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Complete the Coinheive Case Article

 

 先日のnote記事↓で書いたいわゆるコインハイブ事件についての原稿が完成し、数日後にウェブ上でみられるようになるとのこと。



 昔は、どんな原稿でも、1ヶ月はかけて書いたりしてたけど、最近はものによっては2、3日で書いて、校正とかも1週間くらいで終える...ってこともあったりする。世に出すものを書くのに、こんなんでいいのか?? って自分もいたりするけど...

 誰かにきいたか忘れたけど、昔は、○○百選に出す原稿を土日の2日くらいで最初から最後まで書いてしまう強者の先生もいたということで、書く時間は関係ないか... って思ったりもして(っても、その強者の先生とオレとは比較にならないくらいオレは凡人だけどね...)、まあ、でも、そんなことはいいとして、


 書いたものは、株式会社ミロク情報サービス(MJS)さんが運営しているTVS(会計事務所トータル・バリューサービス)というサービスの中の、商事・会計情報って中でしか見ることができないものなので、一般の方にはあまり目に触れがない...と思う...(でも、読める人はお読み頂けると幸いです<(_ _)>)



 具体的な内容としては、いまIT業界的に話題になっている事件で、閲覧者のPC等の処理能力を無断で使用し、仮想通貨の一種である「Monero」のマイニングをするためのスクリプトである「コインハイブ」をウェブサイトに置いてていたとして、被告のウェブデザイナーに対して不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の3)に基づき、罰金10万円を科す旨の判決を下した判決(東京高判令和2年2月7日LEX/DB25564865)について評釈を書かせて頂いた。


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(先日の月。花粉がいっぱい飛んでると、↑のように、まわりに輪っかができるらしい)

 

 で、書きはじめてみると、いろいろと考えさせられることが多くて、本事件に気がついた当初は、話題になっているから...って感じで、それで軽い気持ちで評釈を書きはじめただけなのに、最終的に、15000字を超えてたし(長い…)、だからといって、ここにくわしい内容を載せると、↑のサービス運営者さんとの間で問題になりかねないので、宣伝程度に簡単にAbstractをあげる...

 まあ、筋としては下記のような感じで書かせて頂いた。


 もともと「不正指令電磁的記録に関する罪」(刑法第19章の2)は、いわゆるコンピュータ・ウイルスの作成・提供・供用 ・取得・保管などを対象にしてたんだけど、条文上は、『不正指令電磁的記録』が「…人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録…』ってなっているので、必ずしもコンピュータ・ウイルスだけじゃなくて、いろいろ含みそうな文言になっていて、何をもって「不正指令電磁的記録」にあたるかが難しい規定ぶりになっているところに問題があって。。。

 そんな中、東京高裁は、今回問題とされたコインハイブが「プログラム使用者に利益をもたらさないものである上、プログラム使用者に無断で電子計算機の機能を提供させて利益を得ようとするものであり、このようなプログラムの使用を一般的なプログラム使用者として想定される者が許容しないことは明らかといえる」とし、また、「本件プログラムコードは…閲覧中に、閲覧者の電子計算機の機能を、閲覧者以外の利益のために無断で提供させるものであり、電子計算機による適正な情報処理の観点からも、社会的に許容されるということはできない」などと判示して、規定の対象の「不正指令電磁的記録」に該当する、って判断した。

 だけども、オイラは、

・本判決を前提とすると、Google Analytics のような解析ツールやターゲティング広告ももちろん「不正指令電磁的記録」に該当する可能性があるし、あと、クッキー(cookie)を用いて閲覧者の許可を得ることなくデータを取得し、そのデータを用いて行動ターゲッティング広告を出すようなウェブサイトを運営している場合(こうしたウェブサイトは、とくに閲覧者の許可を得ていない点で望ましくはないけど、現時点では多く存在する)も、「不正指令電磁的記録」に該当する可能性が出てくること。

・クッキーなんかも本来は規制対象にするべきかもだけど、EUのGDPR(General Data Protection Regulation)とか、今、てんやわんやだけど、一応、策定を予定しているeプライバシー規則(ePrivacy Regulation)でも、刑事罰ではなくて、行政処分でエンフォースメント(enforcement)をはかっていこう、って動きになっていること。
・カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)でも、そのエンフォースメント手段は、最大 2,500 米ドル(故意の場合 7,500 米ドル)の民事制裁金(civil penalties)と、被害を被った消費者に対する損害賠償とされていること。


・なので、「不正指令電磁的記録」の該当性に関する解釈は、なるべく狭くかつ謙抑的に行われるべきこと。

・今回のケースは、被告のウェブデザイナーさんは、望ましいかそうでないかというレベル、またはマナーやモラル的な観点で言えば、広告収入の代替手段としてコインハイブを設置していることをウェブサイト上に明示すべきだったたとは思う。だけども、不正指令電磁的記録に関する罪は、「電子計算機のプログラムに対する『社会一般の者の信頼』を保護法益としている」と言われているのに対して、今回の事件では、そもそも、そうした保護法益は被告のウェブデザイナーさんに刑事責任を科さなければならないほど侵害されていないし、仮に何からの規範を設ける必要があるにしても、IT関連の業界に対しては、「業界の自主規制→行政(処分)的な規制とエンフォースメント→刑事責任によるエンフォースメント」って順でやっていくのが新規の技術とかが出てくるのを邪魔しない感じ(こーいう観点はマジで大事だと思う)で、いいんじゃないか??? っていう立場からすると、結論としてやっぱり刑事責任を問うべきではないんじゃないか…


って筋で評釈を書かせて頂いた。


 「不正指令電磁的記録に関する罪」は、ちょっとしたJavaScriptのループ機能を使ったジョークスクリプトのURLを掲示板に貼ったってだけで、中学生が警察によって家宅捜索を受けたりしているし...(中学生でこんな経験したらビビるだろうな…)



 やっぱり、そもそものところで、「不正指令電磁的記録に関する罪」に関連する規定は、法文としてブラッシュアップとかする余地がかなりある規定の気がするなぁ...



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 書いてる途中で、無印良品さんで売ってた粉を使って作ったナンと、近所のインドカレー屋さんで買ってきたカレーと、八百屋さんでたまたま売っていたパクチー。

 にしても、ナンとか、ヘタでも自分で粉から作ってみると本当に美味しいもんですなーーー

 書き物をしているときに、自分でちょっと食べ物作って、それが美味しいって、ホントいい気分転換になるッス。



まだまだとても、サポートを受け取れる内容にはなっていないと思いますので基本的にサポートは不要です。でもでも、もしサポート頂けたら、何か面白くなりそうなことに使わせて頂きます!!