工業高校に行きたい④
怖い先生は沢山居たが、カッコいい男子にはあまり巡り会えなかった。
というか、私がコミュ症すぎてクラスメイトとデザイン科の先輩以外との関わりが一切無かったので、
カッコいい男子の存在に気付けなかった。
ある日、デザイン科の仲良い女性の先輩から言われた。
「イケマイのメールアドレス知りたいって言ってる子おるねんけどどう?」
「え?誰ですか?」
その相手はなんと一個上のイケメンだった。
身長180cm以上、顔もスタイルもなんとなくオダギリジョー感が溢れていた。
しかし私はこの先輩の存在すら、その時まで知らなかった。
「あんなイケメンがこんな地味な女を…」とは思わなかった。
何故ならこの頃私は最強にモテていて、調子にのっていた。
工業高校に行ってた人ならわかると思うが、
女子が少ないのでそんなに可愛くなくても可愛く見えるようになる。
これを世間では「工業高校病」と呼んでいた。
おそらく工業高校病にかかっている先輩とメールの交換をするようになる。
メールはするのだが、面と向かっては殆ど喋ったことがなかった。同じ学校なのに。
ある日、体育祭の予行練習があった。
その時は、男子も女子も1年も2年も3年も集まった。
何重かの輪になって、盆踊りみたいものを踊らなければいけなかったのだが、
ここで私は致命的なミスをしてしまう。
筋肉質の体育の若い先生が1人いて、私はその先生のことを常に「チクビ」と呼んでいた。
いつもピチピチの服(アンダーアーマーか何か)を着ていたのだが、
本当に毎日いつ見てもその先生は乳首が透けていたのだった。
その先生が近くを通ったときに私は、
「おーいチクビ〜!」
と声をかけた。
いつもと変わらない普通の反応だった。
その夜、イケメン先輩からメールが来ていた。
「いや〜チクビはびっくりしたわ(^_^;)」
えぇ、見てたんかい!!!!!うそやろ!!
イケメン先輩とは恋になることは無かった。
メールと言えばどうしても忘れられない話がある。
高校生の3年間は電車通学だったのだが、なかなかの満員だった。
ある日、立っている私の前に割と太めの女性が立っていた。
見ようとして見たわけではないのだが、ガラケーの画面が見えてしまった。
マサさんという方からメールが来ているようだった。
その内容は、
「はやくカナちゃんのお尻モミモミしたいよぉ〜〜〜♡♡♡♡」
…うわあ、朝からすごいもん見てしまった。
おそらくカナちゃんであろう女性は、すぐに返信をしていた。
「まあしゃんの、赤フンはぁ〜?♡♡♡」
いや、わからない。
もしかしたら二人の思ってる赤ふんと、私が思ってる赤ふんは意味が異なるのかもしれない。
しかしもう、脳裏には赤いふんどしを巻いたマサさんがカナちゃんのお尻をもむという地獄絵図が浮かんだ。
それ以上は、見るのをやめた。
この頃はスマホもLINEもなかったけれど、恵まれてないように見えて恵まれている、本当にいい時代だった。
今の高校生は、考えることが多すぎて大変だろうな、と思う。
つづく…
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