見出し画像

今日は「プロップの日」

ラグビーには「プロップ」というポジションがある。
スクラムを組むときに、一番前に立たされる。

一番前には3人、並ばせられる。
左側のプロップを「左プロップ」というなんの工夫もないポジション名で呼び、
右側のプロップを「右プロップ」というなんの工夫もないポジション名で呼び、
左プロップと右プロップの間に、フッカーというポジションもある。

スクラムを組むとき、この3人の後ろに5人いて、
つまりスクラムは8人で組む。

なのに、敵と接触するのは、一番前の3人だけ。
残りの5人は、この3人を全体重をかけてゴリゴリゴリゴリ押していく。
3人は後ろの5人の全力を身体に受け、
そして前からは、敵の8人の全力を身体に受ける。
たとえば、一人100kg体重があるとすれば、
敵800kg+味方500kg=1,300kg
これはすさまじい、

3人は、気の毒である。
ほかの誰も、こんな仕打ちは受けない。

でも、誰も気の毒だと思わないのがラグビーの変なところで、
しかもall for one, one for allとか回文みたいな言葉で、
「みんなのためにがんばんなきゃ!」とか、
甘くコーティングされてしまう。

3人のうち、フッカーはカラダもアタマもスマートだが、
残りの2人のプロップは、カラダもアタマもそれほどでもない。
むしろ、カラダは太く硬く、アタマは小さく柔らかい。
だからけっこう、チームの中で一番笑わせ役でありいじられ役であり、
でも世間からはそうは見えない、見られないから声を大にしていっておくと、
プロップにはおもろい人物がそろっている。

たとえば、笑わない芸風で人を笑わせたりする。
だれがこんな芸を考えつくだろうか。
天才である。

同じような体型で相撲取りがいるが、
あっちはレスラーだけど、こっちはアスリートにカテゴライズされる。
喜劇である。

「ちがう、フットボーラーや!」
といいきった噴飯もののプロップも過去にはいた。
いったもん勝ちでもある。

スクラムを組んでいるときには顔を隠され、
観客の目はボールを追いかけるから、
なかなかボールを持つ機会がないプロップに注目が集まることはあまりない。
けど、声を大にしていっておくと、彼ら彼女らがいないと、ラグビーにならない。

ほかのどのポジションも、兼任することも可能ではあるが、
プロップだけは専任であり専門職である。
逆にいうと、プロップはプロップ以外のプレーはできない。
プロップをやり始めるとプロップから出られないし、
プロップでデビューしたら、プロップのまま引退する。

おもしろくて、やがて哀しいエッセンシャルワーカーが、プロップである。
だから、ラグビー好きにはプロップ好きが多い。
(個人差があります)

背番号でいえば、左プロップが1番、フッカーが2番、右プロップが3番。
今日は1月23日。
プロップの日である。