くちさけおんな

 ある夕がたのこと。

 学校から家へ帰るとちゅうのおとこの子がひとりで道を歩いていると、道の向こうから赤いコートを着た背の高いおんなの人が歩いてきました。

 おんなの人はくちに大きなマスクをしています。

 おんなの人はおとこの子の前に立ちどまって言いました。

「わたし、きれい?」

 こわくなったおとこの子はおんなの人をおこらせないよう、とっさにこう言いました。

「きれいだよ」

 するとおんなの人はマスクをとってじぶんのかおをおとこの子に見せました。

「これでもぉ!?」

 マスクの下からあらわれたおんなの人のかおはくちのりょうはじが耳までさけていました。

 そのおんなの人はくちさけおんなだったのです。

「このかおをきれいだと思うなら、おまえのかおもおなじようにしてやる!」

 おどろいたおとこの子はにげだしました。

 けれども、くちさけおんなはものすごく足がはやいので、はしってにげきることはむずかしいといわれています。

 そのあと、おとこの子がどうなったのかはだれもしりません。

 もしもおとこの子が「きれいじゃない」とこたえていたらどうなっていたでしょうか。

 そのばあいも、くちさけおんなはおこっておそってくるのです。

 たすかるためにはポマードと3かいとなえるか、くちさけおんなにこうぶつのべっこうあめをわたすといいそうですよ。

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