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アルデバラン

何かを求めて彷徨いまた次の星へ移動する。
現在地は愛媛県久万高原町だ。
四国山地、標高1000m超に囲まれた町で、
四国では比較的冷涼な気候のため、
5月の平均気温は昼間は20℃程、
最低気温は10℃程になる。
風は澄んでいて、水も美味しい。
ここら辺は標高が800m程あり寒暖差があるため
みかん畑はこちらの方にはない。米や家庭菜園といった具合で農業が展開されている。
物価も安く、久万米も大変美味しかった。

都会と距離を置いて、
充実度に違和感を感じていて、
環境の変化に応じて自分を見つめ直す
いい機会となった。

1日の流れは早朝から朝に用事が済んで
昼寝から目が覚めて少しずつ夜が深くなる。
部屋を片しながら寝るのが惜しくなってくる。
まだ寝たいという気持ちは少なくなっている。
よく歌いに散歩していた近所の球技場へと
キリッと目覚めては何かと毎日のように
山道を計15キロは歩いていた。

都会と田舎、昼と夜、
もう街中のうざったい広告はここにはない。
太陽が燦々と照りつける。
どこを見てもファミマの様な色合いで絵に描いたような聳え立つ山々で今ここいる場所から遠くはない位置で僕たちを囲んでいる。
当然ながら、夜には街の明かりが少ないもので、
月の存在がより際立ち星空は綺麗で、
視点が定まらない。
田んぼ道を通らざるを得ない散歩。
ニホンアマガエルやトノサマガエル、
ウシガエル等の蛙が本当に大合唱していて、
更には鈴虫やコオロギ、
キリギリスまで鳴いている。
ここは自然音のクラブだ、踊りたくなるし、
僕まで鳴きたくなる。
イヤホンで耳を塞いでいなくても新鮮な環境音で僕の聴覚から1日が充実している。
1日の沸点は変わらなくて、
無い物ねだりはやめて、
形態の違う要素を探して、
すでに満たされていることに気付く。
生物の家なる山、この町は一つの家族の様に
一体となって生きていて、常に山の上方から
下方へ水が絶え間なく流れている。

自然が教えてくれる静寂と共存。
換気扇が煩いので消そう。
イヤホンはいらない。
今はノイズキャンセリングも必要ない。
ただただ自然の音に耳を澄まして、風を感じて
その中で生活する、この環境に包まれたい。
僕は前日から仕事や都会での生活のことを考え始めていると少し呼吸が早くなる。

こちらの生活に感動している。
こちらに僕は住みたい。
日が登る朝焼けの空、鐘が鳴り、
1週間前までは何もない場所だと感じていた、
新月から満ちていく月が夜を照らし始め、
数多の星が空に輝いている。

とある喫煙所でライターを
借りるというきっかけから話が弾みだす。
ここでは年齢も関係ない、
ここでは悪戯に育ったプライドも必要ない。
フィーリング、本能的に共存をする。
その水風船に
閉じ込めた思いを解放する様に
お互いにぶつけ合った。
どの町も夜は冷える、びしょ濡れだ。

近くのファミマまで行き、
金ちゃんヌードルが冷えた体を暖めてくれる。
こちらでは有名だそう。
感情が昂るとき飯もより美味くなる。
そして彼女は駐車場で空にシャボン玉を吹いた。
僕らの夏休み、颯爽と幕を開けたのだ。

最終日には日本三古湯と呼ばれている
道後温泉へ。
観光大使を目指している彼女は
路面電車に乗りながら松山市の街並みを
案内してくれる。
道後市の名前の由来は、飛鳥時代にまで遡る。
645年の大化の改新後、
現在の今治市付近に伊予国の国府が置かれていて、都に近いところを道前、国府付近を道中、
遠いところを道後と呼んだのがきっかけだそう。
道後温泉の屋根にはシラサギの銅像が街の象徴として立っている。
そして日本の文学史に名を残す数々の作家達が
疲れを癒し、この街を題材にしていたという。
今回は温泉には浸かることが
できなかったのでまた今度!

出会いは煙のよう、
みんながそれぞれ灯した火で温まり、
ひとつの炎になる。
うち1人、左官屋の若社長は
話をしていると僕の親友がバーの店長をしており、間接的に友達であった。
出会い別れを繰り返して、出会いの儚さや喜びを感じたことを教えて伝えてくれた。
心底嬉しかった。
街を離れ、普段より遮断された環境、
自然の奥行きに魅せられ思いを馳せる。
そういえば先週には前回の記事の続きで
仲良くなった人と日本三大カルストの一つ、 
夜な夜な街へ出かける。
行き先は美味い飯屋と四国カルスト。
カルストとは石灰岩などでできた地形のことを言い、雨などの侵食により石灰が地表に表れている。宿泊施設やキャンプ場、観光施設として高知県立自然公園指定の天狗高原に自然学習が
できる場所である。

現在は道中で通行止めがされており、
僕たちは星空を見に行った。
いけるところまで行った。
どうやら僕たちはシャイな星空で
おまけに月も顔を見せてれなかった。
後日頂いた写真にはくっきり写っていたのだが、
僕たちがみていたものはなんだったのだろう。

出会えた人たちのお陰で愛媛県が好きになった。
まだまだ日本を旅したいと思う。

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