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腰がぐにゃりと曲がった老人(ほか4話)/あなたの怪奇ミステリー体験

深夜のひとけのない山間部。無気味なトンネルの中。
霊になど遭遇したくない。
ならば、迂回するなり、深夜、近づかないなどの対策は必須だ。

イラストレーション=不二本蒼生

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〒110-0005 東京都台東区上野3-24-6上野フロンティアタワー14階(株)ワン・パブリッシング ムー編集部「あなたの怪奇ミステリー体験」係。必ず住所・氏名(仮名希望者はその旨も)年齢・職業・電話番号を明記。●採用分には、作品に応じて謝礼(3000円〜1万円)を進呈。なお、投稿は紙版、電子版およびムー公式ウェブ(https://muplus.jp/)で掲載いたします。掲載作品のすべての権利・著作権はワン・パブリッシングに帰属します。
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グニャリと曲がる老人

◆中田孝太郎/静岡市(53歳)

 これは数年前に私自身が体験した不思議な出来事です。

 その日、私は仕事関係の会議に出席するため自分の車で会議場まで行きました。やがて長い会議が終了。ようやく帰宅できるようになったのは深夜のことです。
 会議のあった場所から自宅まで帰るには、途中、山間部にある何やら無気味な古いトンネルを通らなければなりません。
 すでに深夜の1時から2時ごろの時間帯だったと思います。山間部の道路に車はほとんど走っていません。もちろん、どこにも人影などありません。
 ところが――その古いトンネルに入ってすぐに、何と腰の曲がった老人が端のほうを歩いていることに気づいたのです。
“こんな時間に、こんなところを”と、驚きながら私はチラチラと横目でその腰の曲がった老人の姿を眺めながら、なるべくゆっくりとその脇を通りすぎようとしました。
 しかし、老人を追いこそうとした瞬間でした。まさにすれちがいざまに、一瞬、その老人と私の目がピタッと合ったのでした。
 すると――何と次の瞬間、その老人の上半身が、突然、グニャリと大きく曲がったのです! 胸が膝にピッタリとくっつき、手がダラリと地面についています。
 それはまるで立ったまま腰から半分にポキリと折れてしまったかのようでした。あまりの突然の出来事にびっくりした私は、思わず急ブレーキをかけていました。そして、あわててバックミラーで老人の姿を捜したのですが……なぜかどこにもあの老人の姿がありません。
 そんなはずはないと、思いきって窓を開けて車から顔を出し、あたりを隈なく見まわしましたが、やはりどこにも老人はいません。まるで一瞬のうちに煙のように消えてしまったかのようです。
 さすがに車から降りて老人を捜す気にはなれませんでした。私は大急ぎで車をスタートさせ、帰路を急ぎました。
 前方だけを見つめて運転しながらふと気がつけば、いつの間にか私の全身はグッショリと冷たい汗で濡れています。
 そんなことがあった次の日のことです。突然、私の腰が痛みはじめました。
 恐らくただの筋肉痛だろうと思い、しばらく様子を見ることにしたのですが、時間がたつにつれ痛みは酷くなるばかりです。結局、そのうちどうにも我慢できなくなって病院に行きました。
 すると――何と背骨の一部分が骨折していると、担当医にいわれてしまったのです。
 私自身、骨折などという大怪我をするような原因に思いあたることはなく、診察してくれた医師も首を捻ひねるばかりでした。
 それから数か月間、私は腰まわりにギプスを嵌はめられたまま、まともに仕事もできずに、かなり不自由な生活を強いられることになってしまいました。
 まさかとは思いながらも、私にはどうしても簡単に打ち消してしまえない疑問が今も残っています。私の背骨の骨折とあのトンネルで見た腰の折れた老人とは何か関係があるのでしょうか⁉

白い煙の報せ

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