体裁の話及びその他〜その10〜

このシリーズも、これでストック分書き出しましたので一旦終了と致します。
長らくお読み下さり、ありがとうございました。書いたものが一つでも誰かのお役に立てれば幸いです。

・製作の過程で、例えば写真が入る箇所、見出しが入る箇所、キャプションの箇所など、後からデータが入る箇所には「ダミー」が入ってくる場合がある。それ自体は問題ないが、再校の折など工程が後になってきた際、最初に仮に配置していたダミーが残っている場合がある。見つけたらトル指示出しをする。特に、写真や絵が入ってくる場合はダミーの文字が隠れて見づらくなりながらも残っている場合があるので注意する。
同じく、レイヤーが残っている場合もあるので注意する。

・短い見出しなど、印刷会社の方で手打ちしている時がある。その可能性を考え、原稿がある場合は文言必ず見直すようにする。特に原稿がデータではなくFAXや手書きならば確実に手打ちなので、正確な文言になっているか引き合わせる。ここを見逃すと、日本語はまだしも数字や記号が打ち間違えられていた場合後から見る人はその間違いを拾えないので気をつける。

・事故関連の取り違えは名称だけでなく修飾語にも注意が必要。例えば日航機事故で便名が違う2件を取り違える誤植があった時、片方に「日本最大の事故」などと修飾語が付いていた場合、どちらに修飾語がかかるのかも変更になるのでそちらにも指摘出しをする。

・フィクションであれ、「蛮族」などと差別的な言い方出てきたらアラート出しする。特に、フィクションだと言っても絵柄や描写から特定の部族を想起させる場合は気をつける。

・分からない単語が出てきた場合、業界用語かを怪しむようにする。「ナシがつく」=俗語で「密談」や「話がつく」の意味があるが、これを知らずに『「話がつく」では?』などとエンピツ出しすると著者の意図を汲めておらず、余計な指摘出しになる。ただし、本当にどこにも見当たらず且つ意味が通じにくい場合はそのようにエンピツ出ししてもいい。

・まだ実行されていないのならば、「寛大な処分」→「寛大な処置」とエンピツ出しをする。「処分」の段階で既に処罰になっているため。

・引き合わせの際、親本との差分をエンピツ出しするのであれば、たとえ同じ意味の語で漢字が違うだけだとしても(「装丁」と「装幀」のように)書き写した上で是非を編集者や著者に問う。

・ルビは本文とは違う書体で入ってくる場合があるため、本文が正字なのにルビは略字になっていることもあり得る。文字も小さいため、特にカタカナ語やアルファベットに対して漢字でルビが入っている時は注視する。

・広告の場合、人物名が羅列されている時などはフォントの大きさに不揃いがないかも確認する。名前が合っているかどうかだけでなく、見た目も形式と捉え、俯瞰して見て確認する。

・「円朝」→「圓朝」のように、元々が旧字の名前の人が出てきた場合はとりあえず本来の旧字でエンピツ出しする。判断は編集者や著者へ。

・「斗」=「闘」の略字。ここでこの漢字は変だなと思ったら、何の漢字の誤植か考えるのもいいが、もしかして形の違う略字かもという可能性も考える。

・現実ベースのフィクションの場合、いつ何があったか、いつ誰がどうしたか、といった時の年号が現実のものとフィクション用のためにいじったものとが混ざり合う場合がある。見ている校正者も著者も混乱するので、冷静に時系列メモを取るなりして整理し、矛盾を消せるよう的確に指摘出しをする。

・「という」「と言う」が不統一且つ多く出てくる場合、どちらかに統一するのかそのままにするのか判断を仰ぐためにも、最初の箇所に但し書きをして以下全て丸囲みするなどして示す。

・ハウスルールにもよるけれど、熟語ルビの片方にだけルビが付与されていた場合はもう片方にもルビを振る用エンピツ出しする。

・年号初出時、例えば2010年ならば「’10年」よりも「2010年」とした方がより誤解がない。

〜了〜

#コラム #校正 #校閲

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