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ひねくれ軽井沢③美術館「リヒター・ラウム」


1.はじめに・軽井沢は美術館がいっぱい

軽井沢は美術館がいっぱいあります。
長野県は美術館の数が全国トップで、日本全体の10%の美術館があるそうです。そんな長野の文化人っぷり・ハイソサエティっぷりを牽引するのが軽井沢です。

大小14個ぐらい美術館のある軽井沢ですが、有名どころだけでも
・軽井沢千住博美術館
・軽井沢ニューアートミュージアム
・軽井沢現代美術館
・軽井沢絵本の森美術館
etc. と、一度の旅行では回り切れないぐらいあります。

軽井沢は美術館もりだくさん

そんな見どころ満載の軽井沢であえて、「Richter Raum(リヒター・ラウム)」に行くという方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

アクセスが悪い・完全予約制で思いつきでは行けない・展示が少ないわりに入館料が高い(割高)という三拍子揃ったこの美術館の魅力を今回はお伝えしたいと思います。(ディスりたいわけではないのです、ほんとに魅力を伝えたいのです。)

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2.三十秒でわかるゲルハルト・リヒター

軽井沢にある小さな美術館「Richter Raum(リヒター・ラウム)」。リヒターの部屋、というその名の通りドイツの現代芸術家ゲルハルト・リヒターの作品を展示しています。

ということでまず、ゲルハルト・リヒターの説明をしたいと思います。

「ゲルハルト・リヒターは1932年にドイツ東部のドレスデンに生まれました。ドイツ最高峰の画家と謳われ、その作品にはオークションで数十億円の値がつく現代アートの巨匠です。90歳を迎えた2022年に、日本では16年ぶり、東京では初となる展覧会が、東京国立近代美術館で行われました。」

三十秒は、文字数でいうと150文字~200文字程度らしいのですが、ここまでで137文字です。

いいかんじにコンパクトにまとまったのではないでしょうか。三十秒チャレンジ成功ではないでしょうか。

(まあネットでググって出てくる情報をまとめ直してもあまり価値はないと思うので、そういう意味では失敗です。とりあえずドイツのすごい芸術家、ぐらいの理解でもいいと思うのです。)

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3.リヒター・ラウムのネガティブポイント

本題の「リヒター・ラウム」に話を戻します。この美術館、ネガティブポイントが3つあると個人的に思っています。①アクセスが悪い・②完全予約制で思いつきでは行けない・③展示が少ないわりに入館料が高い(割高)の3つです。

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①アクセスが悪い
そもそも軽井沢が東京から遠い、、、とか、そういう話はしていないのです。むしろ新幹線で1時間で着くので、超アクセス良いです。

軽井沢駅

問題は、軽井沢駅からのアクセスです。GoogleMap先生で、徒歩24分です。これは30分とかかるやつです。タクシー呼ばないといけません。しかしそうなると、帰りもタクシーを呼ぶしかありません。めちゃダルですし、お金もかかります。レンタカー・カーシェアが現実的です。

GoogleMap先生で、軽井沢駅から徒歩24分

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②完全予約制で思いつきでは行けない

詳細は公式予約システムを見て頂ければと思うのですが、完全事前予約制です。これはぶらっと行きたい人からするとちょっとハードルがあがります。実際は全然予約が空いているので前日、なんなら当日でも予約できるぐらいで、そこまで心配しなくて大丈夫なのですが、、、

いかんせん「オンライン予約制です」と言われるとちょっととっつきにくい感じが出ます。そしてここ、中学生未満の入場禁止なのです。。。

その隠れ家感が良いという人ももちろんいるかもしれないですが、ふらっと散歩していたらたまたまそこに素敵な美術館があって、立ち寄ってみたら素晴らしい出会いがあって、、、みたいな運命が良いと思うのです。

(芸術は大衆に開かれていてほしい、とかそんな崇高な話ではなく、『耳をすませば』で素敵なアンティークショップに主人公の雫が迷い込むあのかんじがいいというか、、、はい、まあそんなかんじです)

公式サイトにも「小さなスペースのため、オンライン事前予約制となっております。」と記載のある通り、美術館にもし人がごった返したらとか、監視員を置いていないからとか、いろいろ事情はあるのだとは思うのですが、一手間増えるというだけで面倒くさがりな私はハードルを感じます。

敷居が高いぞ、リヒター

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③展示が少ないわりに入館料が高い

以下画像が展示の一覧なのですが、全部で4部屋19個です。
といっても、右下の「部屋1」は受付です。
真ん中下の「部屋2」は後述のインスタレーション1つで、部屋全体として1つの展示のようなものです。
そして左下の「部屋3」はオフィスで立ち入り禁止です。
つまり実質、2部屋、展示10個ぐらいの感覚です。

そして気になる入館料は、一般1,200円、大学生:800円、学生(中・高校生)無料です。うむ、ちょっと割高です。もしタクシーで行くとなったらもうだいぶ高級です。

部屋1にはリヒター関連の本が
たくさん販売されています。
この品ぞろえは日本一かもしれません。

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4.リヒター・ラウムの魅力

緑が映える外観なのです。

たくさんネガティブポイントを書いてきましたが、ネガティブポイントがあるからこそ、いいのです。つまり、「人が少ない隠れ家的美術館」なのです。じっくり見られるのです。(はい、ここにいました、隠れ家好き)

