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ひっくり返って行けた世界

今ひとりカフェにいる。こんな時間は数か月ぶり。下の子が生まれてから実に2回しか「ひとりの時間」がなかった。詳しく書くと、下の子が生まれたのが今年の4月27日、今日は12月28日だから…約8か月ぶり、2回目の「ひとりの時間」だ。ちなみに1回目は10月に美容室に行ってそのままトンボ帰りだったので、ひとりでカフェ、はもはや前過ぎていつだったのか記憶にない。

コーヒーを頼んで、バターが染みたパンをほおばり、窓際の席でスピッツを聴きながらnoteを書く。他の人にとってはこの当たり前の日常が、贅沢な時間になったのはいつの頃からだっただろう。

20代の独身時代、無敵だった。仕事は楽しく仲間にも恵まれ、健康で元気いっぱい。寝たい時にいくらでも寝れ、食べたいもの飲みたいものを口にし、行きたいところにいくらでも行って、買いたいものを買って、住みたい場所に住む。自分の人生において何の不満もなかった。むしろめちゃくちゃ幸せだったし、これ以上の幸せを望んだらバチが当たるとさえ思っていた。毎日「今日も最高に幸せだった…」と思って眠りについていた。でも一方で「本当にそう??」とも思っていた。

そんな私に転機が訪れたのは、2016年。32歳の時、妊娠した。わかったのは悪阻が酷かったからだ。前回のnoteにも書いたのだが私は稀にみるほどの悪阻が重いタイプだった。一人目も二人目も「妊娠悪阻」になり入院した。

妊娠初期(私の場合5週から悪阻が始まった)から食べられない飲めない吐く寝れない動けない光ダメ風もダメ、匂いなってもってのほか、気持ち悪い!!!!な毎日がスタートした。

数週間前まで絶好調だった私は

「人生がひっくり返った」と思った。

それまでは、自分のしたいようにすべてができていた。自分の事さえ考えていればよかった。だけど、体が動かない。気持ち悪い。体調も最悪だし、それと同時にメンタルもやられた。仕事に行きたいのに体が動かない、起き上がれない。今まで何不自由なくできていなことが全部できなくなった。ひたすらに我慢の毎日。しまいには十分に栄養がとれず妊娠悪阻になって入院もした。

悪阻が収まってきたあとも、体は重く体調は常に万全ではない。出産後も「今日は100%快適!絶好調!」という日は訪れなかった。年齢のせいもあるとは思うけど何かしらどこか痛いだるい。

子どもが無事に生まれ、待ったなしで始まる子育て。産後の体は出産のダメージで全身バキバキでもうどこが痛いのかもわからないくらい全身痛い。ふにゃふにゃの新生児を前に「この子を私が…私が育てるの…か!」と不安で目が回った。

1か月検診が終わり外出が許可されてからは、外出する際はどこに行くにも一緒。着替えにおむつウェットティッシュミルク哺乳瓶おくるみおもちゃに…と重い荷物ももちろん一緒。電車で泣かないでね、バスではゆっくり寝ていてね…とよくわからない緊張感ももれなく一緒だ。ベビーカーでの外出では、他の人の邪魔にならないように気を使い、ひとりの時はすんなり入れていたお店もベビーカーでは迷惑かな?と気にしたり、そもそも通りが狭く入れなかったりで断念することも多かった。

ひとりの時と比べて服装も髪型も変わった。吐き戻されたり引っ張られてもいい服に、すぐしゃがめるようにスカートではなくズボン。転ばないようにヒールの代わりにスニーカー。子どもを傷つけないようにネイルは短く。髪もお手入れや乾かす時間がないからなるべく短く簡単なものに。メイクも子どもに顔を触られるからなるべく簡素に。

大好きだったお酒も妊娠授乳中はもちろんストップ。子育て中の今も、子どもに何かあったら守らないと、という本能が働くのかベロベロに酔っ払ってそのまま寝るなんてことははるか彼方の出来事。

そして前記のとおり、ひとりでカフェなる「ひとりで〇〇」はなかなかできなくなった。

妊娠出産育児を機にさよならしたものたち。ひとり時代の自分からは想像もつかないほどの変わりように最初は戸惑ったし、正直自分が自分ではなくなるような気がして時には叫びたくなった日もあった。

そんなある日、SNSである詩に出会った。

今、このnoteを読んでくれている皆さんの中には、私と同じように育児に追われ毎日ヘトヘトになっている人もいるかもしれない。そして同じように子どもたちにもみくちゃにされる毎日は永遠に続くものと思っている人もいるかもしれない。

今まさに送っている日々は永遠ではなく子どもたちが自分と過ごしてくれる時間は一瞬。自分がやりたいことができなくて子どもたちにイヤイヤと泣かれると自分が泣きたくなってしまうけれど、あの日「ひっくり返った」と思った人生は、ひとりでは絶対に到達できない未知の世界へ連れていってくれた。もう自分の時間を自分だけにつかっていた日々は思い出せない。もし今神様が目の前に現れて「大変でしょ、色々。ひとりになりたいならなれるよ、どうする?」と聞かれても、わたしは絶対うなずかない。さよならしたひとりの日々は輝かしく懐かしくなることもあるけれど、いつか戻ってくる。でも、子どもたちとの毎日はきっと今だけ。愛おしさと幸せでいっぱいの毎日が今はなにより大切だ。

ああ、カフェでの「ひとり時間」はあっという間に過ぎてしまった。早く子どもたちを抱きしめに帰らないと!


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