二年以上続く原因不明の微熱

私はここのところ、調子の悪い日が続いていた。今までとは違う、未来に希望のない感覚。今までは「うつ病」を寛解させることを目標に頑張ってきたが、うつが寛解に近づいたとき、私にはもう一つの重大な症状が浮かび上がったのだ。それは、微熱。

私には慢性的な微熱の症状がある。微熱といっても、37.5℃まで上がる日も珍しくなく、酷いときは37.8℃まで上がってしまう、厄介なものだ。いくつかの病院を回り、最終的には大学病院の総合心療科で検査をしてもらったのだが、私の体は数値上至って健康で、原因は分からなかった。私には大学病院の医師に言われた「体温計が壊れてるんじゃないですか」という言葉が今も忘れられない。私は大学病院で診察を受けるずっと前に体温計の故障を疑い、病院で使われているテルモの体温計に買い替えたのだ。もちろんどの病院での検温でも私の体温は37.0℃を超えていた。つまり私はそこで、「体が熱っぽかったりだるさがある時に体温を計っているから、熱があるかないかが問題なのではなくて、実際に体に出ている症状を改善したくて私はわざわざ残り少ない有給を使って今日ここに来たんです」とか「私も故障を疑って、病院ではオムロンではなくテルモの体温計が使われていると知り、テルモの体温計に買い替えましたが、微熱であるという結果は変わりありません」とはっきり言い返せたら良かったのだが、私はショックを受けた時に頭が一瞬真っ白になって黙り込んでしまうタイプだから、無難な相槌を打って診察室から出たのだった。

他にも病院で様々なことがあり、積もり積もって私は医者に苦手意識を抱くようになってしまった。通っている精神科の主治医のことを信頼しているのは不幸中の幸いといったところだろうか。(主治医が別の病院に勤務する、となったら、私はおそらくその病院へ転院するだろう。それほど信頼しているし、相性の良い精神科の医師を探すというのは困難なことだと私は感じている)

話が若干逸れてしまったが、うつを治そうと奮闘している間、私は微熱を改善することを後回しにしていた。後回しにしてはいたが、漢方を試してみたり、セロトニンセラピーを受けてみたり、毎日熱が何度まで上がったか記録したり、それなりに改善させようとしてきた。しかし、微熱が高くなりやすいのは夜だということ、女性ホルモンの影響で最も高くなる一週間があるということ、そういった症状の分析結果を得ることはできたが、改善はしなかった。

さて、私は1、2か月前、自分のうつが寛解に近づいていると確信した。なぜなら、平日の昼間、窓から入ってくる暖かな日差しを浴びながら、ハーブティーを片手にくつろげる日が多くなったからだ。希死念慮も、死にたい死にたいと泣くことも、なくなったのだ。

やっと、ここまできたか。私は嬉しかった。しかし、夜になると微熱が高くなる。微熱が出ている状態で、普通に働くことは困難だ。この症状を改善しなければ、体が苦しいままだ、ということに気が付いてしまったのだ。

私の微熱は原因不明だ。おそらく、心因的なものか自律神経の影響・・・(精神疾患を持つ人ならば、この二つがはっきりと区別できないものであり、曖昧なものだとご存じなのではないだろうか)つまり、具体的な治療法がないのである。

以前主治医に質問したことがある。「私の微熱は自律神経失調症の症状なのではないでしょうか」と。しかし主治医の答えは「うつ病にせよ自律神経失調症にせよ、(私の場合)治療法は同じです」というものだった。

うつ病の治療でうつ病が寛解に近づいた。しかし微熱は改善しなかった。これが意味することは、現時点で微熱の改善方法は医師にも分からないものであり、今後ずっと続く可能性の高い症状である、ということだ。

つまり微熱は改善しないのだ。おそらく私の微熱は心因性発熱。しかし明確なストレス源がないうえに、二年以上続いている慢性的な症状。

過去の出来事により普通の人生を送ることに執着している私は、もう二度と普通に働くことができない可能性が高い、という事実に直面した時に、もう頑張れないと思ってしまったのだ。

今までは微熱があっても無理して外出する日が何日もあった。だって、そのほうが体力がつくし、うつの治療にはそのほうが良いから。微熱で体がしんどくてもなんとか耐えながら笑顔で友人たちとの時間を楽しんでいた。

しかし、自分の未来に絶望した私は、体がしんどいのに笑顔でいるということができなくなってしまったのだ。健康な人に問いたい。あなたは、熱が37.3℃一週間続いているときに、友人と楽しく遊べますか。仕事に支障は出ませんか。

医師たちが口をそろえて言うのは、「医学的には38℃以上を発熱と呼ぶ」ということだ。だから微熱が日常生活に支障をきたしていても、微熱ごときを真剣に治療してはくれないのだ。

視野が狭くなっている自覚はある。普通への執着を手放せば楽になれることも頭ではわかっている。しかし心というものはそう簡単にいうことを聞いてくれるもんじゃない。

もう頑張るエネルギーを使い果たしてしまった。

私の未来に幸せはあるのだろうか。

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