ふたば未来学園

高校生からたくさん教わったこと

福島県立ふたば未来学園高校にいってきた。
SGH(スーパーグルーバルハイスクール)研究成果発表会に。

ふたば未来学園は2015年4月、
福島第一原子力発電所から24kmのところに開校した。
双葉郡の8町村にあった5つの高校を統合してできた。
初年度こそ、その5校に通う予定だった地元の中学生が進学してきたが、
いまでは、周辺のいわき市、郡山市だけじゃなく、
全国から生徒たちがやってくる。

だからもある。
当初は8割が避難生活経験者だったが、
いまでは4割。
その4割も、震災の記憶はおぼろげだという。
高校1年生は、幼稚園の卒園式あたりだ。

なので、入学したらバスに乗って被災の様子を見に行く。
まだ帰還できない地域には、バリケードがはられている。
パチンコ屋や量販店が壊れたままになっている。
草茫々、そこが田んぼや畑だったといわれないとわからない土地がある。

みんな、ショックを受けるらしい。
そのうえで、語り部から当時の様子やいままでのことを聞く。

大人がどんだけ辛い思いをしたか。
どんだけ必死で立ち上がろうとしたか。
できたこともある、できなかったこともある。
もちろん、震災のことを忘れないためでもあるが、
大人たちのことを知ってもらいたいからでもある。

教育目標は。

自らを変革し、地域を変革し、社会を変革していく「変革者」を育成する

丹野純一校長は、
「変革は、対話と協働、そのための場が必要」
という。

対話は、内に向けて。自分たちの多様性を認め合う寛容さと、哲学対話を重視する。
協働は、外に向けて。プロジェクト活動で、地域に貢献し、社会を変えていく。
プロジェクト・ベースド・ラーニング、
「探求学習」を学びの柱にすえている。

そうしたカリキュラムに特徴があり、
スローガンがユニークだから、
全国から生徒が集まってくる。

生徒代表として、2人のプレゼンテーションがあった。
ふたりとも女子。
時代だなあ。
っていうか、やっぱりもともとある時期までは女子のほうが優秀、
という説もある(諸説と個人差があります)。

プレゼンは、きっちりと練られていた。
「双葉郡のイメチェン」
いまもまだ風評被害が続いている福島、双葉郡だけど、
情報がちゃんと届いていないから、風評がたつ。

どうすれば情報が正確に伝わるか

という問いを立てた。
そのためには、地元の素材を使った商品を開発し、
関心を持ってもらうためにPRし、
その商品を買ってもらって、ファンになってもらえば、
情報は正しく伝わるだろう。

鮭フレークを地元の業者と開発。
道の駅で販売する許可を得て、
売出しキャンペーンを企画し、
チラシをつくってPR活動。
プレスリリースも出して、
実際に道の駅で鮭フレークを売っている様子を、
全国紙が取材して取り上げてくれた。
そうすると、ふたば未来学園の鮭フレークが話題になり、
販路が拡大していく。

風評被害がどのくらいおさまったか、
情報が正しく伝わったかの検証はまだまだだが、
高校生のプロジェクトがビジネスになり、
社会貢献にまでつながっている。

もうひとつは、
「地域交換留学」
たとえば、島根県の高校とお互いに行き来する。
ホームステイをして、地域を歩き、課題を発見し、解決策を練る。
問いは、

どうすれば社会問題を自分ごと化できるか

この生徒は、白河市からの越境入学。
入学直後のスタディツアーでショックを受けたひとり。
大人たちを知って、自分も役に立ちたい、と決意する。

ってことを、地元に帰って友だちに話すと、
「双葉って、放射能じゃん!」
という反応に、さらにショックを受けた。

それが、「どうすれば他人ごとから自分ごと化できる?」になり、
県内外の高校と5回双葉郡ツアーを実施し、
180人以上をアテンドした。

お互いに行き来する、ホントの地域交換留学は今月実施するが、
5回の体験から、
「新しい仕組みを構築するために」
という方法論につながった。

それは、
①本を読む
②街を客観視する
③同志を得る

つまり、
①インプット:いろんな事例を知る
②観察:状況を正確に把握する
③仲間を集める

高校生が体験の中から、
自分で気づいて行動していく。

自らを変革し、地域を変革し、社会を変革していく。
プロジェクトはここまで到達しないといけないんだ、
ということをガツンと教えてもらった。

田中愛治総長は、「研究成果は公共財である」といった。
プロジェクトも公共財にまで高めないといけないと気づいた。
ふたば未来学園からは、
プロジェクトは自分を変え、地域を変え、社会を変えていく。
少なくとも社会変革の入り口までは到達しないと、
大学生じゃないなあ、
と思った。