体裁の話及びその他〜その5〜

短距離が得意な人、長距離が得意な人がいます。校正校閲をするにあたって、5〜6時間文字を追い続けられる人と、2時間辺りで一旦集中力が切れる人といます。そこは良い悪いではなく向き不向きです。自分の集中力が発揮できる時間はどれくらいか。それを知り、一息入れるタイミングを掴む。一人で長く戦う作業において大切なことです。集中力が切れて疲れた頭では、拾える誤植も拾えません。パフォーマンス維持も仕事のうちです。閑話休題。

・明示するものがない指示代名詞があった場合、「明示する?」とエンピツを入れる形で促してもいい。

・再校の時であっても、引用箇所の訂正に関しては再度指摘出ししてもいい。何度出されても要らないよ、という判断がなされた場合はそれでいいが、もしそうでなかった場合は表現として意に反する形で残ることになるため。

・カッコが付く位置が不自然な場合は調整するよう示唆。

・著者の造語が多用される場合、造語が例えば名詞的使い方をするものと動詞的使い方をするものが似ている単語の場合、使い方を混同していないか見る。混同している場合は造語であっても指摘出しをする。

・カギカッコ囲いの引用文の後に更に普通のカッコが来たりなどすると句点があるかどうか見る目が疎かになるので気をつける。

・「対して」という表現はその前にあるものが前提になる。それがないならば、「一方」のような単なる話題転換の接続詞を使う方向でエンピツ入れてOK。

・引用文を挟んで本文が続く場合、改行していながらも天ツキ(全角アキなし)の場合あるがそういう形式もあるので整っているのならばそのまま。

・本のタイトルが出て来たら、書名の後にカッコ付きで版元名やどの文庫なのかレーベル名を入れるようエンピツ入れてもいい。

・調べた結果、数値の差異が認められる場合でも専門家が書いたものであれば即直した方がいいように指摘するのではなく、傍線を引いた上で「p.○○では△△とありますが、〜などでは××となっております。念のため」というように出す。こちらが専門家でない以上、論拠しっかり持ってらっしゃる可能性は当然だが常にある。

・日記の引用に関しては、誤字脱字もそのままでOK。そのままだからこその引用。

・専門的o r限定的用法による語句訂正時、理由明記する。他の校正者や編集者が見てわかるようにする。

・完全に過去の話であるのに現在形で書かれていた場合、傍線を引き「現在〜しませんが、ママOK?」といったように出す。何か意図ある可能性を捨てない。

・引用文に著者が任意で傍点を書き足している場合、その直後に「(傍点引用者)」のように補足入れるようエンピツ出し。混同避けるため。

・複数辞書にも見えないオリジナル単語と思しきものがあり、且つやんわり指摘したい場合、「〜という語、あまり耳慣れない気が。辞書にも見えず」という風に婉曲的に書くのもあり。

・「休校」「廃校」というように似た単語にニュアンス差があるものが出た場合、ニュースや公式HPなど信憑性の高いものに当たる。確認が取れればどちらが正しいか示し、ハッキリとした確認が取れない場合は未確認であることを示す。「未」を丸で囲むなり、傍線を引き「未確認」と書くなりする。事実確認するだろう箇所を確認しきれなかったと示すことは、後続の校正者のために必要。調べてないのか調べきれなかったのかを残す。

〜その6へ続く〜

#コラム #校正 #校閲

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