。
灼眼のシャナにハマってそれまで食べたことがほとんどないメロンパンを毎日齧り、教室の隅っこで上着を被って寝たふりをしながらこっそり持ってきたPSPにnicozonで落とした東方アレンジを聴いたりしていた。
思い返すだけで飛び降りたくなる。
そんな僕はアメーバピグでもオタクっぽさを出したくなり、金髪ツインテールでドレスを着た美少女のアバターを作った。
ちょっと違うけど、だいたいこんな感じ。東方projectのフランドール・スカーレットをイメージして作りたかったけど、制約上結構違うものができてしまった。
そして僕は学校にオタクの話をする友達がほとんどおらず、インターネットでそういう話をすることに憧れていた。
しかし、ただの男子中学生のオタクが急に話しかけても相手にされるはずもない。
困った僕は、女のふりをしてみることにした。
すると、人間は全員バカなのでめちゃくちゃ優しくしてくれる。
気持ちよかった。インキャ(当時はこの言葉がなかった気がする)の僕が生まれて初めて承認欲求を満たされた瞬間。
その歪な欲求はエスカレートしていく。ピグ(アバター)を着飾って行こうと思った。ちやほやされたくて。
親から貰ったお昼代とかを貯め、Webマネーに替えて課金したこともある。
当時のピグでは、「イケカワ」とかいうよくわからないセンスの服装が流行っていた。
AKBやシドのコラボ衣装や、DAIGOのグローブ、あとなぜか後ろに巻物を背負ったりする。あと全員前髪が7:3。
今思い返すと意味分からない服装だが、なんか強そうなヤツはみんなこんな格好だったし、顔の作りも全部同じだった。
僕も金髪ツインテールというフォーマットは崩さずに作ってみると、めちゃくちゃオタクにモテた。
中身はオタクなのに、オタクにちやほやされていい気持ちになる。今で言うところのバ美肉おじさん的な感じだ。僕は彼らの気持ちがよくわかる。どんな形であれ、普段虐げられている人間は褒められると嬉しい。
色んなオタクがいた。ふつーに自分に似せてる人、アニメのキャラを模した人、
キモイ顔を作って女子小学生とかに絡みまくっている人。
そんな中出会ったのが一人の女の子だった。
その子は黒髪ツインテールで、先ほどの量産型の顔面とは違った可愛さがあり、センスの良いロリータ服を着ていた。
僕は周りとちょっと違うその子に一目惚れし、話しかけた。
見た目だけではなく、性格もちょっと変わってるその子は当時、ニコニコ動画の知識しかなかった僕に多くのことを教えてくれた。
一番大きかったのはSound Horizonを教えてもらったことで、初めてコンセプトアルバムに触れ、アルバム通しで聴くことを覚え、歌詞や世界観を楽しむと言う文化を知った。
僕がインターネットに求めていたのはこれだった……
他にも、DragonGuardianからヘヴィ・メタルを、the GazettEやDIR EN GREYを教えてもらってヴィジュアル系を知った。
今の僕が音楽オタクの端くれをやっているルーツになっているのは、間違いなくアメピグで出会ったこの人だ。
ありがとう。
そしてある時、転機が訪れる。
汚い話だが、当時のアメーバピグでは、ピグHなるものがアンダーグラウンドで流行していた。
男女のピグが裸になり、チャットで淫語を発したり、それっぽく見えるアクションをすると言うものだ。
今思えば地獄でしかないが、アメーバピグが未成年アクセス禁止になるなど、衰退していく一因になったのではないかと思う。
そんなピグHとやらに、その女の子から誘われた。
チャットでそう言うことをする上に、(見かけ上は)百合えっち。
この世の業(カルマ)をゴトゴトと煮詰めた魔女の大釜みたいな状況。
しかし、当時現実でそう言う感じになる筈もなく、承認欲求に餓えていた僕はそれに応じたのだ。
東方の百合同人誌を見まくってた僕は全然受け入れられたし、見かけ上は百合えっちだが僕はネカマなのでセーフだと思っていた。
没入感というのは大事で、自分が女の子だと強く思えば割とイケる。
その女の子とは夜な夜なそんなことをする関係になった。
同じような内容の百合漫画あったら読みたいので教えてください。
そんなことが続いていたある日、事件は起こってしまった。
【七つの罪科】恋も知らずに死せる乙女が
【七つの罪科】野ばらに抱かれて眠る理由は…
あるオタクから告げられた言葉。
「君が仲良くしてるあの子、中身おっさんだよ」
衝撃だった。
藍染惣右介に掛けられていた鏡花水月の幻術を解除されたかのような感覚。
いや、僕もネカマなのでそれ自体を咎めることは出来ないが、
まさかあの子がネカマだったなんて。
つまりどういうことかお分りいただけるだろうか?
「見かけ上は百合えっち」だと思ってチャHしていたと思ったら、
「画面の向こうではオタクとオタクがホモえっち」をしていたのだ……
僕は泣いた。
”いつも人間(ひと)は何も知らない方が
幸福(しあわせ)だろうに
けれど他人(ひと)を求める限り
全てを知りたがる 何故破滅へと歩みだす?”
(Sound Horizon『エルの天秤』より)
自分の罪を自覚し、情けなくなった僕はアメーバピグをやめた。
それから、10年近く経つ。
アメーバピグのPC版が終わる。
あの時絡んだオタクは、女の子だと思ったらオタクだったあの子は、今はどこで何をしているのだろう。
もうインターネットをやめてしまったのだろうか?それとも今も滅びに向かって輝き続けているのだろうか?
僕は今、あなたに教えてもらった音楽ジャンルのオタクとして、元気でやっています。
以上、
間違いなく黒歴史だし、しょうもなさすぎるけど、インターネットによるインターネットにしか生み出せない思い出というのもあるんだよ、という話でした。
全世界に向けて自らの肛門を開示しているような気分だ……
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