夢をかなえる御朱印
釜石の日高寺(にっこうじ)で御朱印をいただいた。
その縁で昨日、ご住職の菊池錬城さんといっしょにランチをした。
いろいろお話を伺って、おもしろかった。
錬城さんは子どものころから絵が好きだった、
とは聞いていた。
その「絵」が「マンガ」だったとは。
それで、漫画家かイラストレーターになりたかったんだ。
高校までは可能性を探ったんだけど、
やっぱりお寺の長男、跡継ぎなので諦め、
東京に出て立正大学で学んだ。
しかも、お寺に下宿して、ってのがお坊さんらしい。
そこを卒業して釜石に帰ってきたんだけど、
やっぱりなんか諦めが悪く、
休みを利用して東京に行って美術館巡りをしていた。
という20代のある日のこと。
檀家さんの紹介で、漫画家の仕事現場を見せてもらった。
胸踊らせて見学させてもらいに行ったが、
漫画家の仕事のあまりの多忙さにびっくりして、
それで漫画家になる道は最終的に諦めた。
釜石で実家のお寺で日々勤めていると、
「御朱印」もほかの流行ものと同じように、
流行ったりそうでもなくなったり、の繰り返しであることに気が付き、
文字の御朱印ではなく、絵の御朱印ならどうか、
と思いついて、干支だったりアニメのキャラだったりを描いていると、
友人から「御朱印のプラットフォームのサイトがあるよ」と教えてもらい、
「勝手にそこに上げておいたから」とお手伝いいただき、
そのサイトに載せたことがきっかけで、
テレビ岩手から取材を受け、
SNSでの視聴回数がバク上がりするようになった。
そこにNHKが来て、7時間も撮影してくれた。
そして全国版で1分、岩手版で3分放送され、
もはや炎上状態になった。
日高寺では、ペットの葬儀もしているので、
それまでお願いされれば飼っていたペットの似顔絵も描いていた。
お店の商売繁盛祈願も描いていた。
オリジナルなデザインのも描いていた。
だけどもう、リクエストにいちいち応える時間はなくなって、
干支の墨絵だけになった。
それでも注文が溜まりに溜まってやる気がなくなっていたころ、
これまた檀家さんから、ある有名な漫画家に届けてあげる、
彼のために描いてみないか、と勧められ、
そのマンガは高校生のときから大好きだった、
その漫画家にあこがれてまんが道を歩みたいと思った、
だからそんなの描くに決まってるじゃないかと一念発起。
ついでに溜まっていた御朱印もさっさと片付けた。
描いて届けてもらったら、その漫画家からはサイン入りで色紙が返ってきた。
ずっとあこがれていた漫画家からの世界で唯一つのプレゼント。
まんが道のプロ中のプロからお礼が来たということはきっと、
自分はマンガ(絵)でなにがしかを表現するプロフェッショナルであると認められたことに違いない。
そう思った。
子どものころから夢がかなった。
「あこがれって、夢を叶えるエネルギーになりますね」
と錬城さんはいった。