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激白 2年前の事件。その時見つめ直した原点とは。


急速に進化を遂げるAAEEを見つめていた二人

昨日(2020年5月17日)、新型コロナウィルス流行による大混乱の中、AAEEの定例イベントをオンラインで開催した(外務省・JICA後援)。テーマは「多文化共生のウチとソト」。
AAEEの代名詞とも言えるネパール国際学生交流プログラムの報告に加えて、日本で暮らすハーフ、留学生、ヴィーガン、LGBTQ+など多様なバックグラウンドを持つゲストスピーカーをお呼びして、100人を超える参加者とともに議論した。史上初のオンラインでの試みにも関わらず、イベントは大成功。世界中から集まった参加者からは「素晴らしかった。次もぜひオンラインで。」と賞賛の嵐だった。そして、企画から運営まで全ての責任を持ったのがAAEE所属の大学生たちだ。
代表理事の関昭典と元学生アシスタントリーダーの大瀬朝楓(あさか)は、多くの学生が上手く連携しながら手際よく動き回る様子を見ながら、画面越しにしみじみ語り合い、心で熱い握手を交わした。
「AAEE学生が組織化した・・・。夢のようだ!」


大瀬とAAEEとの出会い、そして・・・

わずか数年前、大瀬が大学1年次でAAEEに加入を決めたとき、学生アシスタントはわずか3名だった。団体自体の評価はかなり高かったため、多くの学生たちで溢れていると彼女は思ったのだろう。ましてや、こんな状態で団体が9年も維持されているなど考えもしないはずだ。さらには、当時のリーダー(望月千里)がフィリピン留学中だったため、いきなりリーダー代行に抜擢。「後の祭り」にも程がある。
実質、代表理事の関と大瀬の二人で切り盛りする場面が多くなった。二人とも、空き時間はほぼすべてAAEEに捧げた。「大瀬はAAEEの”奴隷”になった」という囁きが周囲から聞こえてきた(笑)。しかし、大瀬は心の中で決意していた。
「私は卒業までAAEEにかける!」
高校時代まで新潟の片田舎で必死に努力を重ね、意を決して上京。憧れの上智大学総合グローバル学部に入学したものの、「何か」が足りない学生生活を送っていた。
思い切って、1年次の夏にAAEE主催のネパールプログラムに参加。しかし、それでも物足りなさは拭えなかった。そんな中、一人の先輩学生(元AAEE学生リーダー吉川夕葉)に声をかけられる。「AAEEに入ってみない?」横にはまっすぐ彼女の目を見つめる代表理事がいた。
数分間話し合い、”直感”した。「これだ!」大瀬はこの時の感情をひと時も忘れなかった。奴隷と揶揄されても気にしなかった。ただひたすら関代表の下で働くことが彼女の「何か」になり始めた。

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話は2018年夏にベトナムで開催された国際交流プログラムに遡る。大学2年生の大瀬は関のアシスタントとしてプログラムに参加していた。2週間のプログラム中、常に関の傍らにいて指示に従う。飛行機の中でさえ、逃げ場はない。上智大学の首席学生が足に使われる光景に、周囲はただひたすら憐れんだ。しかし大瀬は必死でくらいついた。その姿は日本人の辛抱強さを世界に知らしめた「おしん」を彷彿させるほどであった。

そんな「おしん」を、大事件が襲う。プログラム開始後4日目の夜、場所はホーチミン市の一流大学(University of Economics, Ho Chi Minh City)。目の前では、ベトナムと日本の学生が絡み合って「人間知恵の輪」で大笑い。互いの国の文化を共有し素晴らしい学生交流が繰り広げられていた。大瀬がふと傍らを見ると、関が目に大量の涙を浮かべている。大瀬はすっかり面食らった。
「先生、どうしたのですか?」遠慮がちに声を掛けてみる。
「いや、こんな素敵なシーンはもうたぶん一生見られないと思う。これこそ僕が長年目指してきたモノ。もう死んでもいい。」
関は興奮気味である。そしてこぼれそうな涙粒など気にせず満面の笑顔で続けた。
「AAEEは今年で完了。解散!あさか、これまで本当にありがとう。」
「え?」
大瀬は目が点、脳内ははてなマークで満たされ、大混乱。
「じゃあ、私はどうなるの?」
ベトナムに行く飛行機では、AAEEの今後あるべき姿を眉間にしわをよせながら熱く語り続けていたのに。プログラム開始後も一人一人の動きを詳細に分析し、「あそこはもっとこうしないと」などと呟き続けていたのに。しかし、一学生から大学教授に「ふざけんなよ!」などとは口が裂けても言えなかった。
その日の活動終了後、ベトナムと日本の学生は複数のタクシーに分乗して宿泊先のドミトリーに向かった。大瀬は関とは別のタクシーにいた。車はホーチミン恒例の渋滞に巻き込まれていく。
失ってから気づく恋しさとはまさにこのことだろう。遅々と進まぬタクシーの中で、眩しいネオンと窓に映る自分を無気力に眺める。
「卒業までに、自分の力でもっとすごい国際交流プログラムを作りたかった。」
「また、あの精彩に欠いた生活に戻ってしまうのか。」
この時の大瀬は、代表理事である関の身勝手な物言いに意見するほど骨太ではなかった。ただただ無力な自分が夜の街に浮かんでいた。
一時間ほど経ち、ようやく宿泊先に到着。すると、力なく歩く大瀬の元に関が近づいてきて言った。
「あさかさん、前言撤回。ごめん。やっぱりAAEE続けるからね。あさかが卒業するまでは続ける!自分を輝かせてくれる学生を裏切ることはできない。頑張ろう!」
最後の言葉を三度、四度と繰り返した後、関はそそくさと去ってしまった。
「?????????」
もう意味がわからない。この人はどこの星から来たのだ。異次元レベルの”変人”を目の前に、大瀬は開いた口が塞がらなかった。
その夜、学生たちが部屋でそれぞれに楽しく語り合う中、関ははじめて大瀬に、ここに至るまでのAAEEの経緯を小さな声で話し始めた。一代で新しい「国際協力のカタチ」を作り上げるヒストリーは彼女にとって壮絶であり魅力的でもあった。


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次回、

関が語るAAEEの原点。OKバジとの出会い。
「関先生は学生と一緒に輝く人です」


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