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ただいま2500発

土日はリハビリがてらクレー射撃。と思ったその前にプチハプニング勃発。土曜日射場に出る直前「お前の罠にかかってるぞ」と入電。獣を苦しませるのは好きじゃないから先に仕留めに山へ。電話のおじいに「鉄砲持ってきたんだろ。わしの罠にもシシがかかっててな。ま、別に明日やるわい」おいおいおいおいおい、それで先日2頭逃したのは誰なん?かかったら即やってやろうよ、苦しむ時間を長くするのは正義じゃないぜってことで、シシも撃った。乗せようとおじいの軽トラ見たらアナグマが乗っ取る。小物は己でやったんかい。

土曜日の射場は猟期前で賑わっていた


これは自動銃☞SKBはもうないけれど日本のメーカーで、私は山用に使っています

県や地域によって解禁日は違うらしいけれど、うちの県は一般的な条例通り11月15日から猟期が始まるため、この時期は猟友会の猟期前射撃という、安全に猟期に鉄砲使いましょうよって意味合いを込めた射撃大会及び練習会が射場をジャック。射撃場には大きくわけて2つのタイプが集うんだけど、1つはクレー射撃という競技をしている、銃はほぼ100%が上下二連という中折れ式の銃を持つジェントルマンたち。もうひとつは大きめのオレンジベストにオレンジキャップ、年季の入り具合は世代によって地味に違うベストのデザインと、オレンジ色の褪せ具合と汚れに現れ、統計とったわけじゃないけれど、ぱっと見たとき大体どの団体でも半分以上が自動銃という折れないタイプの銃を持っていて、うちの地域だと俗に言うじゃーじゃー弁を話す人たち。そんな私は両方に所属する二刀流タイプ。全然普通に両方やっている人もいるけれど、そういう人は少し洗練されているイメージ。私は山の麓に染まっている今、もはや完全な地元人に間違えられているから、全然そんなことないけど。
鹿、シシを葬ったあと、私は急いで射場に向かうと、後者の某地区の猟友会の大会が長引いているので待ち合わせしていた人たちはランチタイムに射場外に行くという。それはよかった!タイムリー!!朝から何も食べてない!!!私も私もと表情で切に訴え、銃を射場のロッカーに預けて、相乗りの車に乗り込んでいざ弐番館というレトロな喫茶店(喫煙可)へGO。

👴「で、ハンター槇村、やってきたのか?」
👩「はい。出る直前の電話だったので、射撃銃を山に持って行っちゃいました。ま、私の銃はたいしたことないやつだから、これで撃ったらええわって思って。スラッグ(山で使う1発弾)だけ持って。今年は猟期は休もうかと思っていたんですけど、わさかけたら読みが当たるから、結局今期も猟税払いました」
👴「wwwwwwwww」

で、君どっちにするの?

喫茶店までの往復の車の中で、今まで話したことなかった今日来てくれている先生にそう聞かれたとき、私の心は100%射撃だと思ったのに、出てくる言葉は長ったらしい前置きの入った言い訳めいた台詞だった。
元々この地域に来てからしばらく齧ってた農業で、定植した黒豆、白大豆の苗を1割2割でなく10割鹿に食われるという被害にあったこと、食われるならまだしも5割育った頃の落花生を遊んで掘り起こし、根っこを土の上に出し枯らせるアナグマに心底腹が立ったこと、そこからやる人がいないという理由で罠の免許を取るときに「イノシシがかかったら100発頭殴っても死なんぞ。鹿だって大きいオスなら棒でぶちまわすのも大変じゃ」という言葉と、苦しめずに即やるのが、命を仕留めるときに最大限自分ができることだと考えた私は、銃の所持許可、銃と罠の狩猟免許も全部同時進行で進めた。
このパターンは銃を所持したら必然的に、猟期前の射撃練習や、猟友会の射撃大会があって、そこで今日も来ていた綺麗な女性用トイレもあって広々としている貴重な射場に、当時は新品のオレンジベスト、つまり猟友会ルックで練習に来たときに、車も鉄砲も猟友会じゃないジェントルマンたちの撃つ姿を見て、うんうん、私もクレー射撃やりたいぜってなったわけ。だけど、即座に答えろよ、比重は射撃です、ってさ。

