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ニンジャスレイヤーTRPG二次創作小説【オーバーウェルミング・ニンジャ・パワー】前編


はじめに:この物語は以下の忍殺TRPGソロアドベンチャーリプレイを基にした、PC「シースネーク」のオリジンエピソード的ななんかです。
本編登場ニンジャも登場しますがマルチバース的なアレですので、公式とは実際無関係。


以上の二つの前日譚となります。


◆◆◆


「ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!」
冬のネオサイタマ市街を必死に逃げ回る1人のニンジャの姿があった。彼の装束には『罪』『罰』エンブレム!ザイバツ・シャドーギルドのニンジャだ!腰には何らかの秘密マキモノ!

その上空からは『キリステ』『サツバツ』『ヤリで刺す』等の威圧的文言がショドーされた大凧を背負ったニンジャが追跡!ザイバツニンジャは路地裏へ逃げ込む!「ラット・イナ・バッグ!逃げられませんよ!」しかし路地裏のような狭い場所では大凧は扱い辛い…上空から追い続けるしかない!

その時!「イヤーッ!!」「グワーッ!?」屋根を跳び渡り現れた新手のニンジャがスリケンを2枚投擲!ザイバツニンジャの両足に突き刺さる!
「ドーモ、バンディットです」「ドーモ、バンディット=サン。キサラギです」大凧のニンジャ…ヘルカイトも『実際合法』のネオンカンバン上に降下する。「ハアーッ!ハアーッ!…田舎ヤクザめ…」「もう逃げ場はないぞ、コソコソ嗅ぎまわるザイバツの犬!」バンディットがカタナを抜く!

「待てバンディット=サン!様子がおかしい」ヘルカイトがキサラギのアトモスフィア異変を察知する。バンディットはカラテ警戒!

「かくなれば…セルフ・カトン・ジツ!イヤーッ!!」シャウトと共にキサラギの身体が松明めいて炎上!周囲をたちまち炎に包む!「シマッタ!奴のマキモノが!?」「…何という…!」

「サヨナラ!!」キサラギは爆発四散した。しかしソウカイ・ニンジャ達に得られた物はなかった。


◆◆◆


オールド東京湾を臨むネオサイタマ湾岸地区。UNIX搭載装甲バンに乗り込みハック&スラッシュを目論んでいる一団あり。

「キリタ=サン、本当に大丈夫?ヤクザ事務所の空き巣狙いなんて」スマートな(バストもだ)女…ミナモがリーダーと思しき重サイバネ男に問いかける。「シナ=サンの情報が確かなら問題ねえ」キリタはハッカーの情報を再確認。「98.93%確かです。ヘルトード・ヤクザクランは今夜オヤブン以下全員違法薬物の取引交渉に」シナと呼ばれたハッカーが車載UNIXに直結しながら答える。「居るとしてもせいぜいクローンヤクザが幾人かってとこだな」「キリタ=サンと俺でぶちのめせる範囲内だぜ」血気盛んなスラッシャー…サトーが締めくくった。

この命知らずのアウトロー達は、恐るべき事に悪名高き湾岸ヤクザ、ヘルトード・ヤクザクランの事務所に侵入し金目の物をネコソギしようと言うのだ!

マネーに目が眩み、正常な判断力を失った4人のパーティーは早くも活気づいていた…否、1人だけ沈思黙考している者がいる…ミナモだ。

(相手がヤクザクランだなんて直前まで実際聞かされていなかった…どういうこと?)

普段の彼女は空き巣狙いやピックポケット行為等で食い繋ぐコソ泥めいた人物であった。だがここ最近ネオサイタマに剣呑なアトモスフィアが漂い、それに伴って徘徊するヤクザやマッポ、デッカーの人数が目に見えて増加、何時もの仕事がし辛くなり食い詰めていたのだ。
その裏で巨大ニンジャ組織の陰謀が蠢いていた事は彼女の知る由もなかったが…。
そんな時にあのキリタという男が現れ、ビッグマネーのチャンスがあると儲け話を持ち掛けてきたのだ…。

ミナモはブリーフィング内容を反芻する。(キリタ=サンが前衛のパラディン、サトー=サンがそれに続くスラッシャー、シナ=サンがUNIX担当のハッカー、そして私は…)ミナモは生業から手先が器用であり、物理的な錠前やトラップの解除担当としてパーティーに組み入れられた形だ。

「何シケたツラしてるんだ?ビビッてんのか?ZBR打つか?」

サトーがZBR注射器を手に軽口を叩く。「遠慮しておく」「そうかい」ミナモが素っ気なく答えると、サトーはZBRを自分で使った。

暫くバンを進めると『マグロ高級な』『ふわふわローン』『カエルの井戸』等のカンバンが躍る大倉庫が見える。一見すると只の倉庫だが…
「あれがヘルトードの偽装事務所だ、すぐに準備しろ!」皆にキリタの檄が飛ぶ!

