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幻の自信

 NINTENDO64が現役だった頃は、まだ3D表現やゲーム性が手探りの時代だったが、『ゼルダの伝説』シリーズはその中でもひときわ輝いていた。

 特に『ムジュラの仮面』は、美しい箱庭の中に強烈なホラー要素が光り、異彩を放っていた。そこに生きる人々は皆、どこかで死を受け入れているような、暗い影を帯びていた。町の外はモンスターがひしめき、3日後に世界は滅びる。その象徴が、空からじわじわと迫りくる不気味な月だった。
 その不穏な世界に私は強く惹かれ、発売日にさくらやへ駆け込んだ。幼い私には謎解きは難解だったが、そんなことはどうでもよかった。学校が終われば、宿題も後回しにしてすぐゲームを起動し、冒険に没頭した。周りの友達と比べても進行が早かった私は、それが少し誇らしく、誰よりも先に新しいダンジョンに挑み、その話を得意げにしていた。
 しかし、ロックビルというエリアで壁にぶつかった。どれだけ試しても先に進めず、時間だけがどんどん過ぎていく。焦りを感じながら近所をぶらついていると、1~2歳年下の子どもたちが、なぜかあっさりとその解法を知っていた。「まだロックビルにいるの?…はね、…すれば進めるんだよ。」
 次々とアドバイスを受けたとき、先に進んでいたという自信が、実は幻だったことに気づいた。子ども心にちょっとした屈辱感が押し寄せたが、それでも教えてもらったおかげで再び冒険を続けることができた。
 今思えば、こうした友達との情報交換こそが、当時のゲームの醍醐味だった。同じペースで遊ぶ友達、攻略本を持っていない友達同士での偶然の会話。それらが、ゲームを進めるうえで大きな役割を果たしていた。今ではクリック一つで攻略情報が手に入るが、あの頃の無邪気なやり取りには、また別の魅力があったのだ。

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