3年間で撃てたのは2100発

1回1RでMAX50発使うクレー射撃。銃の所持許可の制度は、3回目の誕生日までなので、初回は満3年ではないのだけれど、私は2020年に許可が下りたので、2023年の夏で初の更新だった。3年毎に更新しないと銃は取り上げられてしまう。しかも車の免許のようにおしらせは来ないから、うっかり忘れたおじいさん達が40年ぶりに取り直そうとすると悲惨なことになる。今の所持許可の際に通過しなければいけない筆記テストは結構難問が多いから。数字をしっかり覚えれば大したことないのだけれど、40年前、はたまたもっと昔に所持許可をとった世代はそんなのなかったらしいから、私が筆記のときに出会ったおじいさんは「もう鉄砲持てんかもしれん。駄目じゃ、試験が全然駄目じゃった」と絵に描いたように肩を落としてとぼとぼと帰っていくのを見た。もっと昔は「字が読めるもの、読めないもの」で振り分けられて試験だったらしいから、日本って結構のんきに猟銃を渡していたんだね。そんな話は結構聞く。今はかなり面倒だと思うけれど。特にとるまでの期間が半年かかるし、平日に何度も警察や試験なんかに足を運ばないといけないから、会社勤めはちと辛いし長すぎる。
そんな小話は後ろに流して、クレー射撃は時間と金がかかる競技だし、射場の営業時間しか撃てないし、射場はコンビニの近さにはない。そもそもそんなにたくさんない。だって銃をぶっぱなつんだから、音といい、環境だって山がないと無理だし、そりゃそうなんだけど。つまり、『撃てる環境を作る』ことが大変な競技だと思う、少なくとも私の場合は。時々ナイト(夜、ライトを照らしてくれてそこで撃つ)がある射場もあるけれど、それだって毎日やっているわけではないし、手元が暗かったり本番とは違う環境でやるわけだから、たまにはいいかもしれないけれど、そこはパス。
この夏に銃の所持許可証を警察で新しいのと引き換える前に、私は撃った弾数を数えたら約2100発だった。この数字はそこら辺の一猟友会員としては優秀だが、競技に出ていたら破滅的であり得ない数字である。でもまあいい。そう思わないとやってられない。やるせなくて。

1か月ぶり。なにせ10月は不幸と墓参り月間

人が死ぬのは急だし、先人の不幸は悲しいけれど仕方がない。ただ私の場合は山の麓からの都会への帰省だから、ちょっと準備や人の手を借りないといけない。なにせバブは連れていけない。それに辺鄙な場所だから結構かかるし、年に一度も帰ってないので、一度帰ったらとんぼ帰りはつまらない。だからついでに墓参りと全日本見てきたんだけどね。今年の会場は伊勢原で、一度行ったから、そこまで公共交通機関を使って3日とも足を運んで、ひたすら見てきた。ただ見るだけ、ね。今日久々にホーム(と、私は思っている)で撃ってみて、正直何も変わってない。ただリズム感というか、銃に慣れた感じと前より少ししっくりくる。ん?銃が軽い?そんなわけはないんだけど。ところで選手たちはそこまでで何万発撃ったんだろうか?何十万発の人もいるだろう。平均は?そんなことをこの日私は考えていた。私は色々と重なる事情で満足に撃てなかった分、ひたすら見ていた。ひたすらに。とにかく場に慣れることを優先した3年間、そして去る10月だった。
御託並べてないで撃てよって?衣食住もあるし生活もあるし付き合いもある。とにかく仕事の拘束時間が長すぎて、私は射場に8か月もいけなかった。これ以上の精神的苦痛はなく、私のとって銃と射撃はメンタル安定に通じていたかを実感した。もはやヨガのよう。1日だって射撃のことを考えない日はなかった。YouTubeを見ては泣いたこともある。山に行けばいくばかりか心は晴れた。銃と触れ合えるから。でも山も神出鬼没で予定は組みづらいしそれでいて待ってくれないところがあるし、天候や私の事情は関係なしで容赦なく要望がくることもあった。そして2023年で最も辛かったのは仕事で痛めた腰のリハビリで、長くかかって、もどかしくて、心の底から辛かった。

僕は山の麓で留守番してる。餌くれる人がかわりばんこで来てくれるか、仲間のいる家に行ってるよ。

信頼関係で成り立つ自信の作り方

射撃は当てってなんぼだから、とにかく練習あるのみだけど、これ以上自己流や日替わりの先生に聞いても混乱するし効率が悪い。そもそも全然射撃にいけにゃい。そんな感情が脳内をぐるぐるぐるぐる支配したからか、うーんバブ!バブ!!と夜中に目が覚めたことが2度ある。
そんなとき、うちの県は数少ない女性の銃所所持者(猟友会に限る)を集めて女子会という名の集いをしましょう❥とお知らせが来たのは今年の5月で開催は6月。8か月ぶりの射場は気温が高く、なんだか自分が場違いに思えたけれど、その様子は2週に渡り新聞に掲載され、メディア露出をすると結構みんな見ているもので、そこからの繋がりもあった。今日はそのつどいという名の女子会から生まれた縁での練習会だった。
競技と狩猟の二刀流のスキート先生と殺生はしないで競技だけの自称鉄砲馬鹿(私が言ったんじゃないよ)のトラップ先生を筆頭に、来年は猟友会の大会は福岡だから、そこを目指して頑張るメンバーだからスキートとトラップの両方の練習はとっても楽しいのだけど、私はトラップがやりたい。スキート先生には申し訳ないくらいスキートが当たらなかったのは、トラップ用の眼鏡でスキート撃っていたから、だけでもなくて、すっかりスキートの感覚を忘れてしまっていた。
「槇村、スキート頑張ろうや。トラップは当たっているけど、スキートもう少しなんとかならないか」に、対して、ペコペコしていた私の気持ちをスキート先生は気づいていたのだろう。この日はトラップ先生がついて見てくれて、効率的な練習方法を教えてもらえた。過去に挑戦してきたスポーツや経験から、今、自分にとっての射撃は、何もかも新鮮で吸収するだけの時期だから楽しい。ただし先生は何人もいらない。
そう「教えてくださってありがとうございます♡私は〇〇県のトラップ先生に教えてもらっているんで」と言えば教えたがりのジェントルマンも口を紡ぐからと、翌日の日曜日もお付き合いいただいたトラップ先生の言葉で、私はまた少し道が定まったわけ。
射撃はみんな教えたがる。だけど持って生まれた体型によって最後は自分が確信持てなきゃいけないと私でさえ思う。運良く最初から師匠がいたり、代々鉄砲撃ちで親も国体なんて人もいるけど、私は山の麓にやってきた人間で元々の家は鉄砲に縁のない家だった。私の知る限りは。