倉庫の入り口にはまるで双子のような黒服の男2人!クローンヤクザだ!「「スッゾコラーッ!!!!」」チャカガン射撃!だがバンの車体は装甲強化されておりこの程度では効果なし!
キリタがドアを蹴り開けクローンヤクザにLAN直結型ヤクザガン射撃!「アッコラーッ!!」頭部破壊!「ザッケンナアバーッ!?」
サトーがドアを蹴り開けクローンヤクザに突撃!「ウオラーッ!!」仕込みサイバネプラズマナイフの一閃が心臓を抉る!「ザッケンナアバーッ!?」
「表にはもういないぞ!」「すぐ来い!」その声にシナとミナモも続く。

「アー、情報通りこれはミナモ=サンの仕事ですね。外部に繋がる錠前は全て物理、UNIXハッキングは不可能です」シナの明快な説明にミナモが頷く。「つまり、私が何とかする番と…それにしても、今時論理錠使ってないなんて珍しい」ミナモは鍵穴にピッキングツールを差し込みながら返事をした。数十秒程でガチャリ、と音がした。錠前が開いたようだ。

「「デカシタ!」」小声で快哉を上げるサトーとシナ、油断なく目を光らせるキリタ。
その中でミナモは未だ不安を拭えずにいた。


◆◆◆


「アバババーッ!!!?」電算室UNIXデッキに直結していたシナが突如ニューロンを焼き切られ死んだのだ!

「シナ=サン!?」ミナモは狼狽する。彼女はUNIXに疎く、このような場合の状況判断ができぬ!「落ち着けバカ女!大方UNIXにウイルスでも仕込まれてたんだろ、俺でも察しが付く!」サトーが怒鳴りつける。だがそれは彼の焦りの表れでもあった。「おいキリタ=サン、ハッカーがいないと後々マズいんじゃねぇか?キリタ=サンがハッキングすんのか?」サトーはキリタの生体LAN端子を指差しながら詰問する。しかしキリタは携帯IRC端末を操作しているようで、なかなか返事がない。

ミナモは訝った。(これはいよいよ怪しい、降りた方が良さそう)
サトーがキリタに気をとられている間に忍び足で電算室から脱出、後は一目散に逃げる…筈であった。

電算室から廊下へ抜けたミナモの先に待ち受けていたのは、双方向から向かってくるクローンヤクザ隊列だった!
「アイエッ!ナンデ!?」「今度は何だ?バカ女」電算室に戻ったミナモにサトーが侮蔑の言葉を吐くが、もはやそれは些末な問題だ。「ヤバイ数の!クローンヤクザが来る!!」「どういう事だ!話が違うぞ!?」「わからない!!」「とりあえず殴る!キリタ=サン、あんたも何とかしろ!!」
サトーの戦闘用サイバネテッコが唸りを上げて起動!「ウオラーッ!!」「「スッゾアバーッ!?」」サトーのテクノ・カラテがクローンヤクザを2人纏めて吹き飛ばす!「「ザッケンナコラーッ!!」」ドス・ダガーの切っ先が迫る!アブナイ!!「ウオラーッ!!」仕込みサイバネプラズマナイフがドス・ダガーを弾き、さらに追撃で2人!「「スッゾアバーッ!?」」
しかし未だ1ダース程のクローンヤクザが!!


◆◆◆


ミナモは戦闘音が止んだ事を確認すると、電算室から再び廊下に出た。そこには異様な光景が広がっていた。
床がクローンヤクザの死体や緑色のバイオ血液で埋め尽くされたツキジめいた光景の事ではない。生き残った6人のクローンヤクザがスクラムめいて倒れたサトーを取り囲んでおり…その中にキリタも加わっていたのだ!
「どういう事だキリタテメー…俺をハメたのか…」サトーは全身から血を流しており、腕のサイバネは火花を散らし完全に破損している。

「ハメるも何もネッゾコラー!!俺は最初からヘルトードのヤクザダッコラーッ!!!!」

キリタがヤクザスラングと共に恐るべき真実を明かす!このハック&スラッシュ計画はキリタの…否、ヘルトード・ヤクザクランの自作自演!!

「サイバネブッ壊しちまったのは失敗だったが…こんなクズでも売り飛ばせる臓器の1つや2つあるッダロー…」
「…ふざけンな腐れヤクザが!!!!」ヤバレカバレ!サトーが跳ね起き、突撃でヤクザスクラムを突破!その手には…電磁ナックルダスター!!「グ…グワーッ!?」キリタの鳩尾を直撃!サイバネ強化された胸郭を電流が苛む!

