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統合失調症急性期 失踪未遂編
悪霊に取り憑かれていると思いこんでいた私は山に籠もって修行をしなければと思っていた。そんな決意の持って雨が降りしきる川辺に佇んでいた。
この川の上流へと進んでいけば山がある。福井なら霊山のはずだから、悪霊を取り除けるようになる。そんな論理的だが非現実的な考えを信じていた。
「ぱらぱら」と傘に雨の飛沫が当たる音を聞きながら携帯電話を握りしめていた。不退転の決意で携帯電話を川に投げ入れようというのだ。
しかし、結果的には投げ入れなかった。
この私の軟弱な決意に私は今まで幾度となく助けられている。
携帯電話はポケットにしまい、川上へと歩き始めた。まだ幻聴は無かったので頭と体の違和感の変化を観察して悪霊と戦っている気でいた。私の武器は般若心経である。雨が降りしきる中、川辺を傘を指しながら般若心経を唱えながら歩いていた。
どれぐらい歩いたか分からないが歩き疲れていた。思い付きで始めた修行への旅にすでに不安を抱いていた。一旦川辺から外れて見ることにした。そして、ふと目に入ったコンビニに立ち寄った。
店内を歩いていると滅多に鳴らない携帯電話が鳴った。仕事の上司(正確には派遣元の管理者)からだった。
「元気にしてるかい?」「今度飲みに行こうよ」気にかけてくれてくれていたのだが、私は気の無い返事をした。無下に断っているのを怒られているような気がした。
電話が終わり一息ついた時、私の頭にあったのは、明日の仕事どうやろうかな?であった。
もう家に帰る事に決めていたのだ。この時、自分に言った言葉は今でも覚えている。「疲れたからもう帰ろうよ」
帰ると決めると疲れも和らいだ気がした。雨は少し小降りになっているような気がした。
※注意:思い出補正により事実を脚色しているかもしれません。ご容赦ください。
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