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地方の大学でのウェルビーイング

田んぼの泥の中に手を突っ込む。
苗も草も生きている。
突っ込んだ手を動かすと、触った感覚でそれがわかる。

やがておコメになっていく、わたしたちが必要な苗だけを残し、
必要じゃない草を引っこ抜く。

さらに、泥の中を引っ掻き回し、
これから生えてこようとしている草の線をぶち切る。

ロシアとウクライナの戦争で、
世界の穀物需要が大変化をしている。
食料輸出国が食料の輸出を止め、
自国消費に回している。

そうなると、自給率37%の日本はどうなる。
飼料や肥料をふくめて、本当に自給できるのは、
コメとさつまいもだけだといわれている。

やがてわたしたちには、食べるものがなくなってしまう。

わたしたち一人ひとりが、どう生きるべきか、
いかにあるべきか、考えるときがきている。
well-bing(ウェルビーイング)である。

そんなことを草取り翌日の早朝、
田んぼの主のコーセーさんと語り合っていた。

田んぼには、AIU(秋田国際教養大学)の学生たちが農作業に来ていた。
そのなかの2人と話をした。
2人とも、東京の出身だった。

東京じゃないところで生きてみたい、
と思って秋田に来た。
秋田の人たち、秋田のコミュニティに関わらなくては意味がない、
と思って田んぼに来た。

2人とも、早稲田大学にも合格をしていた。
早稲田とAIUと、どっちを選ぶか、さんざん悩んだ挙げ句、
AIUを選んだ。

わたしにとって、ショックだった。
AIUもいい大学だとはわかっているし、
学生も何人かは知っている。優秀だ。

わたしは、価値観の固定化にとらわれているのだろう。
いかにAIUの外部評価が高まってきているとはいえ、
早稲田大学のほうがまだまだ、だと思っている。

ところが実際、早稲田を捨ててAIUを選んだ学生たちが目の前にいて、
コメを育てる田んぼで作業して、
捕れたての魚をさばいて、料理をして、
子どもたちと遊んで、
大人たちとの議論にもちゃんと参加できて、
そんな学生がここにいる。

どう生きるべきか、
いかにあるべきか。
自分のwell-beingをつかんでいるなあ、
と思った。