102号室は事故物件/西浦和也・裏話怪談
春といえば、引っ越しの季節。新生活に期待をふくらませる前に、ちょっとだけ注意をしてみよう。その新居、どこか奇妙なところはないですか……?
文=西浦和也 #裏話怪談 イラストレーション=北原功士
102号室
昨年、亀梨和也主演の『事故物件 恐い間取り』という映画がヒットし、「事故物件」という言葉が一般的に広まった。
そもそも事故物件とは、事故、殺人、自殺だけでなく、火や水周り、近隣問題などさまざまなトラブルを抱えた物件を指す言葉だ。実際、建物の中で居住者が死ぬ案件は、都内だけでも年間2万件以上あり、単純に事故物件と呼ばれる物件は増えている。当然そのすべてに幽霊が出るわけではない。
この話を話してくれたAさんは、北九州で長年不動産業を営んでいる。不思議と事故物件と遭遇することは多いものの、大きなトラブルには会わず、ここまでやってきたという。
「あの〜、隣の部屋がかなり臭いんですけど」
昨年5月、彼の会社を通して部屋を借りている男性から、苦情電話があった。オーナーは年配の女性で近所に住んでいないうえ、あまり体の自由がきかないということで、代わりに彼が現地へ向かうことになった。
建物は木造2階建てのアパートで、1階、2階に各5部屋、合計10部屋に、それぞれ隣の土地に駐車場が付いている。
到着すると、電話をくれた101号室と103号室の男性ふたりが、ドアの前で待っていた。
「何日か前からなんとなく臭かったんですけどね、最近すごい臭いがするんだよね」
そういってふたりは揃って102号室のドアを指さす。
確かにひどいにおいで、建物に入る前からにおっている。
「わかりました。ちょっと待っていてください」
そういってAさんは合鍵を取り出すと、やってきた警察官立ち会いのもと、部屋のなかへと入った。
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