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加速する膨張で真空が裂ける!? 最新理論「宇宙崩壊」の謎/水野寛之

命あるものにはみな寿命があるように、われわれが存在しているこの宇宙にも、いつかは終焉の時が訪れる。
これまで、宇宙の終わりは静かに、そして果てしなく遠い未来にやってくると考えられてきた。
だが、最新の研究によって、宇宙が急激に崩壊し、消滅してしまう可能性がでてきたのである!

文=水野寛之 イラストレーション=久保田晃司

巨大小惑星やガンマ線バーストが地球を襲う

「ゆく川の流れは絶えずして、もとの水にあらず」ーー鴨長明が『方丈記』の冒頭に記したこの文章は、われわれが普段あまり意識していない真理をいい表している。毎日毎日同じように時が過ぎているように見えて、日々物事は移ろい、変化している。そのことに、われわれが気づけていないだけなのだ。
 変化しているということは、「明日が今日と同じ」とは限らないということだ。もしかしたら明日、いつも通りに家を出たのに、事故や災害に見舞われるかもしれない。そんな個人のことだけでなく、もしかしたら明日、突然地球が壊滅するかもしれない。それどころか、宇宙そのものが終わりを迎えることもあり得る。

 たとえばSF映画などでは、地球が小惑星との衝突の危機に直面する世界が描かれるが、それは単なる絵空事ではない。実際、地球には毎日、総量1トンほどの物質が宇宙から飛来している。そうした飛来物によって被害が発生したというニュースがほとんど聞こえてこないのは、その大半が地表に到達する前に大気圏中で燃え尽きるからだ。ちなみに、それらのうち、燃え尽きずに地上へ落ちてきたものが隕石である。

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地球には毎日、総量1トンもの物質が飛来する。ある日突然、巨大な小惑星が地球を直撃する可能性もゼロではない。

 近年、望遠鏡の精度などが向上したことで、宇宙空間を漂う80万個以上の小惑星が発見されている。そのうちの2万個余りは、地球に接近する可能性のある「地球近傍天体(NEO)」と見られている。
 そんなNEOの中で、もしも直径が1キロ以上ある小惑星が地球に衝突すれば、地球環境は激変し、人類はおろか、地球上の生命は壊滅的な被害を受けることになる。また、小惑星のサイズや地球に衝突する角度によっては、地球の地殻そのものにも影響が及ぶ可能性は高い。
 現在、NASAをはじめ、世界各地でNEOの観測が行われているが、現状ではNEOの軌道を予測し、その動向を監視するだけで、実際に地球に衝突しそうなNEOを発見しても、それを破壊したり、軌道を変えたりする手段はない。
 2019年7月25日、直径130メートルの小惑星「2019OK」が、地球から約7万2000キロメートル離れた地点を通過した。これは月と地球の間の5分の1という距離で、天文学的にはニアミスといえるほどの接近だった。

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2019年7月25日に地球近傍を通過した小惑星「2019OK」の軌道図。その接近距離は天文学的に見て非常に近いものだった。

 問題は、この「2019OK」が地球に近づいてきていると確認されたのが、接近のわずか1日前だったという点だ。「2019OK」の軌道が、地球へ真っ直ぐに向かってくるものだったため、地球に近づいてきていることが直前まで認識できなかったことが原因だった。
 もし、このときと同様に、地球めがけてもっと巨大な小惑星が飛来していることに、衝突直前まで気づけなかったとしたら……。もしかすると、明日がその“Xデー”になるかもしれない。

 また、宇宙で発生する「ガンマ線バースト」も、地球を壊滅させる可能性がある。ガンマ線バーストとは、数ミリ秒から数分程度のごく短時間に、非常に高いエネルギーが放たれる天体現象で、ブラックホールの誕生にともなう、宇宙最大規模の爆発現象だ。
 ガンマ線バーストは宇宙で頻繁に起きており、もしこれが地球を直撃すれば、爆発時に発生する高エネルギーによって地球はオゾン層のバリアを失い、有害な宇宙線が地上に降り注ぐことで、生命の大量絶滅につながることになりかねない。

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すさまじいエネルギーを放出するガンマ線バースト。もし直撃を受ければ、地球は壊滅状態になるだろう(写真=NASA Videoより)。

 このように、地球は常に宇宙からの脅威にさらされている。今日まで地球が存続してきたのは、たまたまその脅威をかわしつづけてきただけなのだ。

地球製ブラックホールが宇宙を破壊する!

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