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仮想と現実が融合し、我々はデータとして覚醒するーー”シミュレーション仮説”未来予言/宇佐和通

最新のコンピューター・グラフィックス、3D映像、VR空間を体験すると「まるで現実みたいにリアルだ!」と声が漏れる。だがしかし、モニターの中だけでなく、われわれの生きる世界そのものが「リアル」だなんて、どこに証拠があるだろうか?
仮想と現実の境界線を、テクノロジーがゆっくりとめくりあげている。

文=宇佐和通

『マトリックス』状態の現実

 コロナ禍による自粛生活の中、外出もままならない時期がかなり長い間続いた。卒業式・入学式といった季節ならではのセレモニーはおろか、会食や飲み会のために友達同士で会うことすらままならない。それでも、人は何とかして集おうとする。リアルな世界で実現できない欲求を満たすためだったのだろう。3月20日にリリースされたゲーム『あつまれ どうぶつの森』は記録的ヒットとなった。このゲームのすごいところは、プレイヤーがほかの多くのプレイヤーたちともうひとつのリアリティを創出して、それを共有できることにある。

 しかし、である。こうした世界は、もしかしたらすでに実用化されているのかもしれない。この原稿を読んでいただいている空間が「リアルである」と断言できるだろうか? そう言い切れるなら、何が根拠になるのだろうか?

 1999年、『マトリックス』というハリウッド映画が公開された。
 夢と現実の境界線がわからなくなった天才ハッカーがいる。ある日送られてきたメールをきっかけに謎の女性と知り合いになった彼は、その女性のリーダーである人物と会い「君が生きている世界はコンピュータが作った仮想現実だ」と知らされる。現実世界か仮想現実どちらかを選ぶよう迫られ、現実世界を選んだ彼は、自分が培養カプセルのようなものの中で脳に電極をつながれ、身動きできない状態にあることを知る。彼が現実と思っていたものは、コンピュータが作った仮想現実が脳内に投影されたものにすぎなかった。
 いかにもひと昔前の“ディストピア的未来”のコンセプトだが、『マトリックス』第1作が公開されて20年が経過した今、映画で描かれた世界も想像の産物であるとは言えなくなっているようだ。

現世はコンピュータシミュレーション

 仮想現実を意味する言葉として、最近は“バーチャル・リアリティ”ではなく、“シミュレーテッド・リアリティ”という言い方が旬であるらしい。
 最新トレンドの最先端にいるのが、ノースカロライナ大学のジュリアン・キースとカリー・グイン両教授だ。両教授は、ゲームを軸にわかりやすく話をする。

 コンピュータ・シミュレーションについて考えるとき、人類はすでに大きな技術的飛躍を遂げている。ピンポンゲームから“あつ森”まで進化した時間枠について考えていただきたい。半世紀のうちに、コンピュータが作った空間の中で生身の人間が集まることができるようになっている。バーチャル・リアリティであれシミュレーテッド・リアリティであれ、このままの速度で進化が続いていけば、遅かれ早かれ、人間はシミュレーションと現実の見分けがつかなくなってしまうかもしれない。『マトリックス』の主人公が事実を知って愕然とした瞬間は、いつでも誰にでも訪れる可能性があるのだ。

 ごく最近、自社製のロケット打ち上げに成功したスペースX社のイーロン・マスク氏も「今の人類がコンピュータ・シミュレーションの中で生きている可能性はきわめて高いと言わざるを得ない」とコメントしている。グイン教授によれば、マスク氏の意見を裏付ける証拠もある。

「大規模なシステムには誤作動や不具合がつきものだ。初めて稼働してからプログラム通りに動き続けるシステムなど存在しないだろう。われわれがコンピュータ・シミュレーションの中で生きている可能性を示す現象として、デジャヴや心霊現象、超能力、そして偶然という言葉で形容される出来事が挙げられるかもしれない」

 キース教授は、外界とのインターフェイスとして機能するのは人間の精神であると語る。体験に色や音を付ける過程を司るのは精神だ。

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