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死出の旅路はカルマをつれてーー「品川心中」解説/和嶋慎治・神々の椅子

人間椅子・和嶋慎治氏による、ムー的オリジナル楽曲解説連載、題して「神々の椅子」! 人間椅子ファンが知らずに耳にしている用語の向こうには、奥深い世界、視野が広がっている。これを読めば、楽曲世界の背景がくっきりと……またはさらに複雑に……なるだろう。
今回は「品川心中」より。

文=和嶋慎治(人間椅子)

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ヨーロッパツアーで「字幕」自作

 先頃、人間椅子初のヨーロッパツアーから帰って来ました。ついでにいうなら僕自身初の海外渡航です。もともと僕個人はそれほど海外旅行に興味がある方ではなく、このまま外国の地を踏むことなくひっそりと人生を終えていくんだろうなあと思っていましたが、人生何が起こるか分かりません。

 さて初の海外遠征、お陰様で大盛況でした。各地満員とまではいきませんでしたが、予想以上に大勢の方々にお出でいただき、西洋人の常軌を逸した盛り上がり方にこちらも大いにハッスルしました。ボーフムでは観客がドイツ農民のような屈強な男たちばかりで、僕の目の前ではナチュラルボーンキラーのような面構えの若者がうっとりとしている、もう日本とはあまりに異なる光景に、これが世界かと(どこが?)カルチャーショックを受けた海外ツアーでありました。

 どの曲も受けましたが、僕の拙い落語を大フィーチャーした「品川心中」、こちらも望外の受け方でした。渡航の前日、徹夜で模造紙に手書きした英語字幕が功を奏したのかもしれません。しめしめ、うまくいったわい…ライブを終えたホテルの部屋で、僕が会心の笑みをもらしたのはいうまでもありません。

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数学のY先生とガロア

 ツアー中の何日目の夜だったでしょう、ベッドの中でその日のライブの反芻をするうちに、品川心中から「心中」に連想が及びました。そういえば高校時代に数学を教わったY先生は、心中したんだったっけなあ。

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