ある牛飼いの記録
その夜、私たち夫婦は屋敷で飼われている
牝牛のお産のため
一晩、牛小屋で寝ずに付き添っていた。
夜が明けそうな時間についに牝牛は
一匹の仔牛を産んだ。
私たちは、疲労の中にも喜びを感じ
達成感を覚えた。
かわいい顔を見ようと妻が仔牛の顔を
のぞき込むと突然、悲鳴を上げた。
仔牛はゆっくりと立ち上がった。
その顔はのっぺりとした人間の顔であった。
愕然としていると、仔牛は突然しゃべり出した。
「数日後この村は大火事で全滅するであろう。」
本当に短い予言であった。
その言葉を最後に仔牛は息絶えた。
その後、私たちは
遠くはなれた兄の家に逃れ助かったが
村人たちは予言を信じず村に残り、
村は滅んでしまった。
話によるとあれは件(くだん)という
化け物だろうということだ。
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