叔父に買いすぎた荷物を持ってもらって地下鉄へ急ぐ1枚。元はコンクリートジャングルしか知らなかった。


ところで先生、私は何万発撃ったら脱ストレートになるのでしょうか。保証を得る気はない。でもちょっぴり考えてしまう。
そう私は「もういいよ」と言われるまで、ひたすらストレートを撃つように言われたのだ。もちろん従う。だけどここから私は何千発撃つのだろう。もしや何万発の域までストレートから離れられないのかな?自分の手札の中で最大限の練習をしないと辿り着かない。私は高揚とした気分でいる、今は。

山の麓にも寿司はある。寿司は原動力。寿司lover!!

酔っぱらった夜の玉突き

思いっ気り集中したあとは、わざと酒を呑むようにしている。だって興奮して眠れない。気持ちを完全にオフにしたいから。ずっと山でいい思いをしたときや射撃の興奮が冷めやらなかったらいつか破綻すると思う。アドレナリンがすんごいもん。別に飲んでも飲まなくても楽しいのだけど、手っ取り早くオフにできる酒は、地方住の人の気持ちをどれだけ癒してきたのだろうと思う。どうしたって、酒とパチンコ、そして煙草は地方住まいの方が浸透するんではないだろうか。それは娯楽のなさからくるもので、人はそんなに強くないから、私は一人酒は好きじゃないけれど、わいわいやる酒は嫌いじゃない。そこで生まれる会話や温かみに触れるのは決して悪いことではない。
夜に人生2度目の玉突き(ビリヤード)を小1時間したんだけど「本当に射撃しているの?」と馬鹿にする対戦相手に「弾と玉は違うし、そもそも全然違うじゃないですか」と本気で悪態を尽いてしまった。だって本当に違うじゃん。でも、メンタル重視の真剣勝負っていうのはなんたってこんなに楽しいのだろう。そこは玉突きも射撃も似てる。

人生初のビリヤードは悔しかった


「おい、バブ!部屋を改造してビリヤード台を置こうか!めちゃくちゃ腹が立つ。ビリヤードは1時間500円だし、毎日行って練習したい!!射撃に比べたらリーズナブルだし」


☞酒に酔ったその後は

『とにかく水飲みな』と僕は彼女に伝える意味で、キッチンのシンクから彼女を見ていた。深夜だっていうのに、彼女は大きな声で僕に夢を語りかけていた。僕だけじゃ飽き足らず、東京にも電話を繋いでひたすら語っていた彼女に、こいつは狩りのできない大きな猫だと僕は思った。だからいつも僕は彼女に室内に入ってきた様々な虫を捕獲する様を見せて、習うより慣れろと行動で示しているつもりなんだけど、彼女はどこ吹く風で「お!またやったの!やるな、ありがとう」と外にポイしちゃう。ポイする前に僕が食べることもあるけれど「あんまり体に良くないからやめといたら」と、彼女はちゅーる片手に虫取りの御礼だと僕にちゅーるを食べさせてくれようとする。その隙に獲物を素手で獲る彼女を僕はちゅーるを啜りながらさりげなく観察している。彼女は結構ワイルドだなと思うが僕には勝てやしない。最後は口だよ、口。歯を使うんだって、いい加減学習しろよってシラケてしまう。
でも好きなものがあるっていうのはいいことだと思う。なかなか好きなものに出会えない人も多いような気がする。かくゆう彼女もなかなか見つからなかったみたい。というか、好きだと思っていたネイルも買い物も何もかも、鉄砲との出会いで吹っ飛んだというのが本当かな。
なんでもいい。小さなことでいいから、好きなものがあるのは素直に素敵なことだよ。好きなものがある生活は、心に潤いと張りを与えてくれる良いエッセンス。僕もお気に入りのおもちゃがあるけれど、不思議なことに壊れる前にと彼女が同じものを買ってきても、同じおもちゃなのに、それには興味が持てなくて追いかける気が沸かない。壊れてもいい。汚くてもぼろくてもいい。僕はそれがお気に入りなんだ。きっと彼女の鉄砲も同じなんだろうね。でも、どうやら彼女は今の鉄砲にかなり不満があるようだけど。それでもやっぱり今夜もにやにやしているから僕はよくわかんない。もうぬくぬくしたベッドで寝たいよ。

ご機嫌なのはいいけれどちゅーるくれ、そして水を飲め、もう寝ろ。

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