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【チューニング記/RCF】ノーマルを超えていく考え方

主旨


この"チューニング記"は私が愛車・LEXUS RC Fを、"走りの性能"をより追求して磨き上げていくことをテーマにした雑記です。

官能性の高いV8エンジンを心臓に持ち「こんなクルマでサーキットを走ったら絶対に気持ち良い!」と思わせるRCFですが、実際にサーキットで走らせてみると意外と「市販車」としての制約や、より広いユーザーを満足させるために"敢えて尖らせなかった部分"もあるようだと感じます。

そこでRCFが持つ世界観を大切にしつつ、量産状態を"原石"と捉えて"走りに寄せた研ぎ込み"をしたらどこまで"走りの性能"が引き出せるのか?という興味と野望を持ってRCFにチューニングを施します。

その様子を、「面白そう」と思って頂ける方に少し覗き見して頂くという趣旨のコンテンツです。

今回は「ノーマルを超えていく考え方」というタイトルでお届けします。

目指す姿を定義する


前回までの投稿で、ノーマル状態のRCFの特性把握をお見せして、さらにチューニングによってどんな特性にしていきたいかをお見せしました。

再掲しますとこんな感じです。

前回は「こんな全方位レベルアップみたいなこと出来るの?」というところに軽く触れて終わりにしました。今日はその続きをお届けします。

ノーマル状態をリスペクトし、超えていく


最初にはっきり書いておくと、性能を全方位底上げすることは容易ではありません。きちんとした車であればあるほど、全方位のバランスが最も取れている状態がノーマル状態だからです。

#ノーマル状態を作るのにメーカーは4~5年投じるわけで
#しかもプロが4~5年投じるわけで

ノーマル状態へのリスペクトなしにチューニングは成功しません。「ノーマルがなぜそのスペックなのか」を理解できていなければ、改善ではなく破壊になる可能性すらあります。

#そして迷走

ノーマル状態に敬意と理解を持ち、その上で簡単には超えられぬ壁を超えていくという思考が大切です。


市販状態と所有状態の違い


しかし、チューニングの余地は確実にあります。
それは市販状態と所有状態は違うからです。

市販状態は「量産」と呼ばれます。個々の部品や、それらの組付けは「ばらつき」を持っています。その小さなばらつきは設計の想定に織り込み済みではあるものの、やはり狙った設計のど真ん中ではありません。

ここをきちんと合わせるだけでも車は全く違う顔を見せます。

#例えば4輪アライメント調整とか


ここを掘っていくのも面白い話ですが、ここを掘ると一本記事が書けてしまいますからここは今は触れないことにします。

#何なん
#「実走アライメント」で検索
#整体


ちなみに他にも「ノーマルはコストの制約があるから」という嘘か真かの議論も昔からあると思いますが、これもどこかで見たことがあると思いますから触れません。

#想像にお任せします

改めて市販状態と所有状態は違うという話に戻すと、ここで私が触れようという違いは3つあります。

①満足させなければならないドライバーの数
②分業制で作られるか、一人で作るか
③制限時間の有無

この3つです。今回はこれをそれぞれ説明して一つの記事とします。
(今日の記事は約4000文字です。ではどうぞ。)

①満足させなければならないドライバーの数


一般的な市販車というのはどれだけ尖った車であろうとも、ある程度は万人受けしなければなりません。「買ってみたら全然好みと合わなかった」ということがなるべくない方が良いんです。

例えばロータス エキシージやスーパーセブンを買って「この車、乗り心地が悪いよ」というユーザーは極めて少ないと思います。こういった車は一般的でない市販車です。

#むしろ乗り心地の悪さにすら興奮する
#変態向け

一方でレクサス。こちらは正真正銘の"一般的な市販車"です。「こんなのレクサスじゃない!」という人が生まれないように、キャラクターは立てつつも、無難な姿にされています。

#無難というとつまらなく思えますが
#難が無いって凄いことです
#尖らせるよりもよっぽど難しい

しかし、所有状態となればもう"万人受け"は要りません。所有者その人を満足させれば良くなるわけです。

例えば「乗り心地」という、"主観的に評価される特性"について言えば「揺れの収まりは遅いが大きな突き上げがない」という特性と「少しだけ突き上げがあるが揺れが収まるまでが早い」という特性、どちらを好むかは人それぞれ。

所有者が「後者の特性で良し」と考え、道路の段差(マンホールや凸凹)を可能な範囲で避けて走ったり、駐車場のスピードバンプを通過する速度を落としたりするなど使い方でカバーするのであれば、メーカー設計者が悩んだ「そこで突き上げたらドライバーさんは嫌なんじゃないか?」という制約を取り払うことができます。

