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日々の記憶、19


 10キロ歩くのが苦ではなくなってきた。川沿いを歩くのが好きだ。

 これが都内の何川なのかわからないが、でかい。黒を少し混ぜた灰色、鉛色と言えば良いのだろうか?轟々と2つの水流がすれ違っている。最近雨が降ったのだっけ?水位が高い気がする。

 鉛色が、薄曇りの陽をテラテラ反射している。柵から身を乗り出して見つめても水中は拝めない。溶けた鉄の洪水みたいだ。本当にこれが溶けた鉄だったら、熱くてとてもそばに立っちゃいられないだろうが。


 上野まで歩き、ヘッドホンの電源を切って本屋に入る。やあ、なんと面白そうな本の多いことか!全部欲しくなってしまうじゃないか。ここは良い本屋だなあ!
 しかし私には、Kindle Unlimitedで読み始めた『群青と夜の羽毛布』があるのだ。それに、気になる海外文庫は文庫と思えない値段で胸が冷える。近所のこじんまりとした図書館でも、リクエストしたら揃えてくれるだろうか?

 カフェに行ったら、お気に入りのバナナスムージーが「ご好評につき販売停止」していた。なんだご好評につき販売停止て。ご好評なら末長く販売してくれよ。

 気が動転してアイスココアをLサイズで頼んだら、バーガー屋のコーラみたいなサイズのココアが現れた。美味しく飲んだ。9時になってカフェが閉まる時、頭を下げながらトイレを借りて、鏡を見たら口の端にべったりココアがついていた。なかなか取れないんだよなぁこれ。

 夜のアメ横を歩く。初めて!ゴミ箱を集団で漁るネズミを見た。上野公園にいる驚異のデカネズミではなく、黒目のつぶらな小さいネズミだ。シャッターの閉じた飲食店の前、路上にほっぽり出されたゴミ袋を3匹で漁っていた。私が近寄ると、「え?なんですか?」と言いたげな顔で見てきた。何秒間か目が合っていたと思う。私の分まで逞しく生きて欲しい。


 寝て起きたら背中の中央が痛い。なんだよ…そんなに悪い姿勢とってないだろうが。
 まだ昼だというのに、外はこの世の終わりのように暗い。低気圧だ、私はもう一度寝る。昨夜の上野ネズミたちが、雨で濡れた上野公園の草種を食むのを想像しながら。

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