かべのアナ
ある学生さんが大学のちかくにへやをかりました。
はじめてのひとりぐらしではじめのころはバタバタしていましたが、あたらしいくらしになれてくるとそのへやのことがすっかり好きになっていました。
やちんがやすいわりにきれいで、いろいろとべんりでしたし、なによりだれの目も気にするひつようがないのです。
こんなにいいことはありません。
ただ、ひとつだけ気になることがありました。
へやのカベにちいさなアナがあいているのです。
なんだろうとのぞきこんでみると、おくになにかあかいものが見えました。
たぶんとなりのへやにおいてあるタナのうらがわだろうと学生さんはかんがえました。
となりの人にはあったことがありませんでしたが、どうやらおんなの人がひとりですんでいるようでした。
おおやさんに言おうかともおもいましたが、なんとなくメンドウくさくてじぶんのほうもてきとうなカグをおいてそのアナふさいでしまうことにしました。
たまに気になってのぞいてみるのですが、いつ見てもアナのおくにはあかいものが見えるだけでした。
やがてつきひがたち、大学をそつぎょうすることになった学生さんがへやをでるときがやってきました。
そのときはじめて、学生さんはおおやさんにあのアナのことを話しました。
するとおおやさんはあおいかおになってこう言いました。
「じつはあなたのとなりのへやにはびょうきで目のあかいおんなの人がすんでいたんですよ」
アナのおくに見えていたあかいものは、学生さんのへやをのぞいていたおんなの人の目だったのです!
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