#スピードバンプってなんだっけ
#いわゆる"かまぼこ"だよ

このようにノーマル車には「長所を伸ばすにはやりたくないけど、短所を減らすためにそうなっている」という箇所があります。

そこを見つけて「そこはドライバー側で何とかするから、車側はこうしよう」と考えていくとモノは研ぎ澄まされていきます。

満足させなければならないドライバーの数が「**万人規模」から「一人」になることで、チューニングの余地は生まれます。


②分業制で作られるか、一人で作るか


続いてこちら。
これは"中の人"なら全員感じていると思います。

車づくりの最大の悩みは「分業制」です。

#少なくとも私はそう

得意な人が得意な部分を担当する「分業制」は一見すると合理的です。
しかし、車のような要素の集合体は要素一つ一つの性能も大切ですが、車全体の辻褄が合っていること、整合が取れていることも大切。

この整合を取るのが"諸々"あってめちゃくちゃ難しいんですよね。
だから実は整合が取り切れていないことがあります。

もちろん車の開発には全体を統括する人がちゃんと居て、その人が「全体として整えていく」という役目を果たそうとしています。

#その仕事は並大抵ではない

しかし③の「制限時間」の話とも関連するのですが、全体の整合ってそう簡単に取り切れないんです。エンジン、シャシー、駆動、操安という感じで"セクション"が必ずあって、各々は結構別世界。お互いにお互いは顔も名前も知らない人なんですよね。

ですから例えば「ブレーキはしっとりしているけど、アクセルはちょっと過敏じゃないか?」なんてことが起こったりします。

運転席に座ればすぐ隣にあるアクセルペダルとブレーキペダル。その2本のペダルの距離は結構遠いと、少なくとも私は感じます。そうじゃなかったら、アクセルとブレーキのフィーリングはどんな車もきちんとシンクロしているはずですからね。


分業制で作られた要素と要素の間にわずかに生じたズレを少しだけアジャストすることが出来れば、ここもチューニングの余地があると言えるでしょう。

まぁ、「言うは易し」で、それが分かったとしてもいざやるとなれば決して簡単ではないことですけどね。


③制限時間の有無


最後は時間のお話。

当然ですが、車は「○○年の○○月に発売するぞ」という「ラインオフ予定日」が灯されて開発されます。

それを守るために日程の関所を設定して、その節目ごとに順調か?遅れているか?を判断しながら確実に発売予定日に向けて開発を遂行していきます。

あまり細かい話をしても仕方ありませんから結論を言うと、「残された時間を見て最適解を判断する」って必ずあるんです。

#「落としどころ」というやつ

私も技術者ですから、「そんなことは一つもない!」と堂々と言い放ちたいところですが、各要素の職人が「ダメだ!やり直す!!」と一人拘っていたら、車は世に送り出されることは無いでしょう。

#ジレンマ
#決められた時間の中で答えを出すのも技術
#1日が27時間になってくれと願っている

技術者は経験と思考をフルに活用し、その時点で最高と思う姿に仕上げます。しかし、あと1年、あと2年あったらと思うとまだ磨ける余地がある。そこを磨くんです。

#それをメーカーが公式にやるのが年次改良

磨くにあたっては、「ある要素を磨く」という観点もあれば「要素間のバランスを磨く」という観点もあります。

磨ける余地の部分を、元の開発に迫るクオリティで磨き込めば、そこにはチューニングの余地があると言えるでしょう。

#「元の開発に迫るクオリティ」が肝
#クオリティが低かったら単なるデチューン


まとめ


まとめますと、
・ノーマルをリスペクトしてチューニングしていく
・市販状態と所有状態の違いの部分に磨き込みの余地がある
・ただし、パーツを換えたらあっさり良くなるという世界ではない

という感じでしょうか。

RCFのチューニングでは「(運動性能)全方位レベルアップ」を掲げていますが、これは単に「評判の良いパーツをつけました!」という話ではなさそうだ、というところまで伝わればこの投稿の価値はあったと思います。

勘が良い方は少し想像できたかもしれませんが、私がRCFに施そうとしているのは「特定ユーザー(=私)にターゲットを絞った、バランスの再調整」です。

量産RCFは、誰が乗っても笑顔になれる車だと思います。しかし、「誰が乗っても」を得るには「どこか曖昧な部分」を必ず併せ持つようになる。

その「どこか曖昧な部分」をきちんとひも解いて、編みなおして「自分専用機」に仕上げていく。これが上手く行けば、このレーダーチャートのような特性を実現することは不可能ではないという話です。


以上、長文お付き合いいただきありがとうございました。

ちなみに今回までの投稿で書いたあれこれは私の独力で出来るような内容ではありませんから、「こういうことをしようと思ったら他力本願、その道のプロを味方につけなきゃダメだよね」という話を次回書こうと思います。

今回はここまでです。
もし面白いと思って頂けるようでしたら、また次回も読みに来てください。