東京の美術館なんかでは、人の後頭部見に来たんじゃないぞ、って勢いで混雑していたり、監視員が殺気を込めた視線を向けてきたりしますが、ここではそんなことはありません。

一枚10分眺めるみたいな贅沢な時間の使い方が出来ます。2周どころか3周見られます。誰にも咎められません。最高です。

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5.美術館写真撮影OK問題

こちらの「リヒター・ラウム」ですが一部の展示を除き、写真撮影OKです。ネットで見かけた口コミによると、昔は全面NGだったらしいのですが、この頃OKになったそうです。写真が好きなので個人的には嬉しいポイントです。ですが、美術館写真撮影OKは議論になりがちです。。。

脱線ですが、美術館写真撮影で議論になる3ポイントについて私見を語りたいです。

①作品にダメージ
ノルウェーでムンクを見たとき、「未来の世代がこの作品に触れるために保存しなければならない、作品に光がダメージになる」という話を知って、たしかにこれは写真撮影禁止にしたくなるのも当然と感じました。フラッシュNGといくら書いてあっても、無法地帯なのかと思うほどフラッシュしまくっているので、ムンクの『叫び』の人がマスコミに突撃取材されて困っている人に見えてきました。。。

※ムンクの話は以下です。

②他の人への迷惑
撮影している人がいると自分が映るんじゃないか等、気になる。シャッター音が気になって集中できない。そういう問題もあります。

たしかに迷惑になるならマナーとして控えるべきだと思いますが「リヒター・ラウム」はその点、貸し切り状態なので気にしなくて大丈夫です。のびのび楽しめます。

③鑑賞者の意識
写真を撮るのに気を取られて、ちゃんと自分の目で記憶をしなくなる。と言うのも聞いたことがあります。

現物を生で、自分の目で見るからこそ、インパクトがあって感動があって、という「現地・現物」みたいな話です。

しかし、これは人によるとしか言いようがないと思います。写真を撮れる方がより作品をよく見るし、レンズ越しに違った視点で見れるし、後から見返せるし、と言う人もいるかと。

自分が感動したら、それですべてというか。感動しなかったら別にそれはそれでいいというか。鑑賞の深さは他人から押し付けられなくてもいいと思うのです。

美術館は多くの人にとって、趣味のひとつで、余暇活動です。そして、その気楽さで裾野が広がることが一番大事なはずです。

あと他には、撮影OKだと図録が売れなくなるとかあるようなのですが、お金の話とか入ってくるともうとても難しい話ですね。

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6.三十秒では分からないビルゲナウ

ゲルハルト・リヒターといえば、「ビルケナウ」という作品が一番有名です。ゲルハルト・リヒターは知らなくても、この黒いインクをぶちまけたような絵だけは見かけたことがある、という人は多いのではないでしょうか。私は一時期、蔦屋書店でめちゃ見かけた記憶があります。

この作品が2024年5月25日から9月28日まで、リヒター・ラウムで展示されているので、こちらについても紹介させて頂きます。

ビルケナウは、ポーランド南部の村の地名で、アウシュビッツ強制収容所の一つが設置された場所です。(※アウシュビッツ強制収容所は、ナチス・ドイツが第二次世界大戦中に建設し、ユダヤ人をはじめとする多くの人々を捕虜として収容し、過酷な労働を強いられたのちに虐殺をした場所です。)

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のゾンダーコマンド隊員(※特別労務部隊:強制収容所で、死体処理をさせられていた囚人)が決死の思いで盗撮した4枚の写真が、この「ビルケナウ」という作品のもとになっています。

具体的には、4枚の写真をキャンバスに投影して輪郭を描き写し、それを赤、黒、緑、白の絵の具で塗り潰す。という方法で作品が出来上がっています。

細かく述べると、「アブストラクトペインティング」という手法だったり、反対側に置かれた鏡によって新たなレイヤーが表出して、、、等いろいろあるかと思うのですが、ともかく「写真が下地になっていて、その上から絵の具をのっけている」というのが一番根っこにあるイメージです。

「ビルケナウ」が出来上がるまでの
説明が置いてありました。

黒と白のコントラストが、凄惨な歴史と時間経過による忘却、死と生、
赤と緑のコントラストが、流れた血と再生を表現している、
、、、のでは? と思ったり、といろいろ感じるところがありますが、ともかく心に残る、考えさせられる作品です。

2024年9月28日までの展示です。
ビルケナウが終わったら次は何を展示するのでしょう。

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7.まとめ

芸術に言葉は要らないのです。美術館に言葉は不要なのです。
(散々戯言を書いてきて今さら何を言っているのか、、、)

価値は自分が決めるのです。自分の感性に響くかどうかであって、他人の意見はどうだっていいのです。
(散々権威主義的なことを書いてきておいて何を、、、)

私としては、(アクセス悪いし敷居が高いし割高だけど、それを含めても) 「リヒター・ラウム」は静かで良いところなので、ぜひ軽井沢旅行プランに組み込んでいただければと思うのです。



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