2020.04.29 ついに Gackt さんのライブ映像が Youtube で期間限定公開!とにかく観てほしい3作品について書いておく

前々からこういうことを思っていた。

ついにこの人の映像作品も Youtube で観られるようになった...!!

今も好きは好きだけど、特に小学6年生〜大学生のころに自分が一番好きだったアーティストは誰かといえば、Gackt さんだったわけです。今でこそ「"翔んで埼玉"の人」「今はクアラルンプールに住んでるらしい人」「毎年正月になると圧倒的牛肉知識とワイン知識を披露する人」というイメージだと思うんですが、特に僕が熱中していた頃の Gackt さんはアーティストであり、そのライブ、ライブ映像には引き込まれるものがあったわけです。 (ちなみに『翔んで埼玉』は観ていない)

これらの映像作品を、自分はモノによっては擦り切れるほど観たわけで、今更 Youtube に載せられても嬉しいことはない。ただ、観たことのない人にはぜひ大型連休中に時間があるよって人に是非観てもらいたいなという気持ちがあるのでこの記事を書いている。

ということで、今回公開される11作品のうち、自分が特におすすめする3作品について簡単に紹介したい。

第3位: Requiem et Reminiscence Ⅱ ~鎮魂と再生~ (2009年)

まず前提知識として、Gackt さんの多くの作品は、その背景に物語があり、楽曲、映像、ライブはその物語から "派生" したものという位置付けにある。特にオリジナルアルバムのリリースと連動したツアーはその物語のヒントとなる要素がふんだんに散りばめられたコンセプトライブとなっている。

Requiem et Reminiscence Ⅱ (以下: ЯRⅡ) の舞台は第二次世界大戦下のドイツ。不利な戦局を打破するため、人間に人為的な改造を加え、人の心を失ったはずの無限に戦えるサイボーグが秘密裏に造り出されていた、という設定。2001年に行われたツアー『Requiem et Reminiscene』の続編である。

このライブでとにかく印象的だったのは、ЯRⅡから導入された、ステージ全体の背景を覆った LED スクリーン。Gackt さんのコンセプトライブは、1曲ごとに物語の視点、時制、感情が目まぐるしく切り替わりながら進んでゆく。ЯRⅡ 以前のライブでは、その切替を演奏自体や照明などの演出で表現していたわけだけれど、そこに背景映像が加わることで表現の幅が圧倒的に増した。何より、演者の存在感が映像装置に負けてないのがこの映像作品の印象的なところ。むしろ演者の動きに映像がついてきているようにすら見える。

自分自身、Gackt さんのライブツアーを現地で見るのはこれが初めてだった。神奈川県民ホールの3階席のド真ん中ほぼ最前列という、全体の俯瞰をするのにこの上ない席であった。こんなに、ステージ全体で1つのことを表現するエネルギーに溢れてるステージなのか!と感動した思い出がある。

残念なのは、映像作品として、音響を作品世界に合わせるための加工と映像がマッチしていないところ。サイボーグが動く音などをつけて世界観の強調を図ったが、映像自体は客席の存在を意識させるものであったためにちぐはぐになっている、という点に制作過程の混乱が表れてしまっていて残念だなぁ… というのが正直なところ。ただ、それを割り引いても物語とライブを融合させる挑戦という観点で非常に見応えがある作品だと思っている。

第1位: 上弦の月 (2003年)

なぜ第3位の次が第1位かというと、第2位の作品を説明するには『上弦の月』の説明がないとややこしいから。

Gackt さんは2004年に自らのボーカルスタイルを「イチから」見直すのだが、2003年のツアー『上弦の月』は、このボーカルスタイル刷新前最後のライブであり、これまでのライブツアーと比べても完成度が段違い。僕はこの映像が「Gackt 第1期の頂点」だと思っている。

Gackt さんの取り組む最も大きな物語『MOON SAGA』から派生したこのライブは、 同年に公開された、Gackt と Hyde が共演した映画『MOON CHILD』と呼応した演出が特徴。『上弦の月』は、他のライブツアーと違い、幕間の映像などは無いのだが、その分、逆にライブとしてのまとまりが印象に残る。

とある壮大な舞台装置を用いながら第1章を締める『rain』から、ピアノソロ『Solitude ~regret~』で幕が開ける第2章は、当時未だ音源化されていなかった隠れた名曲『君が待っているから』を経て、圧倒的緊張感を放つ『Doomsday』へと繋がってゆく。愛惜、後悔、決意、破滅と続くシーケンスは、1曲ずつがとにかく極端。ぜひ、"ながら観" ではなく、ぜひ真正面からこのドラマチックな流れを体感してほしい。

一転して「陽」の雰囲気となる第3章は、『ANOTHER WORLD』、『wa・su・re・na・i・k・a・ra』(『忘れないから』)、『君が追いかけた夢』と、まさに Gackt さんがマスメディアに引っ張りだこだった頃のポピュラーソングも続くので初心者にも楽しいはず。『Missing』『memories』という爽やか系名曲も、MOON の物語では重要な位置を占めると言われており、見逃し厳禁だ。

デビュー直後の本郷奏多や、政治活動を始めていない山本太郎の姿が見れるのもちょっとだけ注目ポイントである。

第2位: DIABOLOS ~哀婉の詩と聖夜の涙~ (2005年)

これも『MOON SAGA』由来のツアー。『MOON CHILD』 で Hyde が演じたヴァンパイアのルーツを辿ると、それは中世ヨーロッパで闇の住人と戦った使徒であった、というお話。MOON SAGA の時系列はおおよそ作品の発表順と逆行しており、この『DIABOLOS』の更に元をたどると『最期ノ月』や舞台『義経秘伝』といった物語につながっている。

『Gackt 史上、最初で最後の東京ドーム』と当時から本人が語っていたライブの幕開けは、驚くべき演出から始まる。詳しくは映像を観てほしいが、これは東京ドームの「防災上のとある制約」がきっかけだったのだとか。1曲めを歌う前にもし何かあったら… というのを考えない、というのがこの男の強気なところである。この演出を NHK のプロデューサーが目にしたことが、後の Gackt の大河ドラマ出演につながってゆく。

この映像作品は、特に第2章にて東京ドームの広いステージをこれでもかと活かそうとダンサーを大量投入したパフォーマンスが圧巻。『Noesis』の2種類のダンサーと、『Future』のダンサーの計3種類の衣装のシュールさ (人間の醜さを表しているとか) も相まって、圧倒的な緊張感が印象的だ。

まとめ

Gackt さんは、「物語」「視覚演出」「音楽」を融合させた独特な形式のライブを、「Visual」「Live」「Alive」を掛けた『VISUALIVE』と呼んでいる。この呼称が表向きに出てきたのは ЯRⅡ ツアーの終盤頃だったと記憶しているが、「過去の自分を常に超え続ける」という自らに課したハードルや技術の進歩、音楽以外の活動の増加なども相まって、毎年実施されたコンセプトライブも間が空くようになり、『最期ノ月』はそのタイトルにもあるように「LAST VISUALIVE」となってしまった。新しいコンセプトライブが観られないのは残念だが、個人的にはそれでも Gackt さんの過去作品は今観ても見応えがあると感じる。折角の機会なので一人でも多くの人の目に触れられたいなと思った次第。

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