見出し画像

自衛隊入隊から教育隊卒業までの記憶②

 前回の①の記事の続きを書いていこうと思う。まだ読んでない方は話の流れや知識を持ってもらうためにも①の記事を是非読んでもらいたい。↓

教育隊生活後半

 今回は教育課程の半期が過ぎた頃あたりから卒業までの流れを書こうと思う。
 私の場合は海上自衛隊だったので航海実習があった。舞鶴教育隊だったため、舞鶴基地所属のおじいちゃんイージス艦こと「護衛艦みょうこう」に乗ることができた。みょうこうはやはりイージス艦だけあって迫力も凄かったが、そもそも初めての搭乗&航海だったのもあってエンジンが本当に戦闘機の音がするとは思っていなかったため迫力が凄かったのは鮮明に覚えている。基本的に航海実習の間は舞鶴港を出たところらへんで8の字を書くように戦速を上げたり下げたりしてどのくらいの揺れを感じるかなど色々体験させてもらった。艦内の中も紹介してもらい、初めて主砲下の弾倉や弾丸供給機など内部を見学させてもらった。実際のところ中は2階層に別れており一階が弾薬貯蔵庫、2階はまるでリボルバーのようになっており弾薬が機械によってセッティングされ自動で弾薬を巻き上げ主砲の砲塔内へエレベーターで運んだのち砲身内部に押し込まれる仕組みだった。ちなみに私が最初に見学した主砲はイタリアのオート・メラーラ社が製造する127ミリ速射砲である。Wikipediaのリンクを下に貼ってあるので気になる方は是非参考にしてほしい。↓

 ところで特別休暇と称して夏休み的な長期休暇があった。数日間であったが私の地元である大阪に帰省する際、制服での帰省が強制であったため周りからコスプレなのか本物なのかと京都駅でジロジロ全身舐めるように見られた覚えがある。友達が私を迎えに来てくれることになっていたので地元の駅で合流したが、高校の時と違って人を殺しそうな目をしていると言われたことを覚えている。友達曰く、人は厳しい経験を経ると目つきや雰囲気が険しくも優しくもなると言っていたがあの時は本当だったのかもしれない。自衛官の人に一般の人たちが絶対試したいと思うのが起床ラッパの音声で本当に目が覚めるのか、という実験である。よくYouTubeなどで元自衛官あるいは現役自衛官の知り合いを起床ラッパの音で起こしてみたという動画が流れてくるがあれは本当にストレスになるので目覚めた後の気分が悪くなるからやめて欲しかったと言える笑。しかしラッパ以前の問題で朝6時あたりに体が勝手に起きてしまうので周りの人間が起きる前にほとんどが起きているケースが当たり前である。朝6時に起きた私は昨日来ていた制服に変なシワが出来ないよう1人でアイロンをかけてハンガーにかけていたのも覚えている。

 長期休暇も終わり、舞鶴教育隊へ帰隊する際教育隊近くのコンビニに同期のみんなが集まっていた。というのも教育隊の隊舎が刑務所のように感じて最後のひと時を味わうためにコンビニから離れられなくなっていたのである笑。とは言え帰隊の時間が決められているため時間制限内に帰ってくることも教育プログラムの一環なのである。帰隊したと同時に分隊士が険しい顔でおかえりと言って回っていた。パワハラしたことは許されることではないが、私は協調性の欠けていた問題児だったので特に帰隊後は帰隊報告に抜け漏れがないか念入りに調べられた。

 それから「完成期」と呼ばれる部隊に正規隊員として着任するシーズンに入った。この時期に入れば教官達も緩くなってきており、教官のしごきがなくとも皆何をすればいいかわかっている段階だった。このシーズンになるとロッカーの整理や最後の行進訓練、部隊配属先の決定、青葉山行軍訓練、天橋立など舞鶴教育隊ならではのイベントも盛りだくさんだった。教育隊最後の一週間はみんな班ごとに集まって一人一人気持ちを伝え合う時間があった。涙を目に浮かべる教官もおり、辛かったからこそみんなの絆が出来上がった証であるとも感じ取れた。

教育隊卒業

 教育隊の卒業式はコロナによる自粛期間も重なったため式を行った体育館内には保護者は立ち入りが禁止された。式が終わり外を出て観閲式が行われた。最後の帽ふれは鮮明に覚えている。本当にこれでみんなとお別れなのかと思うと涙が止まらなかった。仲がいいのか悪いのかわからなかった親しい友達も最期は私に今までの感謝を述べあって最後の別れとなった。観光バスでその日のうちに皆日本全国の海上自衛隊の基地に飛ばされることとなり、教育隊の隊舎内は昨日までの騒がしさがまるで嘘のように静まり返っていた。私が最初に配属された護衛艦はサーウェスト任務(東シナ海尖閣付近防衛)から帰港中だったため教育隊待機組となった。その日から同じ護衛艦で過ごす同期とも新しく出会い自衛官を退官した今でも当時の同期達とたまに会って遊んでいる。

 今回はここまでにする。次回から新しい護衛艦になって生活し始めた時の思い出でも綴っていこうかと思う。ここまで読んでくださってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?