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子供の遊びに忍び込む”鬼”や”異なるもの”たち/黒史郎・妖怪補遺々々

ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 新年一発目は、『異』なるものと繋がろうとする子供たちの遊びから補遺々々します。

文・絵=黒史郎 #妖怪補遺々々

遊戯に「異」が混じる

 奥成達『遊び図鑑』には、「ブタノコマギレ」「伝染病」「牛殺し」「子とろ子とろ」など、物騒な名称をもつ遊びが見られます。遊びの中には昔から、何らかの「残酷」は入っているものでした。戦争、いじめ、死を連想させられる遊びを、戦争やいじめや死だという意識は持たず遊びました。今でもテレビゲームなどで日々、子供たちは何かを殺し、あるいは殺され、それを平然と繰り返しています。
 また、子供は遊びの中にしばしば『異なるもの』を取り込みます。代表的なものは「鬼」でしょう。節分では豆を打ち付けられて追い回される弱い存在ですが、遊戯の中の鬼は絶対的な強さをもち、ある意味無敵で、元気に子供たちを追いかけます。触れられるだけで同じ鬼にしてしまう鬼、影を踏まれてはならない鬼、高い場所に手を出せない鬼――とさまざまな鬼があります。

 子供の遊びの中にある、こうした『異』は、子供たちの無邪気な発想から生まれたものもあれば、妖怪的な由来に紐づくものもあるようです。

 昭和6年発行『郷土』第一巻の佐竹盛富「子供の遊び」では、長野県更級郡上山田の子供たちが興じていた遊戯を、執筆者本人の思い出として紹介しています。そこには、『異』と積極的に繋がろうとする子供たちの姿がありました。

歌う、こっくりさん

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