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『青天を衝け』第8回「栄一の祝言」(2021年4月4日放送 NHK BSP18:00-18:45 総合20:00-20:45)

今回は栄一(吉沢亮)、千代(橋本愛)にプロポーズのシーンから。盗み聞きタヌキには気がついてそれを追い払う栄一だが、喜作(高良健吾)もずっと聞いていたみたい(高良健吾と橋本愛はNHKプレミアムドラマ『ハードナッツ! 数学girlの恋する事件簿』(2013)以来の共演)。そして、栄一と喜作は千代をかけて剣術の勝負。そこで喜作を応援するよし(成海璃子)が初登場。勝負に勝った喜作だが、栄一を千代に託す。咄嗟に出た千代の「栄一さん、気張って」の声に千代の栄一への気持ちを悟ったのでしょう。ま、喜作もよしと結婚できてすべてオーライ。

タイトルバックが終わって井伊の赤備えを傍らに、家康(北大路欣也)のナビゲート。幕末の将軍継嗣問題で「一番槍」をなしたものは井伊掃部頭直弼(岸谷五朗)であるという……。その直弼は、前回、家定(渡辺大知)の心をつかみ、大老職に大抜擢された。それに反発する周囲の人びと。慶喜(草彅剛)の小姓である平岡円四郎(堤真一)も慶喜に、今や諸侯、幕臣、草莽の志士(1)、市井の人びとまで慶喜に期待が集まっていると言うが、慶喜はまだ迷っていた。

家定と直弼の絡みのシーンが秀逸。それを受けての重臣会議では老中首座の堀田備中守正睦(佐戸井けん太)を「備中!」と一喝し、次期将軍を紀州藩主徳川慶福(2)(磯村勇斗)にすることに(この辺の展開は早いです・w)。そして、自信をつけた直弼は報復人事を実行。慶喜を将軍継嗣に推した勘定役の川路聖謨(平田満)も西の丸留守居役に左遷された。

一方、日米修好通商条約が締結(安政の五ヶ国条約の1つ)。関税自主権がなく、治外法権も許したいわゆる「不平等条約」であった。列強の自由貿易体制に日本が組み込まれることを決定づけた日米修好通商条約の経済史的位置付けに関して、関税の面からだけではなく、居留地貿易問題から論じたのは杉山伸也慶應義塾大学名誉教授。また幕末の金流出をもたらした貨幣の同種同量交換規定の問題などもその後のインフレーション問題に直結するのだが……。もちろん、この条約の経済的影響はその後ジワジワとくる話なので、ドラマでは触れられず、この条約締結が天皇の勅許を得ずになされた「違勅」であることと将軍継嗣問題に焦点が絞られる。

将軍家定が今際の際に直弼に対して、水戸や越前、一橋も処分せよと言ったかどうかはわからないが、直弼の権威の源泉が将軍にあった(しかなかった)ことは確かだろう。

最後は血洗島に戻っての祝言のシーン。先日、ゼミで北区の『大河ドラマ館』を見学したが、実際に橋本愛が着用した千代の嫁入りの着物なども展示してあった。祝い歌を歌おうとする渋沢宗助(平泉成)を「もう3曲目でねぇか」と奥さんのまさ(朝加真由美)が制するシーンは、「カラオケかい?」と突っ込みたくなるが・w

渋沢家で宴が催されているなか、血洗島村には江戸から尾高長七郎(満島真之介)が帰ってきた。(つづく)


(1) 草莽の志士とは、幕末に国家的危機意識をもって立ち上がった人びとのこと。吉田松陰が唱えた「草莽崛起」論から来ている。
(2)第14代将軍就任後に名前を「家茂」と改めた。徳川家茂は和宮を娶ることで名前はよく知られているが、早逝したため結局、徳川最後の将軍は慶喜に。なお、229年ぶりとなった家茂の上洛については、久住真也『王政復古 天皇と将軍の明治維新』 (講談社現代新書、2018年)に詳しいので是非ご一読を。



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