(今のうちに逃げないと)ミナモは本能的に状況判断し廊下を逃走!どうやらクローンヤクザも追って来ない!

「…貴様らは逃げられはしない…センセイ…!!」

キリタの呪詛めいた呼び声と共に通気口の蓋が落下し、人影が飛び降りてきた。サイバーサングラス一体型のフルフェイスメンポに、シルバーの装束。あれは正しく…。

「アイエエエエ!!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

ミナモは急性NRSを発症、しめやかに失禁した。


◆◆◆


ドーモ、フールプルーフです。貴様らの行動は電子的物理的に私に筒抜けであったぞ」
「…アイエエエエ…」

読者の中にニンジャ洞察力をお持ちの方がおられればもうお気付きであろう。彼はこのマッチポンプ的計画を全面バックアップしており、電算室でUNIXに直結したシナのニューロンを焼き切った張本人でもある!

「ちくしょう…あのクソ野郎…」ミナモの背後からサトーの声…実際満身創痍の身体にZBRを打ち心身を奮い立たせているのだ。「ミナモ=サン、どうした…何があった」「…ニンジャ」「…ア?」

しかし、サトーも信じない訳にはいかなかった。かのニンジャがすぐ近くまで迫っていたからである。
「…ニンジャ…ナンデ」だがZBR注射の効果が勝りNRSを抑え込む!「まさか本当にいたとはな」サトーが笑う。「ヘルトードに盾突いた貴様には死んでもらう」フールプルーフが冷徹に返す。

「ウオーッ!!」先に仕掛けたのはサトー!キリタから奪ったヤクザガンを連射!BLAM!BLAM!BLAM!「イヤーッ!」しかし命中せず!フールプルーフは目にも留まらぬ前宙で全弾回避!
「イヤーッ!」「グワーッ!」フールプルーフがケリ・キックを繰り出す!サトーのサイバネ腕が跡形もなく粉砕!「ウオーッ!!」サトーはヤバレカバレの電磁ナックルダスター攻撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」しかし回し蹴りで腕ケジメ!

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」一方的な蹂躙!!

「イヤーッ!」「アババーッ!!」フールプルーフのカラテパンチがサトーの顔面を破砕!サトーは床に倒れ、浜に打ち上げられたマグロめいて動かなくなった。

「…アイエーエエエエ…」

ニンジャの圧倒的な暴虐を前に、ミナモは遂に失神した。


◆◆◆


ミナモは縛られて冷たい床の上に転がされていた…ヘルトード・ヤクザクランの牢獄である。
彼女のニューロン内に何者かの声が響く。

(((起きなさい)))

(私は売り飛ばされる…?それとも、ファック&サヨナラ…?)

(((わたしは貴方を救いに来たの、力を貸すわ)))

(どういう事…?)

(((わたしは貴方、貴方はわたし、そしてわたしはニンジャ…わかるわね)))

(あなたが…私で…ニンジャ?)

(((後は貴方に任せるわ、サヨナラ)))

目が覚めたミナモの両手には、鋭利な鉄の塊…クナイ・ダートが握られていた。ニンジャの武器だ!
「私が…ニンジャ…!?」彼女は戸惑いつつも全身に滾るカラテと両手のクナイで拘束を引き千切り、強引に牢の錠前をピックして脱出した!

「ダッテメッアバーッ!?」ヤクザキッチンのクローンヤクザをカラテアンブッシュ殺し、ドス・ダガーとフロシキに包まれたスシ・タッパーを奪う!
ニンジャにとってスシは完全食だ。咀嚼する度にカラテが全身に満ちる。タッパーが空になるとミナモはメンポめかして顔にフロシキを巻いた。蛇柄の。


◆◆◆


「ニンジャソウル反応を察知」フールプルーフが無感情にキリタに報告する。「そんなバカな!ニンジャ戦力など」キリタは想定外の事態に驚愕した。「大方無軌道野良ニンジャがコソ泥に入ったか…私が片付ける。イヤーッ!」

だが次はフールプルーフが驚愕する番だった。

「そんなバカな!貴様は…」


「ドーモ、ミナモ・ナミ…

「…シースネークです…!」


後編に続く


ニンジャ名鑑#XXXX
【キサラギ】
ザイバツ・シャドーギルドの斥候ニンジャ。常人の三倍近くの脚力を持つ。何らかの秘密マキモノ運搬任務中にヘルカイトとバンディットに追い詰められ、最期は自らのカトンを暴走させてマキモノもろとも自爆した。

スキするとお姉さんの秘密や海の神秘のメッセージが聞けたりするわよ。