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未踏の惑星で待ち受ける絶望的な恐怖『メトロイド ドレッド』/卯月鮎・ゲームー案内

書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎がオカルト、超常現象、不思議が詰まった話題のゲームをムー的に紹介。このゲーム、ほかとはひと味違う!

文=卯月鮎 #ゲームー

『メトロイド ドレッド』

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元祖2D探索アクションの新作

 10月8日に探索アクション『メトロイド』の完全新作『メトロイド ドレッド』が発売されます。もともと『メトロイド』はファミコンのディスクシステムで1986年にリリースされ、自由度が高い探索要素とSF的世界観が人気となり、海外でも支持を集めました。

 今回の『ドレッド』は久々の2Dアクション。「探索」×「恐怖」をコンセプトに、主人公のバウンティハンター、サムス・アランがかつてない絶望に立ち向かいます。滅びたはずの恐るべき寄生擬態生物「X」が存在している可能性がある惑星「ZDR」に赴いたサムスを待ち受けるものとは……。

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惑星の原生生物と戦いながら広大なマップを探索していく。

 では、いつものように『メトロイド』シリーズから連想されるムー的キーワード3つを挙げていきましょう。

宇宙生命体

 ゲームタイトルの「メトロイド」は、ゲーム中に登場する宇宙生命体を指します。他の生物に取り付き、エネルギーを吸収する能力を持った浮遊生命体です。
 そもそも「メトロイド」の名称は、公式サイトの初代『メトロイド』紹介ページによると「地下世界を表す「メトロ(地下鉄)」と「アンドロイド」を組み合わせた造語です」とのこと。

 この「メトロ(metro)」の語源をたどると、「母」を意味するギリシア語「meter」に行き着きます。大都市を意味する「メトロポリス」は「母なる都市」で、ここを中心に周辺一帯が発展するといったニュアンスを持ちます。また、ギリシア神話の豊穣の女神デメテルは「De」+「meter」で「母なる大地」という意味とも言われています。「メトロイド」は、「metro」+「oid(ギリシア語で「~のようなもの」の意)」で、“母にも似た存在”と取ることもできそうです。

 さて、宇宙生命体ですが、実は古代に地球に降り立った痕跡らしきものが残っています。アルジェリアのタッシリ・ナジェールにある新石器時代の壁画には、人間とは似ても似つかない奇妙な図像が存在します。顔に目鼻はなく、中央に二重の円が描かれていて、頭部全体はヘルメット風。宇宙服を思わせる服を着ている……。別の壁画には、頭と腕に角が生えた「白い巨人」と呼ばれる不思議な生物も見られます。これらは想像上の生き物なのか、それとも異星からの宇宙生命体なのか。

パワードスーツ

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パワードスーツ右腕のアームキャノンや透明化するアビリティなどを駆使して戦うサムス。

『メトロイド』シリーズの主人公サムス・アランは専用のパワードスーツを着用し、アイテムを取ることで多彩なアクションが可能となっています。

 神話や伝説上の鎧で着用者に大きな力を与えるものというと、思い浮かぶのが古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する英雄カルナの黄金の鎧。太陽神スーリヤと人間の娘との間に生まれたカルナ。太陽神の子の証として黄金の鎧と耳環を生誕時から身に着けていました。鎧は皮膚のようにカルナの体と一体化して脱げず、身に着けている限りは不死身。
 ところが、雷神インドラがバラモン僧に化けて、施しとしてカルナの鎧を要求するという策略に打って出ました。カルナは僧の正体に気付きながらもそれを断れず、自ら刀で体から鎧と耳環を切り離しインドラに渡します。
 不死身の鎧を失ったこともあって、最終的にインドラの息子である宿敵アルジュナに倒されてしまったカルナ。その悲劇的な生涯から『マハーバーラタ』のなかでも屈指の人気を誇ります。

追跡者

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サムスの通常攻撃が通用しない調査ロボット「E.M.M.I.」が追跡してくる。

 新作『メトロイド ドレッド』では、本来敵ではない銀河連邦の調査ロボット「E.M.M.I.」が、なぜかサムスを捕獲対象と認識し、執拗に追跡してきます。この恐怖が『ドレッド』の大きな特徴です。

 “追跡してくる存在”をさかのぼっていくと、ギリシア神話にはエリニュスと呼ばれる復讐の女神たちがいます。エリニュスは掟を破る者すべてを厳しく咎める女神で、特に親殺し、兄弟殺しをした者には容赦がありません。
 太陽神アポロンの命令で母を殺したミュケナイの王子オレステスは、エリニュスたちに追跡され、狂乱して諸国を巡る羽目になります。黒い衣、ゴルゴンのような蛇をまとわりつかせた髪で、しばしばうなり声や叫び声を上げる老女として描かれるエリニュスたち。こんな女神に追い回されたら誰でも悔い改めることでしょう。

参考文献
『原典訳 マハーバーラタ 4』(ちくま学芸文庫、上村勝彦訳)
『ギリシア悲劇1 アイスキュロス』(ちくま文庫、呉茂一訳)


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