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隙間から出てくる/西浦和也の裏話怪談
日常のふとした拍子に覚える、何気ない「違和感」。
それはあまり深追いしないほうがいいのかもしれない。
気づいてしまったその瞬間に、もう戻れなくなっていることがあるから。
文=西浦和也 #裏話怪談
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西浦和也 ( にしうらわ)/実体験から取材まで、膨大な不思議を集 める怪談蒐集家。トークライブなどイベント出演のほか、『現代怪談 地獄めぐり』(竹書房怪談文庫)など著書も多数。
映っていたもの
15年ほど前の夏、大学のサークル仲間と一緒に、京都郊外のバンガローに集まって、名ばかりの合宿だった。Aくんはその年入学したばかりの1年生。何もわからないまま先輩とその合宿に参加していた。
バンガローの外で、持ち込んだ肉や野菜を焼きながらワイワイと騒いでいるうち、持ってきた飲み物が切れたことに気づいた。「このあたりにコンビニってあったっけ?」仲間のひとりが尋ねたが、来る途中だれもコンビニは見かけていない。携帯を使って調べてみると、一番近いコンビニらしき店まで30キロ近くもあり、しかも、この遅い時間ではやっていないことがわかった。
どこか飲み物が買えるところはないかと調べると、近くに自動販売機だけが並んでいるドライブインが見つかった。アルコールは期待できなかったが、それでもジュースや水は手に入る。Aくんと先輩たちは車に乗り込むとドライブインへと向かった。
街灯もまばらな山道を下っていくと、やがて開けた一本道に出た。道の向こうに自動販売機の明かりが並んで見える。Aくんたちは車を飛ばすとドライブインの駐車場へと滑り込んだ。
ライトのない真っ暗なコンクリートの上を自動販売機の明かりだけが照らしている。先輩は急ぎ足で車を降りると、早速自動販売機の前で、片っ端からジュースを買い漁った。その様子をAくんは渡されたビデオカメラで撮影していた。笑い声を上げ、ふざけながら先輩たちが自動販売機の前でジュースを買っている。
ところがそんな楽しそうな映像の中に、Aくんは違和感を覚えた。
初めのうちは気づかなかったが、その違和感を捜しながら撮影していると、先輩の後ろに並んだ自動販売機の狭い隙間、機械と機械の間のわずか30センチほどの隙間から、見知らぬ若い女が顔を覗かせている。
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